モンスターエンジンに昂ぶるシリーズ 第19回は、北の大地で活躍する隠れたモンスターたち。国内最強のディーゼル機関車、JR貨物のDF200と最速の特急気動車を紹介しよう。

自動車業界だけにとらわれず戦闘機や軍艦、鉄道など、陸・海・空をゆく、あらゆるマシンに搭載された超ド級で怪物のようなエンジンたちを紹介する「モンスターエンジンに昂ぶる」。短期集中連載“第二弾”として2018年末-2019年始に掲載していこう!

世界に誇れなかった、DD51以前のディーゼル鉄道車両

新幹線・在来線とも世界有数の鉄道技術を誇る日本だが、実は苦手な分野があった。ディーゼル機関の鉄道車両だ。

バスやトラックだけでなく乗用車にも広く使われているディーゼルエンジンだが、日本の鉄道においては長い低迷期があった。

1950年代まで日本の鉄道の非電化区間の主役は蒸気機関車(SL)であり、これに代わる大出力のディーゼル機関車の開発はなかなか進まなかった。最も進化したSLは貨物用のD51と旅客用のC62が有名だが、1960年代になると非電化区間の無煙化はもはや急務となっていた。

しかしディーゼルエンジンで発電してモーターで駆動する、欧米で主流の「ディーゼルエレクトリック」方式は技術的に大きく遅れていた。また、エンジン+発電機+走行モーターを搭載しなくてはならない機関車は、大きさや重量という意味で日本向きではなかった。

その一方、大型・大出力ディーゼルエンジンと、大出力を受け止める液体変速機=トルコンの開発も難航した。このため幹線ではSLが、路盤の弱い路線は、非力なディーゼル気動車(電車と同様、車両床下にエンジンを積み、編成全体で出力を確保する)が、主力の時代が続いた。

画像: あまりに有名なディーゼル機関車の定番DD51型。1962年から現代まで、全国の蒸気機関車を引退に追い込み、客車・貨車を問わず牽引したスーパースタンダード。民営化されたJRが軌道に乗るまで、DD51に代わる機関車はなかなか登場しなかった。

あまりに有名なディーゼル機関車の定番DD51型。1962年から現代まで、全国の蒸気機関車を引退に追い込み、客車・貨車を問わず牽引したスーパースタンダード。民営化されたJRが軌道に乗るまで、DD51に代わる機関車はなかなか登場しなかった。

1962年、この状況を解決した傑作機関車がDD51で、その後近年に至るまで、客車・貨物用問わずディーゼル機関車のスーパースタンダードになる。DD51は凸型スタイルで、中央に運転台、前後のボンネットに、ダイハツディーゼル製V12気筒 61.1Lのインタークーラー付きターボエンジンを搭載。総合出力2200ps/1500rpmを発生した(更新型から後述のDF200と同型を流用)。

一方、気動車は1960年に登場した初の特急専用形キハ80系のパワー不足を大幅改良したキハ82系が登場し、ようやく蒸気機関車の時代を終焉させることができた。

しかし国鉄時代の負債は、民営化されたJRの7社が軌道に乗るまで、車両の進化を止まらせていた。とくに非電化路線が大半の「北の大地」北海道では、ディーゼル機関車と特急形気動車の高速・高性能化が強く望まれた。しかし、DD51の重連(2両1組)運用や国鉄時代の特急形キハ183系の改良などは一時しのぎの域を出ず、厳しい自然環境と相まって既存車両の老朽化を顕著にしていた。

最強と最速を追及した新世代の車両、ディーゼル機関車DF200が登場

1992年、JR貨物が画期的なディーゼル機関車DF200を登場させた。方式は、欧米の強大なディーゼル機関車と同じ、ディーゼルエレクトリック方式だ。DF200以前にも同じ方式でDF50型機関車が配備されたが、出力不足からDD51のような活躍はできていなかった。

