一番走ってみたかったラリー北海道に参戦!
「グラベルを走りたい! できればラリー北海道を走ってみたい!」というのが、ラリーを始めるに当たっての夢のひとつでした。他のグラベルラリーじゃなくて、ラリー北海道にどうしても出たい理由があったんですよ。
実は2003年、WRCラリージャパンが開催される前年のラリー北海道に出場できるかも…、なんていう話がチラリと持ち上がったことがあったんです。ところが、あと一歩というところまでいって、結局立ち消えしちゃって…。
お話をいただいた時は当然ラリー未経験。最初はウソでしょ!?って感じだったんですけど、話が進むうちにすっかりやる気満々に! 最高潮盛り上がったところで、立ち消えしたので、すご~く悔しかったんですよね。
結局その年は、ラリー北海道のメインサービスパークのすぐ隣にある愛国SSというステージで、そのステージを使っていない日に、お客様をレンタカーに乗せて、何周もひたすらグルグル走るという、同乗走行のドライバー役のお仕事が巡ってきまして…。「ラリー北海道には出られなかったけど、今年このSSをいちばん多く走ったのは私だぞぉ~!」と、ウサを晴らした…なんていう経緯があったんです。まぁそれはそれで楽しかったんですけどね。
なので、ラリー北海道はリベンジというか、いつかは絶対出たい大会になっていたというか、極論を言えばこれに出るためにラリーを始めたと言ってもいいくらい、私にとっては大きな意味のある、言わばひとつの目標でした。
その夢がとうとう叶う日が来たんです! とは言え、ラリー北海道は全日本ラリー選手権の中でも別格の大会。2日間で総走行距離971.10km、SS距離222.35kmと、ぶっちぎりで距離が長く、そのSSも長いところでは1ステージ約30kmくらいのロングコース。他の大会はせいぜいが約10km前後なので、破格に長いんですよね。
当然そんな長いSS、しかもグラベルなんて走ったことないわけですから不安だらけ。それを少しでも払拭するために、ツール・ド・東北に参戦したり、スポーツランド信州や丸和オートランドなどのダートラ場で練習したりしたのですが、もちろんまだ全然足りない状態。
というわけで、経験値がまだまだメチャクチャ少ない状態ではありましたが、逆に今回は経験値を積むための、言ってみれば練習参戦だと割り切って、思い切ってチャレンジすることにしたんです。マシンも製造年月日が古すぎて、選手権には出られないクリオちゃんですし、オープンクラスでまわりにご迷惑を掛けない程度に、ヨチヨチ歩き参加の気持ちで、イザっ!北海道へ挑みました!
まずは水曜日にさまざまな受付を済ませまして、木曜日のレッキから走行開始。距離が長いので、レッキも2日間に分けて行われるんですよね。
このレッキはトヨタプラッツ4WD・MTという、珍しい&懐かしいクルマで行ったのですが、いやはやSS30kmって実際走ると本当に長い! しかも私好みの道幅が広く&視界が開けているところもあるけれど、クルマ1台がやっとみたいな狭いところもあったりと、バリエーションがスゴイんです。
当然路面もさまざま。同じ砂利でも石の大きさが違うし、泥濘地みたいになってるところもあるし、ちょっとした池もあるし、舗装路もところどころ出てきます。中でも圧巻は1km以上続くストレート! と言いますか、あまりに長いと、あとどれくらいストレートが続くの感覚的にわかりにくいので、クレスト(坂道)が若干あるところで区切りを入れてペースノートを作っているところもあり、実際走るとそのまま踏んでいけちゃうようなところを足すと、数キロにも及ぶグラベルのストレートがあるんですよ。
ってことは…、ご想像いただけますでしょうか? スピードもかなり乗るということなんですね。速いクルマだと200km/hオーバー、クリオちゃんだってMAX150km/hくらいは出そうな予感…。ひゃぁ~!、もうドキドキです。
そしてもうひとつビックリしたのが「わだち」。ラリー北海道はアジアパシフィックラリー選手権と全日本ラリー選手権が併催されているので、最終ゼッケン「92番」を付けた私が走る頃には、ものすごい深いわだちができていたりするんですよ。深いわだちにそのまま入ると、お腹がつかえて動けなくなる亀の子状態になってしまうし、かといってわだちを外して走るとものすごく滑るし、道が狭すぎてわだちを外しようがない道もあったり等々、瞬時に判断して臨機応変に走るのがとっても難しいんですよね。しかもこの「わだち」まったく不慣れ。ダートラ場には、わだちなんてないですからね…。
そんなこんなでレッキの時点でかなり手こずっている状態でしたが、2日間に渡りSS18本分、尚子姉さんの的確なフォローもあり、なんとかペースノートを作り上げまして、一路チームメンバーの待つサービスパークへ…行く前に寄り道(笑)!
