走りに特化したRA-Rを
500台限定で発売!
スバルからフラッグシップカー「WRX STI」をベースとする特別仕様車「WRX STI TYPE RA-R」が500台限定で発売された。同車はSTI創立30周年記念コンプリートカーという位置づけで、当然ながら突き詰めたのは「走り」の部分だ。
それも今回は外から見えないところに力を入れたのがスバル&STIらしい部分と言える。見える部分のリアウイングを外すなど、ちょっと見ただけではむしろ地味な仕様だ。
チューニングの方向性は大きく三点で、「軽量化」「サスチューニング」、「エンジン出力アップ」となっている。
試乗コースが群馬サイクルスポーツセンターという林道風のタイトなコースのために、慎重に様子を見るようにスタート。ローダウンしてスプリングレートは上がっているというが、路面のギャップ部分でも当たりがそれほど強くないのが印象的だ。
ショックアブソーバはフロント倒立式、リア正立式で、標準のビルシュタイン社製から、KYB社製に変更していることも影響しているのだろう。バンプ側の減衰力は弱めて、スプリングに仕事をさせている感じで、舗装路のラリー車や、レースカーに寄った仕様のようだ。
その分、リバンプ側の規制で、ギャップを乗り越えた後に硬さを感じることもある。これはコースに慣れてスピードを上げていっても印象が変わらない部分だった。
軽量化は10kgだけだが、
体感的に大きく上回る
ステアリング舵角に対するノーズの入り方もリニアなもの。フロントがシャープに入るというだけではなく、リアサスペンションと駆動配分が効いている感じ。コーナー途中でステアリングを切り足す、失敗コーナリングに近いような場合でも、クルマは何事もなかったように切った分だけ向きを変えてコーナーをクリアしていく。タイトコーナーの切り返しでも、ヒラリヒラリという動きが気持ちいい。
この辺は軽量化が効いているのだろうか?とスペックを確認してみるが、標準車にくらべて10kg軽量になっているにすぎない。と考えるとVDCのセッティングの変更やローダウンされた車高、13:1から11:1へとクイックになったステアリングギア比など、トータル性能による進化なのだろう。
ただ、調子に乗ってペースを上げていくと、どこかで破綻するかもしれないという怖さはある。この辺はドライバーのレベルによっては、操っているというよりも、乗せられているという感じがするかもしれない。
エンジンは「STIコンプリートモデル最強のバランスドBOXERエンジンを謳う。量産型の308ps/6400rpmから、329ps/7200rpmとなった。これまでも高回転型のエンジンではあったが、頑張って回っているという印象から、気持ち良く回っている感じとなった。エンジン回転と車速がシンクロしていてボディをグングンと引っ張っていく感じだ。
今回装着されていたタイヤ、「ミシュラン パイロットスポーツ4S」はロードノイズが少なく、その分、エキゾーストノートが目立つことになり、気分を盛り上げてくれる。ちなみにこの245/40ZR18サイズは、日本では設定のないサイズ。どうしても採用したいということで米国から持ってきたもので量産車では初採用となる。
7月19日に発売されると、500台は即日完売となってしまい、すでに入手は困難になってしまったが、心をときめかせる一台なのは間違いない。
主要諸元:WRX STI TYPE RA-R
●全長×全幅×全高:4595×1795×1465mm ●ホイールベース:2650mm ●重量:1480kg ●エンジン型式・種類・排気量:EJ20・対向4DOHCターボ・1994cc ●最高出力:242kW[329ps]/7200rpm ●最大トルク:432Nm[44.0kgm]/3200〜4800rpm ●燃料・タンク容量:プレミアム・60ℓ ●トランスミッション:6速MT ●タイヤサイズ:245/40ZR18 ●価格:499万8240万円
■文:飯嶋洋治 ■写真:SUBARU