1990年代に入って環境対策や高効率化をメインに、大型ディーゼルエンジンの過給機や燃料噴射装置が急速に進化すると、鉄道にもその効果が波及した。

DF200は、単機/1機関車で3600馬力。110km/hの営業運転が可能で、DD51重連よりも「強く・速く、そして経済的」という夢を実現した。

DF200の車体長は在来線車両と共通だが、天井高は4m強と車両限界いっぱいに達する。

これは1両の内部に、V12エンジン2基(巨大なV型ラジエーターも存在)とアフタークーラー(インタークーラーと同義)付きツインターボ、さらに発電機も2基装備するからだ。単機にこれだけ複雑なパワーユニットが詰め込めるのは、エンジン単体が46.3Lとダウンサイジングされた効果が大きい。

駆動力はVVVFインバータ制御の6モーターで6軸を回す。

DF200はJR九州にも登場し、豪華寝台列車「ななつ星in九州」も牽引する人気機関車となった。

画像: 圧倒的パワーを誇る、DF200型ディーゼル・エレクトリック機関車/レッドベア。登場から25年にもなるが本州で見ることはない。性能的には隔世の感でDD51を凌駕する機関車だが、96トンという重量の問題で路盤が弱いローカル線区には入れない。

圧倒的パワーを誇る、DF200型ディーゼル・エレクトリック機関車/レッドベア。登場から25年にもなるが本州で見ることはない。性能的には隔世の感でDD51を凌駕する機関車だが、96トンという重量の問題で路盤が弱いローカル線区には入れない。

特急形気動車の大きな進歩は、1994年運用のキハ281系だ。国鉄時代のキハ183系の営業最高速度100km/hを130km/hとし、北海道の都市間移動時間を大幅に短縮した。直系の現行型が283系だが、183系の水平直列6気筒 15L(230ps)または水平対向12気筒 30L(440ps)に対し、コマツ製N-DMF11HZA、11L(355ps)を1両に2基も搭載。小型高性能化が高速運転に貢献している。なお、排出ガス規制はバス・トラック並みで、形式名の末尾「D」が最新の対策型である。

画像: N-DMF11HZ系エンジン。先代キハ281系から搭載された新世代ディーゼルエンジンで、現在はコマツが製造する。1車両の床下に2機ずつ搭載され、編成の両数ぶん動力車が存在する電車型のパワーユニット。

N-DMF11HZ系エンジン。先代キハ281系から搭載された新世代ディーゼルエンジンで、現在はコマツが製造する。1車両の床下に2機ずつ搭載され、編成の両数ぶん動力車が存在する電車型のパワーユニット。

機関部を小型軽量化することで、床下や台車にゆとりができ、そこにクルマでいうアクティブサスペンション=振り子機構が組み込まれた。つまりカーブに進入した時、車体を最適な角度(283系で6度)まで内側に傾けられ、従来車両の制限より40km/hも高い速度を可能にした。

残念なことは、近年保守メンテナンス要員が不足しているだろう。さらに、度重なる事故により高速運転が問題視されていることだ。(文&Photo CG:MazKen/ホリデーオート2018年1月号より)

画像: キハ283系。在来線気動車では国内史上最速の特急用気動車。設計速度はなんと145km/h。営業運転130km/hで北海道の大地を疾走する。振り子式で画期的だった先代キハ281系の正常進化型で、JR北海道のエースだ。

キハ283系。在来線気動車では国内史上最速の特急用気動車。設計速度はなんと145km/h。営業運転130km/hで北海道の大地を疾走する。振り子式で画期的だった先代キハ281系の正常進化型で、JR北海道のエースだ。

DF200型機関車 パワーユニット諸元

ディーゼルエンジン:SDA12V170-1(コマツ)
V型12気筒・排気ターボ・デュアルアフタークーラー付×2基
排気量:46.3L(1基あたり)
最高出力:1800ps/1800rpm(1基あたり)
発電機:FDM301形×2基
電動機:FMT100形 320kW×6基6軸駆動
※電気機関部は東芝製

キハ283系気動車 パワーユニット諸元

ディーゼルエンジン:N-DMF11HZA,B(コマツ)
水平直列6気筒・排気ターボ・デュアルアフタークーラー付×2基
排気量:11L(1基あたり)
最高出力:355ps/2100rpm(1基あたり)

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