1954年、東京モーターショーの前身である「全日本自動車ショウ」が開催されてから、2019年で65年が過ぎた。そんな東京モーターショーの歩みを、当時のニューモデルやコンセプトカーなど、エポックメイキングなモデルを軸に紹介する。今回は最終回として2007年の第40回ショーを振り返る。2009年以降のショーについては、機会をあらためて紹介してみたい。

久しぶりに商用車なども統合した総合モーターショーに

2007年の第40回ショーは、開催形態を10年ぶりに「乗用車/商用車/二輪車/車体・部品・機械器具関連製品を含む新・総合ショー」に変更して開催された。ワールドプレミア77台を含む最先端の製品・技術が多数発表されたが、もっとも人気を集めたのは、新次元の最高級スポーツカー「NISSAN GT-R」市販型の参考出品だった。カルロス・ゴーン社長の“公約”どおり「国内では12月、米国では2008年6月に発売する」と販売計画も明らかにされ、集まった観衆の興味を独り占めした感があった。一方で、レクサスLF-A(5カ月後に発売)やホンダCR-Z(コンセプトカー。3年後に発売)など、現実味を帯びたスポーツカーにも熱い視線が注がれている。

■ホンダ PUYO(プヨ、タイトル写真)

使う人だけでなく周りの人も楽しくさせる、燃料電池車のコンセプトモデル。クリーン、セーフ、ファンの要素を融合し、燃料電池技術を活用した超高効率なスモール骨格と、人と環境に優しいデザインによる新しいモビリティの提案だ。「シームレス ソフトボックス」をコンセプトに開発された全長2800×全幅1650×全高1650mmのスクエアなボディは、与えられた寸法の中で最大空間を追求した結果で、ボディ自体を柔らかい素材にしたジェルボディや光るボディの採用により、人とクルマの関係をより密にする工夫が取り入れられていた。

「シルク フィール」をコンセプトに開発された内装は、布の伸縮性を活かし、起動とともに盛り上がるインパネモニターとスイッチ、光る液体を使ったメーター表示、ジョイスティックによる直感操作など、人の感覚や気持ちに優しく応えるインターフェースが提案されている。そのほか、左右に大きなウイングアップドアを備える360度パノラミックキャビン、360度の定地旋回が可能な4輪インホイールモーターによる機動性、FC(燃料電池)から発生する水マネジメントを解消した小型軽量のV Flow FCスタックなど、人にも環境にも優しい未来型タウンモビリティのアイディアが満載されていた。

画像: ホンダ プヨは環境の先にあるモビリティの姿を見つめた。

ホンダ プヨは環境の先にあるモビリティの姿を見つめた。

■日産 INTIMA(インティマ)

日産が提唱する「モダンリビングコンセプト」をさらに発展させ、非日常の世界へさりげなく誘うコンセプトカーで、「自分やパートナーとの時間を優雅に楽しめる室内空間を実現した新世代サルーン」をテーマに開発された。全長4980×全幅1840×全高1450mmという堂々たるサイズのボディは、エッジの利いたシャープなラインと後方に向かってアーチを描くサイドキャラクターラインにオーガニックな面を組み合わせて、優雅なシルエットを実現。何より開度150度以上という観音開きドアが目を引いた。

インテリアは「アートに積極的に取り組むことでリラックス感をより高いレベルで演出」するため、アルカンターラ&レザーなど上質な素材とアーティステックな造形処理を組み合わせる。ウエーブを巧みに取り入れたセンターコンソール/インストルメントパネル/コンソール/ドアトリムのほか、天井には間接照明のイルミネーションも設えられた。シートは完全独立型の4座で、ドアを開けると助手席が約80度外側に回転する機能を採用してパッセンジャーをエスコートする。パワートレーンは非公表だが、展示車にはV6のクリーンディーゼルエンジンが搭載されていた。

画像: エクステリアは現実的だった日産 インティマ。ドアは観音開きで150度以上に大きく開く。

エクステリアは現実的だった日産 インティマ。ドアは観音開きで150度以上に大きく開く。

■三菱 i MiEV SPORT (アイミーブ スポーツ)

i MiEVをベースに、より“走り”のイメージを高めたクーペ風フォルムのボディを架装。三菱自慢の車両運動統合制御システムS-AWCを構成するため、前輪にインホイールモーター技術を組み込んで電気自動車の可能性に挑んだコンセプトカー。プラットフォームはi MiEV用だが、骨格にアルミ押し出し材とアルミダイキャスト材を組み合わせた軽量高剛性・高強度のアルミスペースフレーム構造を採用し、ボディは軽規格でなく全長3450×全幅1600×全高1400mmに設定されている。

フロア部分に大容量のリチウムイオンバッテリーを、ラゲッジルーム下にモーター/インバーターなどを搭載して、前後重量配分の適正化と低重心化及び居住空間の確保を実現していた。モーターは、前輪に2基のインホイールモーター、後輪にシングルモーターという3基の永久磁石式同期モーターを搭載。各モーターの出力はE-4WDシステムで電子制御する。さらに、後輪左右のトルク移動を電動モーターによりダイレクトに制御するE-AYCシステムも新たに採用した。加えて、ABS、ASCを統合制御するS-AWCにより、4輪の駆動力、制動力を独立して制御することが可能となり、「意のままの操縦性」と「卓越した安定性」を実現している。まさに次世代EVスポーツにふさわしい魅力を備えたモデルだった。

画像: 三菱 I MiEV スポーツは、i MiEVをベースにスポーツクーペに仕立てた。

三菱 I MiEV スポーツは、i MiEVをベースにスポーツクーペに仕立てた。

■スズキ X-HEAD(エックス・ヘッド)

従来にない多様な価値をもたらす新ジャンルの“クロスユーティリティビークル”をテーマに開発されたコンセプトカー。高い走破性を持つジムニー&エスクード、高い積載性を持つキャリイのDNAを受け継ぎ、機能的な頼もしさを備えたエクステリア、防水性を高めた全天候対応インテリアにまとめ上げたクロスユーティリティビークルだ。X-HEADというネーミングは、乗る人のライフスタイルや価値観に合わせて様々な用途に対応するこのクルマの未知なる可能性を意味している。

全長3750×全幅1695×全高1860mmのボディに、さまざまな用途に合わせた荷台ユニットを架装することで、大人2人が寝泊まりできる“キャンパー”や街でクールに乗りこなす“ファッション”など、乗る人の遊び心を刺激するカスタマイズを可能にしている。もちろん、救難・救助を想定したレスキューなど、社会的使命にも応えるタフで楽しいクルマの提案だった。パワートレーンはミッドシップに搭載した1.4Lの直4DOHCに6速DCTを組み合わせ、LSD付きセンターデフ式フルタイム4WDで駆動する意欲的なレイアウトを採用。ヘビーデューティな用途にも耐えるラダーフレームの前後に、ハイリフト化した3リンク・コイルリジッドサスと235/80R16の大径タイヤを装備することで、高い走破性も実現していた。

画像: 新ジャンルのクロスユーティリティビークルを目指した、スズキ X-HEAD。

新ジャンルのクロスユーティリティビークルを目指した、スズキ X-HEAD。

懐かしの東京モーターショーバックナンバー

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