M340i xDriveと新型M3の決定的な違いとは
クルマという製品はタテマエとホンネで成り立っている。たとえばドイツの自動車メーカーは最高速度250km/hの自主規制を守る。社会的責任があるからだ。しかしそのドイツには速度規制のないアウトバーンも存在しているため、どれほどの最高速度が出せるのか、その性能は間違いなく「売り」になる。
それがドイツのプレミアム3社に、ハイエンドスポーツモデルを企画生産するインハウススペシャリストが存在する理由だ。アウディのアウディ スポーツ、メルセデス・ベンツはAMG、そしてBMWはM社がそれにあたる。BMWではMの存在をヤジロベーに喩えて説明する。すなわちBMWが中心にあり、左側にBMW i、そして右側にBMW Mがあってバランスを保っているのだ。
ところが近年、顧客の多様化によって、オーソドックスなセダンをはじめ多くの分野で「スポーツドライブを楽しめるクルマ」に対する要望が大きくなってきた。また同時にSUVあるいはCUVというカテゴリーが誕生、ここにもスポーツネスが求められるようになってきた。そこで、ハイエンドスポーツモデルを企画生産するM社が、そのノウハウを使って誕生させたのが「Mパフォーマンス」である。
このMパフォーマンスモデルは年々進化、増殖しており、新型3シリーズでは発表直後にM340i xDriveが公開された。この3シリーズの総合プロダクトマネージャーを務めたトーマス・ボイマー氏はポルトガルで行われた3シリーズ発表会でこのM340i xDriveと新型M3の決定的な差をこう表現する。
「Mパフォーマンスモデルはパワフルで、ダイナミックな性能を持っています。またこのM340iに搭載されるエンジンは新たに開発されたBMWの量産エンジンB58で、Mモデル専用のS55ではありません。それでも最高出力は374psと旧モデルよりパワフルで、カタログにある最高速度250km/hを超えることができるポテンシャルも持っています。しかし、M社の製品とは違って、リミッターを解除することはできません」
ただし、そのスペックを見ると、M340i xDriveには先代M3に匹敵するほどのダイナミック性能が与えられており、そうなるとボイマー氏が説明するほどM3との差別化は簡単なものではなくなってくるように思われる。しかも、X2 M35i xDrive、X5 M50d xDriveなど、Mパフォーマンスモデルは急速に拡大しているだけに今後の展開に要注目だ。(文:木村好宏)