日本はもとより世界の陸・海・空を駆けめぐる、さまざまな乗り物のスゴいメカニズムを紹介してきた「モンスターマシンに昂ぶる」。復刻版の第11回は、国内最強のディーゼル機関車であるJR貨物のDF200と、最速の特急気動車を紹介しよう。(今回の記事は、2017年11月当時の内容です)

世界に誇れなかった、DD51以前のディーゼル鉄道車両

画像: タイトル画像:圧倒的パワーを誇る、DF200型ディーゼル・エレクトリック機関車「レッドベア」。登場から25年以上になるが本州で見ることはない。性能的には隔世の感でDD51を凌駕する機関車だが、96トンという重量の問題で路盤が弱いローカル線区には入れない。

タイトル画像:圧倒的パワーを誇る、DF200型ディーゼル・エレクトリック機関車「レッドベア」。登場から25年以上になるが本州で見ることはない。性能的には隔世の感でDD51を凌駕する機関車だが、96トンという重量の問題で路盤が弱いローカル線区には入れない。

新幹線・在来線とも世界有数の鉄道技術を誇る日本だが、実は苦手な分野があった。ディーゼル機関の鉄道車両だ。バスやトラックだけでなく乗用車にも広く使われているディーゼルエンジンだが、日本の鉄道においては長い低迷期があった。

1950年代まで日本の鉄道の非電化区間の主役は蒸気機関車(SL)であり、これに代わる大出力のディーゼル機関車の開発はなかなか進まなかった。最も進化したSLは貨物用のD51と旅客用のC62が有名だが、1960年代になると非電化区間の無煙化はもはや急務となっていた。

しかしディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する、欧米で主流の「ディーゼルエレクトリック」方式は技術的に大きく遅れていた。また、エンジン+発電機+走行モーターを搭載しなくてはならない機関車は、大きさや重量という意味で日本向きではなかった。

その一方、大型・大出力ディーゼルエンジンと、大出力を受け止める液体変速機=トルコンの開発も難航した。このため幹線ではSLが、路盤の弱い路線は非力なディーゼル気動車(電車と同様、車両床下にエンジンを積み、編成全体で出力を確保する)が、主力の時代が続いた。

画像: あまりに有名なディーゼル機関車の定番、DD51型。1962年から現代まで、全国の蒸気機関車を引退に追い込み、客車・貨車を問わず牽引したスーパースタンダード。民営化されたJRが軌道に乗るまで、DD51に代わる機関車はなかなか登場しなかった。

あまりに有名なディーゼル機関車の定番、DD51型。1962年から現代まで、全国の蒸気機関車を引退に追い込み、客車・貨車を問わず牽引したスーパースタンダード。民営化されたJRが軌道に乗るまで、DD51に代わる機関車はなかなか登場しなかった。

1962年、この状況を解決した傑作機関車がDD51で、その後近年に至るまで、客車・貨物用を問わずディーゼル機関車のスーパースタンダードになる。DD51は凸型スタイルで、中央に運転台、前後のボンネットに、ダイハツディーゼル製のV型12気筒 61.1Lのインタークーラー付きターボエンジンを搭載。総合出力2200ps/1500rpmを発生した(更新型から後述のDF200と同型を流用)。

一方、気動車は1960年に登場した初の特急専用形キハ80系のパワー不足を大幅改良したキハ181系が登場し、ようやく蒸気機関車の時代を終焉させることができた。しかし国鉄時代の負債は、民営化されたJRの7社が軌道に乗るまで、車両の進化を止まらせていた。とくに非電化路線が大半の「北の大地」北海道では、ディーゼル機関車と特急形気動車の高速・高性能化が強く望まれた。しかし、DD51の重連(2両1組)運用や国鉄時代の特急形キハ183系の改良などは一時しのぎの域を出ず、厳しい自然環境と相まって既存車両の老朽化を顕著にしていた。

