1969年3月12日に開幕したジュネーブオートサロンで衝撃的なデビュー
ポルシェは2019年5月14日から9月15日までドイツのポルシェ博物館で開催されるポルシェ917の50周年記念特別展で、50年前のポルシェ917を現代流に解釈した「917コンセプトスタディ」を初公開する。
「917」は1969年3月12日に開幕したジュネーブオートサロンで衝撃的なデビューを飾り、ポルシェに初のル・マン24時間耐久レース総合優勝をもたらした歴史的なモデル。1970年6月17日、ハンス・ヘルマン/リチャード・アトウッド組のポルシェ917がル・マンのサルテサーキットを343周、4607.81kmを走破しトップでゴールを果たした。
「 917コンセプト」はそのポルシェ917へのオマージュとして製作されたスタディモデルで、ボディラインやマルチスポークホイールに伝説のモデルへの憧憬がうかがえる。赤と白に彩られたボディカラーは1970年にル・マン初優勝を飾った23号車ザルツブルグ チームのマシンをモチーフとしたものだ。
「 917コンセプト」の詳細はまだ明らかになっていないが、ポルシェにとって「917」は忘れることのできないモデルというわけだ。
ポルシェでさえ、ル・マン制覇までの道のりは遠かった
「ル・マンの王者」と言われるポルシェだが、最初からル・マンで強さを発揮したわけではない。1923年に行われた第1回ル・マン24時間レースではベントレーが優勝、ル・マン草創期は「ベントレー・ボーイズ」と呼ばれた強豪が4連勝を含む5勝をあげている。ベントレーがル・マンから撤退するとアルファロメオの時代がやってくる。アルファロメオもまた名車「8C 2300」で1931年から4連勝するなど華々しい成績をあげている。
ポルシェの創立は1948年、ベントレーやアルファロメオが活躍した時代にはまだ会社そのものもなかった。第二次世界大戦後はフェラリーとジャガーが覇を競った。ポルシェが初めてル・マンに挑戦したのは1951年。創立したばかりのスポーツカーメーカーは、わずか1086ccの水平対向4気筒エンジンを搭載した「356」で出場しクラス優勝を果たしている。
ポルシェにとってレースでの活躍は販売や性能の向上に直結する重要な項目であり、その後も、「550」、「904」、「906」など高性能なスポーツカーを開発、瞬く間に2L以下のスポーツカーカテゴリーでは世界トップレベルの成績をあげるようになった。
しかし、7L級の大排気量エンジンの戦いとなっていたフェラーリ×フォードのバトルに、小排気量のスポーツカーではとうてい太刀打ちできなかった。
そんなポルシェに追い風が吹いた。フェラーリ×フォード対決となっていたグループ4の排気量が5Lまでに制限されるとともに、グループ6の最大排気量が3Lに引き上げられたのだ。そこでポルシェは3L水平対向8気筒エンジンを搭載したグループ6の「908」を開発し投入したが、それでもグループ4との差は明確だった。
そこでいよいよポルシェはル・マン制覇に向けて大排気量のグループ4への参入に傾くのだが、幸運にもタイミング良く1969年からグループ4の年間生産台数規定が50台から25台から引き下げられることになった。こうして誕生するのが「917」で、歴史に残る「917」は過渡期を迎えていたル・マンのルール改正という幸運がもたらしたモデルとも言えた。(続く)