また1台、日本へ魅力的なディーゼルエンジン搭載車が上陸した。ステルヴィオである。アルファロメオらしいスポーツ性能とともに、尿素SCRを採用しポスト新長期規制をクリアした高い環境性能も備える。(Motor Magazine 2019年5月号より)
画像1: 【試乗】アルファロメオ ステルヴィオ 2.2ターボディーゼルQ4は、高い経済性とスポーティさを持ち合わせたSUV

欧州のディーゼルモデルをリードするアルファロメオ

環境意識の高いヨーロッパではディーゼル人気に陰りが見えるとの報道もあるが、いくぶん誤解を含んだ情報だ。西欧で販売された新車のディーゼル比率を見ると2011年の55.7%をピークにして以降は微減傾向にあり、2017年は44.4%まで落ち込んだ。

ただし、ディーゼルの売れ行きが伸び悩んでいるのはコンパクトカーが中心で、それ以上のサイズは相変わらず根強い人気を誇っていると指摘するヨーロッパの自動車関係者は少なくない。

コンパクトクラスのディーゼル需要が低下しているのは、排出ガス規制の強化に伴って後処理装置のコストが増大し、その負担が車両価格と釣り合わなくなったためだと彼らは主張する。

反対に、ミディアム以上のクラスではドライバビリティや燃料代などの点で明確なメリットが認められるため、ディーゼル人気は相変わらず高止まりしているというのだ。ヨーロッパにおけるそんなディーゼル人気を牽引してきたのが、アルファロメオである。

画像: 長距離ドライブで強みを発揮するディーゼルエンジン。

長距離ドライブで強みを発揮するディーゼルエンジン。

背中を押されたかのように力強く加速して行く

彼らは1997年に世界で初めてコモンレール式ディーゼルエンジンを乗用車に搭載。ガソリンエンジンに比肩しうるほど静かでパワフルでクリーンなディーゼルエンジンを世に送り出す下地を作った。その後の10年間で西欧におけるディーゼルシェアは22.3%から53.3%へと跳ね上がったのだから、彼らの功績は極めて大きいというべきだろう。

そんなアルファロメオのディーゼルモデルがついに日本上陸を果たした。しかもジュリアとステルヴィオの2台が同時にデビューするという。そこでわれわれは人気のSUVにディーゼルエンジンを搭載したステルヴィオ2.2ターボディーゼルQ4を借り出し、まだ春浅い富士山周辺でその乗り味をチェックすることにした。

ステルヴィオディーゼルのドライバーズシートに腰掛け、ハンドルに設けられたスタート&ストップボタンを押すと、排気量2.2Lの直4ターボディーゼルエンジンは勢いよく目覚めた。

正直、そのエンジン音が際立って静かだとは思わない。最新のプレミアムカーのなかには、ステルヴィオよりも静かなディーゼルモデルはいくつかある。ただし、アルファロメオのディーゼルエンジンは金属質のノッキング音が目立たないうえ、エンジン音がこもることもない。だから、ボリュームは小さくなくても、うるさくは感じにくいのだ。

私は1997年にデビューした初のコモンディーゼルモデル、アロファロメオ156 1.9JTDにヨーロッパで試乗した経験があるが、あのエンジンも静かさを追求しているというよりは、「いい音」を積極的に聞かせようとしているように感じた。

そう、彼らにとって活気あるエンジン音は、それがディーゼルだろうとガソリンだろうと魂を掻き立てるサウンドとして心に響くものなのである。実際、ステルヴィオディーゼルも排気音というよりメカニカルノイズ中心の快音で、不快にはまったく思えなかった。 

ステルヴィオディーゼルはエンジン音だけでなく、走りも活気に満ちたものだった。巡航状態からアクセルペダルを踏み込めば、エンジン回転数が高まるよりも早く瞬時にトルクがわき起こり、ぐいっと背中を押されたかのように力強く加速していく。しかも、この“力強さ”を幅広い回転数で楽しめるのがディーゼルの強みで、1000rpm+αのボトムエンドから4000rpmオーバーのトップエンドまで踏めば即座に臨戦態勢に入ってくれる。

