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新たな仲間との出会いがウッディに変化を与える
世界初の長編フルCGアニメーションとして製作・公開され世界的に大ヒットした1995年の第1作から早24年。2010年の前作「トイ・ストーリー3」で、観客を涙で包んでから9年。シリーズは完結したと思っていたが、まだこの物語には描くべきものが残っていた。それが本作の主人公カウボーイ人形・ウッディの未来への選択。
子供の頃、そばにあった数々のオモチャには、人それぞれに思い出や愛着があるはず。おとなになっても捨てたり失くしたりせずに手元に置いている人もいるだろうが、大多数のおとなたちは子どもの頃に何よりも大事にしていたオモチャたちのことは忘れてしまうもの。
そんなオモチャたちが人間の知らないところで自我を発揮していたとしたら…というのが「トイ・ストーリー」の出発点。そこには子どもが可愛がっていたオモチャたちの子どもたちへの愛情や不満、友情が描かれ、観客は子ども時代の郷愁とともに現在の自分たちの姿も投影した。
そのオモチャたちから“卒業”した子どもたちは次の世代の子どもたちにそのオモチャを託していく。そうして人の思いやオモチャたちの役割は連綿と受け継がれていく。それが「トイ・ストーリー」のひとつの結論だと思っていたのだが…。
「トイ・ストーリー3」でウッディたちオモチャは、ずっと一緒に遊んできた持ち主アンディが大学生になる前に、4歳の女の子・ボニーにウッディたちを譲ったことでアンディとの暮らしにひとつの区切りをつけた。
新しい持ち主のボニーは少々引っ込み思案。初めての幼稚園体験入園で自分だけの友達スプーン人形フォーキーを作り、ウッディたちの仲間に加えた。だが、フォーキーは自分がゴミから作られたからゴミなのだと思い込み、何度もゴミ箱に向かう。ウッディは、そんなフォーキーを「ボニーとの思い出」を作るために面倒を見ることになる。
そんなある日、ボニーが家族とキャンプに出かけた道中で、ウッディはかつて一緒に暮らしていた羊飼い人形のボーと再会。ボーはひとりの子供を持ち主と決めずに自分の意志で外の世界で子供たちと遊ぶ自由な人形となっていた。
ボーとの再会を喜ぶウッディ、だがそんな折りウッディに内蔵されたボイスボックスを狙う人形たちにフォーキーが捕らわれてしまう。フォーキーを救い出すためにウッディとボー、新たなオモチャ仲間たちはフォーキー救出の大作戦を展開することに…。
物語の主人公・ウッディは子どもたちのそばにいることを一番の幸福として存在しているトイ・ドール。それは本作でもけっしてブレずにいる。自分のことよりも自分たちと遊んでくれる子供たちのために、そしてそんな子どもたちと一緒にいるオモチャの仲間のために一生懸命行動する。
その一途な純粋さが、ときに見当違いになることはあっても、すべては誰かのために存在することが根幹にあるキャラクター。
だが、ふと立ち止まってみると、本当にそれで自分はいいのか?という疑問に突き当たってしまうことも。それはオモチャだけではなく、我々観客にも同じことが言えるだろう。
映画のキャッチコピーとして使われている「あなたはまだ—本当の『トイ・ストーリー』を知らない」の意味とは。『トイ・ストーリー』の部分を『自分が願うこと』に置き換えてみれば、答えが出てくる。
オモチャも人間も、そこからすべての幸福が生まれていくような、そんな気がしてならない。(文:永田よしのり https://ameblo.jp/blues-yoshi)
7月12日公開
上映時間:100分
監督:ジョシュ・クーリー
声の出演:トム・ハンクス、ティム・アレン、アニー・ポッツほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン