SKYACTIVテクノロジーと魂動デザインで新たなファンを獲得している近年のマツダ。一方で、世界で唯一量産に成功したロータリーエンジンとその搭載車に今でもただならぬ愛情を注ぐ人たちがいる。そんなオーナーと貴重な愛車を7日連続でご紹介! 本日は1979年のデイトナ24時間で2位に輝いた77号車のレプリカを紹介しよう。(取材・文:増田 満/写真:伊藤嘉啓)

海外のモータースポーツで活躍した初代サバンナRX-7

サバンナが成し遂げたレース100勝という輝かしい記録は、マツダオート東京と片山義美率いる片山レーシングの活躍によるものだ。数多くのチャンピオンを獲得し国内最強のレーシングカーになった70年代後半に、マツダオートはル・マン24時間レース参戦を目論む。その前哨戦として1978年にアメリカで開催されたデイトナ24時間レースにサバンナRX-3で参戦するも、残念ながらリタイヤしている。そしてこの動きは1978年3月にフルモデルチェンジして生まれたサバンナRX-7にも引き継がれることになる。

画像: 1978年デビュー当時、国内は排出ガス規制の余波で各メーカーはワークス活動から撤退、沈滞ムードが漂っていた。そこでマツダは新型スポーツカーの活路を海外のレース/ラリーに見いだした(写真は初代前期型のGTリミテッド)

1978年デビュー当時、国内は排出ガス規制の余波で各メーカーはワークス活動から撤退、沈滞ムードが漂っていた。そこでマツダは新型スポーツカーの活路を海外のレース/ラリーに見いだした(写真は初代前期型のGTリミテッド)

リトラクタブル・ヘッドライトを採用してピュアスポーツカーに生まれ変わったSA22C型初代サバンナRX-7は、発売と同時に国内だけでなくアメリカでも大ヒット。さらに販売促進的な意味合いもあり、発売翌年である1979年のアメリカ・デイトナ24時間レースにRX-7が参戦。初参戦にも関わらずGTUクラスで1位と2位を獲得する大活躍をした。また同年からル・マン24時間レースにマツダオート東京により参戦を開始。これが1991年に日本勢として初めてル・マン24時間レースでの優勝につながっていくのだ。

デイトナ24時間レースに限って言えば、初優勝した1979年から1986年までの7年間、実にGTUクラスで連続優勝している。またIMSAシリーズでのGTUクラスでマニファクチャラーズタイトルを1980年から5年連続で獲得。1985年までにIMSAで通算67勝を挙げている。アメリカで強烈な印象を与えたのが初代RX-7であるSA22Cなのだ。この時期、国内レースでの活躍が少なく、SA22Cのレーシングカーといえばデイトナ24時間やル・マン24時間レース出走車のイメージが強い。だからあまりレーシング仕様にモディファイする例が少ないのかもしれない。

1979年デイトナ24時間でクラス2位に輝いた77号車をレプリカ!

今回紹介するのは、1979年にデイトナ24時間レースでワン・ツー・フィニッシュを成し遂げたマシンを再現したSA22C(ベースモデルは後期型ターボ)。赤いカラーリングとゼッケンでわかるように、GTUクラス2位になったW.ボーレン・J.ダウニング・R.マンデビル組の77号車を再現しているのだ。白地のボディに赤いストライプが走るボディには、大型エアダムスカートと一体になったフロント・オーバーフェンダーとリア・オーバーフェンダー、そしてスポイラーが特徴だ。ワークスカーはすでに解体されており、当然ワークス用のパーツもない。社外品のなかから形状の似たものを選び、加工することで当時のスタイルを再現しているのだ。

画像: オーナーの渡辺靖彦さん(57歳)。マツダにはエンジンパーツの再販を望みたいとのこと。

オーナーの渡辺靖彦さん(57歳)。マツダにはエンジンパーツの再販を望みたいとのこと。

画像: 後期型ターボながら初期型のフロントまわりを移植。巨大なオーバーフェンダーにより一回り大きなマシンに見える。1979年のデイトナ24時間レースで2位に入賞したマシンを再現した迫力のフォルムで、デイトナ用オーバーフェンダーと呼ばれるパーツなどでカスタムされた。

後期型ターボながら初期型のフロントまわりを移植。巨大なオーバーフェンダーにより一回り大きなマシンに見える。1979年のデイトナ24時間レースで2位に入賞したマシンを再現した迫力のフォルムで、デイトナ用オーバーフェンダーと呼ばれるパーツなどでカスタムされた。

画像: 巨大なリヤスポイラー、アクリル製サイドウインドーなど当時のワークスカーをほぼ忠実に再現している。外観でワークスカーと異なるのは、後期型テールランプとハヤシ製アルミホイールを履いているところくらいだ。

巨大なリヤスポイラー、アクリル製サイドウインドーなど当時のワークスカーをほぼ忠実に再現している。外観でワークスカーと異なるのは、後期型テールランプとハヤシ製アルミホイールを履いているところくらいだ。

サイドウインドーを見れば、アクリルで作り直してあることがわかる。これはレーシングカーと同じ形状のスライドウインドーとするため、新たに製作したものだ。ドアミラーもワークスカーと同じ形状を再現しており、まったく隙のないスタイルになっている。本物のワークスカーと異なるのは、後期型ベースゆえ一体型のリアコンビランプと、ハヤシレーシング製のアルミホイールくらいだろう。当時の写真が少ないためカラーリングやステッカーの再現には苦労があったと思われるが、実物そっくりである。

画像: サイドウインドーはアクリル製の固定タイプとされ、スライド式にしている。これもワークスカーと同じ形状を再現しているのだ。整流効果の高いドアミラーは社外品で販売されているものを使った。

サイドウインドーはアクリル製の固定タイプとされ、スライド式にしている。これもワークスカーと同じ形状を再現しているのだ。整流効果の高いドアミラーは社外品で販売されているものを使った。

デイトナ24時間に参戦したSA22Cは当初12Aエンジンのままだったが、6月以降は13Bエンジンに変更されていた。そして今回紹介するクルマも13Bエンジンに換装されている。吸気はブリッジポート仕様とされウエーバーキャブレターが組み合わされている。エンジン同様に室内もレーシングカーらしくされている。すべての内装材が取り去られ、4点式ロールケージで固められている。純正で残されたダッシュボードのメーターパネルにはデジタルメーターが埋め込まれ、センターコンソールにはトグルスイッチが並ぶ。また助手席の足元にバッテリーが移設され重量配分にも配慮されている。

画像: 13Bエンジンに載せ換え、ブリッジポート仕様としている。キャブレターはウエーバーのダウンドラフトタイプを選び、当時のワークスカー並みにパワフルになっている。ラジエターは電動ファンを2基がけにした。

13Bエンジンに載せ換え、ブリッジポート仕様としている。キャブレターはウエーバーのダウンドラフトタイプを選び、当時のワークスカー並みにパワフルになっている。ラジエターは電動ファンを2基がけにした。

このマシンを製作したのは、この短期連載の前回・前々回に登場したサバンナRX-3オーナーである成田秀喜さん。当初は自らステアリングを握ってサーキット走行を楽しんでいたが、所有台数が増えてしまっため友人である現オーナーの渡辺靖彦さんに譲っている。逆にドライバーが増えたことで、イベントレースなどではRX-3とRX-7がランデブーできるようになったというわけだ。渡辺さんもロータリーサウンドに痺れっぱなしだというほど、そのエンジンサウンドと加速力は格別。いつまでも乗り続けたいからと、エンジンパーツの再販をメーカーにお願いしたいと語ってくれた。

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