ヨコハマの北海道タイヤテストセンター(TTCH)で開催
自動車メディア向けの「スタッドレスタイヤ勉強会」が今年も北海道・旭川で開催された。横浜ゴムはほぼ毎年、こうした勉強会を開催してくれる。タイヤ担当/タイヤ好きにとっては非常にありがたいイベントだ。
開催されたのは、ヨコハマの冬用タイヤテストコース、北海道タイヤテストセンター(TTCH)。TTCHはTire Test Center of Hokkaidoの略で、2015年12月に開業した新しい施設。元はといえば旭川競馬場があった場所で、東京ドーム19倍以上という90万平米の広大なコース。従来ヨコハマ冬用タイヤ開発拠点だった「T*MARY」と比較すると4.7倍という敷地面積を誇る。
今年は屋内氷盤試験場も開設され、試験環境もより充実してきている。
![画像: 風や温度などの天候変化が少ないのが屋内氷盤路のメリット。屋外で行われていたときに比べ「データのギャップが少ないです」「安定してデータを取ることができます」「今後、開発の速度はものすごく早くなるはずです」とのこと。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/042ab17cdc3d4de5996b2609df8caefdd2147335_xlarge.jpg)
風や温度などの天候変化が少ないのが屋内氷盤路のメリット。屋外で行われていたときに比べ「データのギャップが少ないです」「安定してデータを取ることができます」「今後、開発の速度はものすごく早くなるはずです」とのこと。
横浜ゴムTTCH屋内試験場。当日はTB用(トラック/バス用)タイヤのテスト風景も見ることができた。
youtu.be横浜ゴムの最新スタッドレス「iceGUARD 6」
ヨコハマの最新スタッドレスタイヤはiceGUARD 6(アイスガードシックス)だ。このモデルの発売は2017年9月。だから、この冬が登場して最初のシーズンとなる。
リンク先の上記記事でも書いたのだが、新しいスタッドレスタイヤが登場し、それを試走するたびに「もうこれ以上、アイス性能は向上しないんじゃないか」なんて毎回、必ず思ったりするのだが、数年後(3〜4年後くらい)、また新しいスタッドレスが登場しそれを試走すると、必ず、劇的に進化している。これ、「必ず」なのだ。
ではなぜ、「必ず」「劇的に」進化するのか。今回の勉強会は、その理由がわかるプログラムが用意されていた。
1:パターンの進化を見る。
まずは、トレッドパターンの進化ぶりを試すプログラムから。●先代アイスガード5プラス(iG50+)と、●最新アイスガード6(iG60)のパターンにiG50+のゴムを搭載したスペシャルタイヤ、をそれぞれに履いたプリウス(195/65R15)を用意、圧雪路をスラローム走行/氷盤路でブレーキングする…というものだ。
![画像: 左が先代アイスガード5プラスのトレッドパターン、右がアイスガード6。細かく見ていくとかなり違いがある。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/cb15c0f2c5fb552671b0cb288189abb239ae5179_xlarge.jpg)
左が先代アイスガード5プラスのトレッドパターン、右がアイスガード6。細かく見ていくとかなり違いがある。
ゴムはまったく同じものだから、2つのタイヤの違いはパターンでしかない。クルマもサイズも同じだから、スラロームを走ってフィーリングや性能に違いが出るとすれば、それはパターンに起因する。
まずはiG50+を圧雪路で走行。そのときに取った自分のメモによると「ハンドリング悪くない。アンダー出る。限界がわかりにくい。」とある。
続いては、最新iG60パターン&iG50+のゴム、のスペシャルタイヤ。「切り始めの応答が良い。お尻流れてもアクセルオフで戻りが早くコントロール性が良い。横グリップよりも前後のほうが分かりやすい」という印象。これは、個人的な印象だが、発進性もコーナリングも、ほとんど最新iG60パターンのフィーリングが上回った。
氷盤路に移ってブレーキング比較も行う。目算では、30→0km/hの制動距離で、iG50+が24m前後、iG60パターンは22m前後と、何度試走しても差が出た。
最新アイスガード6の主査である、横浜ゴムの岸添 勇さんが説明してくれたところによると、iG50+比では「溝+サイプ」のエッジは24%増、凝着摩擦が増す接地は8%増加しているという。2つのタイヤのフィーリングの差は、このパターンの進化に起因していた。
![画像: 1:パターンの進化を見る。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/50f0020e7ccb3b2251902a0929c28159927a1c24_xlarge.jpg)
![画像: ゴムは2台まったく同じ、タイヤサイズも同じなので、この制動距離の差はパターンのみの違いなのがわかる。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/1a2a6c9a61ca8585de62e7f5a03716c3647ff3cc_xlarge.jpg)
ゴムは2台まったく同じ、タイヤサイズも同じなので、この制動距離の差はパターンのみの違いなのがわかる。
2:コンパウンドの進化を見る。
続いて試したのは、スリックタイヤでの比較。一方には●最新アイスガード6(iG60)のゴムを用い、もう一方は●ウインタータイヤ用ゴムを使用したタイヤだ。タイヤサイズは195/65R15。プリウスに装着して圧雪スラロームを試走する。
![画像: 完全なるスリックタイヤ。溝がなくて本当に雪道を走れるのか!? それが走れちゃうんですね。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/cd67e70dcbe85815e629e8eafe73ea996a8ba3b0_xlarge.jpg)
完全なるスリックタイヤ。溝がなくて本当に雪道を走れるのか!? それが走れちゃうんですね。
![画像: アイスガード6のゴムを使ったものと、ウインタータイヤ用ゴムを使ったもの。見た目は色もカタチも匂いも同じ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/da91c3de0c7878a07bf5415b58f831ef6c3e1d1d_xlarge.jpg)
アイスガード6のゴムを使ったものと、ウインタータイヤ用ゴムを使ったもの。見た目は色もカタチも匂いも同じ。
![画像: 雪道もちゃんと走ります。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/d85542a7846474da5b4b5c064ab46798403daec4_xlarge.jpg)
雪道もちゃんと走ります。
見た目は、まるで変わらない「黒くて円いゴム」だ。パターンがないので、その差はゴムだけ、ということになる。どちらのタイヤも見た感じ、スノー路面で曲がれるようには思えないのだが、これでも圧雪路で「曲がり」、アイス路面で「止まる」。
それでもメモによると、ウインタータイヤ用ゴムの方は「スラローム18km/hくらいから横滑る。切り込んでいくとハンドルにジャダーを感じる。ブレーキを踏んでからワンテンポ遅れて減速感がくる」、iG60ゴムの方は「スラロームで横滑りが始まるのは24km/hくらい。発進加速は良い。ブレーキ操作に対してはリニアに制動感がやってくる」ということで、やはりiG60ゴムの良さが体感できた。
![画像: 氷盤路での比較。スリックタイヤでもちゃんと止まる。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/72c625c524d56500247cfa0f1a6964a56662798f_xlarge.jpg)
氷盤路での比較。スリックタイヤでもちゃんと止まる。
![画像: 試走したあと、自分の書いたタイヤ評価のメモを横浜ゴムの担当者と答え合わせ。なぜそういうフィーリングの違いが出るのか、丁寧に教えてもらう。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/dc58753156262b1083cc95d437685980b5b0cb16_xlarge.jpg)
試走したあと、自分の書いたタイヤ評価のメモを横浜ゴムの担当者と答え合わせ。なぜそういうフィーリングの違いが出るのか、丁寧に教えてもらう。
![画像: これは、横浜ゴムのテストドライバーの評価。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/79ad8a12e1dce13109c0e218d73f5f7caebd537a_xlarge.jpg)
これは、横浜ゴムのテストドライバーの評価。
背反する性能をどう両立したのか?
アイスガード6は「氷に効く」、「永く効く」、「燃費に効く」の基本コンセプトに加え、第 4のベネフィットとしてウエット性能(「ウエットに効く」)を新たに追加している。でもこの「ウエット性能」と「アイス性能」は、じつは背反する関係にある。どちらかの性能を上げればどちらかが下がる、そんな関係だ。
これをどのように克服したのか。それはシリカ技術にある。シリカを大幅に増量することで、凝着摩擦を向上させることに成功したのだ。ただし、簡単に「シリカ増量」ができるものではない。シリカはカーボンブラックに比べるとゴムの中でダマ(塊)になりやすく、それを均一に分散させることが必要になる。
ダマになりやすいのは、シリカが親水性、カーボンブラックが親油性という、まさしく「水と油」の関係にあることが原因。それを均一に分散させるには?…これも今回のイベントで勉強してきたので、「その3:座学編」にてレポートします。
![画像: 横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ、iceGUARD 6(アイスガード シックス)。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/11e9cba75bd62eb5ee67dd6d350b2f809958f0d0_xlarge.jpg)
横浜ゴムの最新スタッドレスタイヤ、iceGUARD 6(アイスガード シックス)。
![画像: アイスガード6の「コンパウンド」の秘密を勉強。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/b05aa4ee7756dc2525132b0bd79a138e1068aa1a_xlarge.jpg)
アイスガード6の「コンパウンド」の秘密を勉強。
![画像: ウエットとアイス性能を両立するには?](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/b2d4eb031a36858f2108ec3677d5e3a29934d80d_xlarge.jpg)
ウエットとアイス性能を両立するには?
![画像: ちなみにCBとは「カーボンブラック」のことです。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/0632e0fb5a5a01314664226d325c5472bcb523ce_xlarge.jpg)
ちなみにCBとは「カーボンブラック」のことです。
![画像: シリカを大量に入れれば両立は可能だが、ダマになりやすいのがダマにキズ。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/4157cbdf34b131c448adcc337a56ae7d7c0b9e17_xlarge.jpg)
シリカを大量に入れれば両立は可能だが、ダマになりやすいのがダマにキズ。
![画像: ゴムとシリカはそのままでは結合しない。シランカップリング剤を用いて混合中に化学反応させる。これには高い混合技術が必要になる。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/e89e0a9fbb9a9637faf02a86d9fb326c395ceb5f_xlarge.jpg)
ゴムとシリカはそのままでは結合しない。シランカップリング剤を用いて混合中に化学反応させる。これには高い混合技術が必要になる。
![画像: ということでアイスガード6は、従来に比べてアイス性能は15%向上、同時にウエット性能も5%向上している。](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783018/rc/2018/02/22/8f13aef18c69be40427e55592920fb95d249f34b_xlarge.jpg)
ということでアイスガード6は、従来に比べてアイス性能は15%向上、同時にウエット性能も5%向上している。