最強と最速を追及した新世代の車両、ディーゼル機関車DF200が登場

1992年、JR貨物が画期的なディーゼル機関車DF200を登場させた。欧米の強大なディーゼル機関車と同じ、ディーゼルエレクトリック方式を採用していた。DF200以前にも同じ方式でDF50型機関車が配備されたが、出力不足からDD51のような活躍はできていなかった。

1990年代に入って環境対策や高効率化をメインに、大型ディーゼルエンジンの過給機や燃料噴射装置が急速に進化すると、鉄道にもその効果が波及した。DF200は、単機/1機関車で3600馬力。110km/hの営業運転が可能で、DD51重連よりも「強く・速く、そして経済的」という夢を実現した。

DF200の車体長は在来線車両と共通だが、天井高は4m強と車両限界いっぱいに達する。これは1両の内部に、V12エンジン2基(巨大なV型ラジエターも存在)とアフタークーラー(インタークーラーと同義)付きツインターボ、さらに発電機も2基装備するからだ。単機にこれだけ複雑なパワーユニットが詰め込めるのは、エンジン単体が46.3Lとダウンサイジングされた効果が大きい。

駆動力はVVVFインバータ制御の6モーターで6軸を回す。DF200はJR九州にも登場し、豪華寝台列車「ななつ星 in 九州」も牽引する人気機関車となった。

画像: 振り子式で画期的だった先代キハ281系の正常進化型がキハ283系。在来線気動車では国内史上最速の特急用気動車。設計速度はなんと145km/h。営業運転130km/hで北海道の大地を疾走する、JR北海道のエースだ。

振り子式で画期的だった先代キハ281系の正常進化型がキハ283系。在来線気動車では国内史上最速の特急用気動車。設計速度はなんと145km/h。営業運転130km/hで北海道の大地を疾走する、JR北海道のエースだ。

特急形気動車の大きな進歩は、1994年運用のキハ281系だ。国鉄時代のキハ183系の営業最高速度100km/hを130km/hとし、北海道の都市間移動時間を大幅に短縮した。直系の現行型が283系だが、183系の水平直列6気筒 15L(230ps)または水平対向12気筒 30L(440ps)に対し、コマツ製のN-DMF11HZA、水平直列6気筒 11L(355ps)を1両に2基も搭載。小型高性能化が高速運転に貢献している。なお、排出ガス規制はバス・トラック並みで、形式名の末尾「D」が最新の対策型である。

機関部を小型軽量化することで、床下や台車にゆとりができ、そこにクルマでいうアクティブサスペンション=振り子機構が組み込まれた。つまりカーブに進入した時、車体を最適な角度(283系で6度)まで内側に傾けられ、従来車両の制限より40km/hも高い速度を可能にした。残念なことは、近年保守メンテナンス要員が不足しているだろう。さらに、度重なる事故により高速運転が問題視されていることだ。(文 & Photo CG:MazKen)

画像: N-DMF11HZ系エンジン。先代キハ281系から搭載された新世代ディーゼルエンジンで、現在はコマツが製造する。1車両の床下に2機ずつ搭載され、編成の両数ぶん動力車が存在する電車型のパワーユニット。

N-DMF11HZ系エンジン。先代キハ281系から搭載された新世代ディーゼルエンジンで、現在はコマツが製造する。1車両の床下に2機ずつ搭載され、編成の両数ぶん動力車が存在する電車型のパワーユニット。

■DF200型機関車 パワーユニット 諸元

●エンジン:SDA12V170-1(コマツ)
 V型12気筒ディーゼル・排気ターボ・デュアルアフタークーラー付×2基
●排気量:46.3L(1基あたり)
●最高出力:1800ps/1800rpm(1基あたり)
●発電機:FDM301形×2基
●電動機:FMT100形 320kW×6基6軸駆動
※電気機関部は東芝製

■キハ283系気動車 パワーユニット 諸元

●エンジン:N-DMF11HZA,B(コマツ)
 水平直列6気筒ディーゼル・排気ターボ・デュアルアフタークーラー付×2基
●排気量:11L(1基あたり)
●最高出力:355ps/2100rpm(1基あたり)

This article is a sponsored article by
''.