ヨコハマの北海道タイヤテストセンター(TTCH)で開催
自動車メディア向けの「スタッドレスタイヤ勉強会」が今年も北海道・旭川で開催された。横浜ゴムはほぼ毎年、こうした勉強会を開催してくれる。タイヤ担当/タイヤ好きにとっては非常にありがたいイベントだ。
開催されたのは、ヨコハマの冬用タイヤテストコース、北海道タイヤテストセンター(TTCH)。TTCHはTire Test Center of Hokkaidoの略で、2015年12月に開業した新しい施設。元はといえば旭川競馬場があった場所で、東京ドーム19倍以上という90万平米の広大なコース。従来ヨコハマ冬用タイヤ開発拠点だった「T*MARY」と比較すると4.7倍という敷地面積を誇る。
今年は屋内氷盤試験場も開設され、試験環境もより充実してきている。
横浜ゴムの最新スタッドレス「iceGUARD 6」
ヨコハマの最新スタッドレスタイヤはiceGUARD 6(アイスガードシックス)だ。このモデルの発売は2017年9月。だから、この冬が登場して最初のシーズンとなる。
リンク先の上記記事でも書いたのだが、新しいスタッドレスタイヤが登場し、それを試走するたびに「もうこれ以上、アイス性能は向上しないんじゃないか」なんて毎回、必ず思ったりするのだが、数年後(3〜4年後くらい)、また新しいスタッドレスが登場しそれを試走すると、必ず、劇的に進化している。これ、「必ず」なのだ。
ではなぜ、「必ず」「劇的に」進化するのか。今回の勉強会は、その理由がわかるプログラムが用意されていた。
1:パターンの進化を見る。
まずは、トレッドパターンの進化ぶりを試すプログラムから。●先代アイスガード5プラス(iG50+)と、●最新アイスガード6(iG60)のパターンにiG50+のゴムを搭載したスペシャルタイヤ、をそれぞれに履いたプリウス(195/65R15)を用意、圧雪路をスラローム走行/氷盤路でブレーキングする…というものだ。
ゴムはまったく同じものだから、2つのタイヤの違いはパターンでしかない。クルマもサイズも同じだから、スラロームを走ってフィーリングや性能に違いが出るとすれば、それはパターンに起因する。
まずはiG50+を圧雪路で走行。そのときに取った自分のメモによると「ハンドリング悪くない。アンダー出る。限界がわかりにくい。」とある。
続いては、最新iG60パターン&iG50+のゴム、のスペシャルタイヤ。「切り始めの応答が良い。お尻流れてもアクセルオフで戻りが早くコントロール性が良い。横グリップよりも前後のほうが分かりやすい」という印象。これは、個人的な印象だが、発進性もコーナリングも、ほとんど最新iG60パターンのフィーリングが上回った。
氷盤路に移ってブレーキング比較も行う。目算では、30→0km/hの制動距離で、iG50+が24m前後、iG60パターンは22m前後と、何度試走しても差が出た。
最新アイスガード6の主査である、横浜ゴムの岸添 勇さんが説明してくれたところによると、iG50+比では「溝+サイプ」のエッジは24%増、凝着摩擦が増す接地は8%増加しているという。2つのタイヤのフィーリングの差は、このパターンの進化に起因していた。
2:コンパウンドの進化を見る。
続いて試したのは、スリックタイヤでの比較。一方には●最新アイスガード6(iG60)のゴムを用い、もう一方は●ウインタータイヤ用ゴムを使用したタイヤだ。タイヤサイズは195/65R15。プリウスに装着して圧雪スラロームを試走する。
見た目は、まるで変わらない「黒くて円いゴム」だ。パターンがないので、その差はゴムだけ、ということになる。どちらのタイヤも見た感じ、スノー路面で曲がれるようには思えないのだが、これでも圧雪路で「曲がり」、アイス路面で「止まる」。
それでもメモによると、ウインタータイヤ用ゴムの方は「スラローム18km/hくらいから横滑る。切り込んでいくとハンドルにジャダーを感じる。ブレーキを踏んでからワンテンポ遅れて減速感がくる」、iG60ゴムの方は「スラロームで横滑りが始まるのは24km/hくらい。発進加速は良い。ブレーキ操作に対してはリニアに制動感がやってくる」ということで、やはりiG60ゴムの良さが体感できた。
背反する性能をどう両立したのか?
アイスガード6は「氷に効く」、「永く効く」、「燃費に効く」の基本コンセプトに加え、第 4のベネフィットとしてウエット性能(「ウエットに効く」)を新たに追加している。でもこの「ウエット性能」と「アイス性能」は、じつは背反する関係にある。どちらかの性能を上げればどちらかが下がる、そんな関係だ。
これをどのように克服したのか。それはシリカ技術にある。シリカを大幅に増量することで、凝着摩擦を向上させることに成功したのだ。ただし、簡単に「シリカ増量」ができるものではない。シリカはカーボンブラックに比べるとゴムの中でダマ(塊)になりやすく、それを均一に分散させることが必要になる。
ダマになりやすいのは、シリカが親水性、カーボンブラックが親油性という、まさしく「水と油」の関係にあることが原因。それを均一に分散させるには?…これも今回のイベントで勉強してきたので、「その3:座学編」にてレポートします。