全方位に抜け目のないプレミアムスタッドレス
1991年のスパイクタイヤ販売中止以降、ボクは毎年、各社のスタッドレスタイヤを試乗する機会に恵まれ、その進化を肌で感じてきた。冬の間に1000km以上も走ることがあり、移動する際に借りたレンタカーには新品のA社のスタッドレスタイヤが装着、そしてタイヤ試走会ではB社のタイヤをテストする…などというように、比較試乗の機会にも恵まれてきた。
そんな中、今冬『ブリザックVRX2』の試走会が行われたが、久しぶりに目からウロコが落ちる思いをした。
舗装路面から、まだらのアイスバーンで止まるシーンでは、通常手前でしっかりと減速し、氷の上では路面μ(ミュー)に合わせてブレーキの力をスッと抜く必要がある。VRX2は氷に乗ってもGが安定していて、抜く量は最小限。狙いのポイントより手前で止まるような減速感を見せた。
氷上ブレーキ性能の10%向上を実感できたシーンと言えるが、VRX2は誰でも安心して体感できることが大きい。データと感応評価との乖離が少なくて現実的。扱いやすさが魅力だ。
しかも、ブロックを大きくしたことや新発泡ゴムの効果で摩耗性能も22%アップ。ひと言で言えばトレッド面の剛性アップがグリップや手応え、ロングライフを可能にした。
一方、トレッド面の安定感に対して、タイヤ全体の上下や回転方向の動きや納まりに遅れ感が感じられ、ハンドリング性能や乗り心地面では、まだ進化の余地がありそうだ。
日常的な使い勝手はノイズレベルが抑えられていることや、氷上と相反する高速性能など広い範囲でグリップは安定していて満足度は高い。ハイグリップタイヤ同様、スタッドレスタイヤもブリヂストンがこだわると全方位に抜け目がなく、自動車メーカーが冬の試乗車の足元として選ぶ理由がよくわかった。
■文:瀬在仁志/■写真:ブリヂストン
ブリザックVRX2とは?
従来モデルでも定評のある氷上ブレーキ性能は10%も短縮。摩耗ライフは22%向上しているのが特徴だ。