よく、「ディーゼルは遅い」という声を耳にするが、回転数一定のままから素早い加速に移れるディーゼルのほうが、ある意味で走りのレスポンスは鋭いともいえるだろう。 ディーゼルエンジンのもうひとつのメリットは、高速走行時の追い越し加速でキックダウンを頻繁に必要としない点にある。

アクセルペダルを優しく踏み込む程度であればギア一定のままスルスルと加速。上り坂に差し掛かっても微妙なペダルコントロールだけでキックダウンせずに車速を一定に保ちやすい点もディーゼルのメリットといえる。こういうシーンでいちいちシフトダウンするかどうかは、長距離を走ったときの疲労感に確実に効いてくるはずだ。

画像: アルミ製エンジンブロック、中空カムシャフトの採用によりエンジンの単体重量155kgを実現。

アルミ製エンジンブロック、中空カムシャフトの採用によりエンジンの単体重量155kgを実現。

ガソリンモデルと変わらないワインディングロードでの走り味

いっぽうで、ワインディングロードを走ったときの感触はガソリン仕様のステルヴィオとほとんど変わらなかった。ブレーキングを残しつつコーナーに進入した際、大きくロールしてフロントの外輪に大きな負担をかけることなく、4輪がぐっと沈み込んでバランスのいい接地感を生み出してくれるのはステルヴィオならではの美点。おかげでほとんどストレスを感じることなく山道を駆け抜けていくことができた。

ところで、ステルヴィオのハンドリングついては今回、新たな発見があった。これまで私は、直進状態から切り始めた直後のステアリングゲインがステルヴィオは高すぎると何度となく指摘してきたが、これはオプションのインチタイヤを装着していたことに原因があったようなのだ。

試しに、今回の取材に先立って18インチ仕様に試乗したところ、過激なハンドリングのリアクションはきれいさっぱり消えていたうえに、ショックのいなし方も巧みで乗り心地も実に快適なことが確認できた。2インチのサイズ違いでここまでハンドリングと乗り心地が変化するのは極めて異例だが、ステルヴィオの足まわりはタイヤの特性がストレートに反映される傾向が強いのかもしれない。 

たしかにディーゼルはちょっとエンジン音が大きいし、バイブレーションも多め。ただし、ドライバビリティは明らかにガソリンモデルの上を行き、ワインディングロードを十分楽しめるスポーティさも持ち合わせている。

ちなみに、今回の取材にはガソリンモデルのステルヴィオも一緒に連れ出したが、同じルートを連なって走った燃費は、ガソリンの約10km/Lに対してディーゼルは約16km/Lと意外な大差がついたと言える。これなら私は、迷わずディーゼルを選ぶだろう。(文:大谷達也)

画像: インパネはガソリンモデルと同じ。2.0ターボQ4と同様にシートヒーター付レザーシートやリアパーキングカメラなどが標準装備されている。

インパネはガソリンモデルと同じ。2.0ターボQ4と同様にシートヒーター付レザーシートやリアパーキングカメラなどが標準装備されている。

画像: 写真左はガソリン車のステルヴィオファーストエディション。今回はこの2台を乗り比べながら試乗し、それぞれの個性を確認した。

写真左はガソリン車のステルヴィオファーストエディション。今回はこの2台を乗り比べながら試乗し、それぞれの個性を確認した。

■アルファロメオ ステルヴィオ2.2ターボディーゼルQ4主要諸元

●全長×全幅×全高=4690×1905×1680mm
●ホイールベース=2820mm
●車両重量=1820g
●エンジン= 直4DOHCディーゼルターボ
●排気量=2142cc
●最高出力=210ps/3500rpm
●最大トルク=470Nm/1750rpm
●駆動方式=4WD
●トランスミッション=8速AT
●価格=617万円(税込)

This article is a sponsored article by
''.