ラリー北海道は開催される場所も帯広~陸別ととっても広いので、移動時間にある程度余裕を持ってスケジュールが組まれているんですよね。となったら、北海道と言えばやっぱりソフトクリームでしょ! なんて具合でランチがてら立ち寄りつつ、チームメンバーへの手土産なんかも購入しちゃったりして、北海道を楽しむゆとりもあったんです。こういうのもラリーの楽しみなんですよね。
中でも興味津々だったのが、陸別の道の駅「道の駅オーロラタウン93りくべつ」。ここは、ふるさと銀河線りくべつ鉄道の陸別駅の跡地になるのですが、なんと気動車の運転体験ができるんですって! さすがに体験するまでの時間はなかったので、今回はパンフレットを握りしめて持ち帰るだけにしましたが、これは絶対トライしに来ようと心に誓ったのでした。
さて、サービスパークに戻って約3時間が経ち、お客様と過ごすラリーショーを経て、いよいよセレモニアルスタートからの最初のSSS。スーパーSSと呼ばれるこのステージは、言わばギャラリーステージ。お披露目を兼ねて、1kmくらいの短いSSを走ります。
ラリー北海道はアジアパシフィックラリー選手権と全日本ラリー選手権が併催されているので、最終ゼッケン「92番」を付けた私が走る頃にはもう真っ暗でしたが、たくさんのお客様が待ってくださっていて、とっても嬉しかった~。
そして一夜明けて、本格的本番のDAY1がスタート。まずは帯広から陸別まで移動。SS2は約10kmのステージでしたが、その入り口の前に1台1台全車に向けて、メッセージ入りのプラカードが立てられていて大感激。ちなみに私に贈られたのは「思い切って!!」のメッセージ。これまた超嬉しかったですね~。
ちなみにここはなかなか複雑なコースで、グラベルとターマックがミックスされた林道を走った後、最終的にはダートラ場に出るというレイアウト。途中軽いジャンピングポイントがあるのですが、前日のレッキの日に「あんまり飛ぶとクルマが壊れるから要注意!」と言われていたので、1本目は手前で抑えてクリア、2本目は行けそうだったので軽くジャンプしてみちゃったりして~。いやはや爽快! これぞラリーの醍醐味のひとつ!的な感じがしましたねぇ~。
続くSS3はクラッシュでコースをふさいでしまったマシンが出たためキャンセルに。そのマシン以外でもコースオフしているクルマは多数。SS2でも相当な台数がコースオフしてたので、気を引き締めて行かないとなぁ…という気持ちは頭の片隅にはありました。
でもね…。「タラタラ走っていては上達しない。自分なりに攻めてチャレンジしていかないと!」という気持ちの方が、北海道へ来る前から大きくて…。たぶんそれが先走ってしまったんでしょうね。なんとSS4の2.7km地点でコースオフからの転倒…(涙)。そうなんです。ヤっちゃったんですよ…。
最初に口から出た言葉は「大丈夫?」でした。慌ててエンジンを止めて、後続車に知らせるために外へ出ようと思ったものの、横倒しになっているためドアが重くてなかなか開かないっ! 数秒間焦りましたが…。鍵が掛かってたんですよね(笑)。鍵を開けて、二人で気合いで力を合わせてドアを持ち上げて脱出したのですが、よく考えたら…、パワーウインドウを開けて窓から出れば簡単だったということに後で気づいて、二人で大笑い。
幸いにして笑えるくらい、尚子姉さんも私もケガひとつなく無事でしたが、人間焦ると咄嗟の判断ができないということを、身をもって学ぶことになりました。でも学ぶなんていうセリフは今だから言えることで、その時、いやそれからしばらくは、顔で笑って心は号泣。今回は実地経験を積むという目標での参戦だったのに、SS18本中3本(実質2本)しか走れなかったんですもの…。チャレンジするにしても、例えば少しは慣れてきた2日目の後半とかまでは、もっと抑えなければいけなかったんですよね。
なによりウチのチームメンバーを含め、応援してくださった皆さんの期待に応えられなかったのが本当に情けなくて…。特に遠くからお越しいただき、寒い中声援を送るために待っていてくださった皆さんの期待に応えられなかったのは、本当に申し訳なくて…。最後の最後まで走ってる姿をお見せしなきゃダメですよね…。
「あなたは遅くてもいいから最後まで走って、いろんなメディアに出て、ラリー業界を盛り上げてもらうのが役目なんだから! 最後まで残ってもらわなきゃダメなんだよ」とある方に言われたのですが、まさにその通り。この言葉を胸にもう一度刻み付けて、新たなるトライをしていきたいと思います。そしてラリー北海道! また来年、絶対リベンジするので待っててね!
■文:竹岡 圭 ■写真:原田 淳