滑りやすさにつながる水膜を寄せ付けない密着感
唐突だけれど、質問。カーリングという競技で、選手たちが一生懸命ブラシで氷の表面を履いている理由をご存知だろうか。
「投げられたストーンが滑りやすくなる」から? 間違いではない。それではなぜブラシで履くと滑りやすくなるのだろうか……。自称5歳の天才少女がMCを務めるNHKの人気情報番組風に答えれば「ブラシでこすって水を作り出しているから〜」が正解。
摩擦熱で氷の表面の温度が上昇し、わずかに溶けることで薄い水膜が張る。それに乗ると、ストーンは滑りやすくなる。ブラシでこするのをやめた瞬間に水膜は凍結するので、ストーンの滑り具合は鈍くなる。その加減をどれだけ巧みに調整できるかが、ストーンの行方を左右し、結果的に勝負の行方まで左右する。
つまりカーリングにとって水の膜は、不可欠なもの。だがそれとは対照的に、自動車を運転する側からすれば、水の膜は安全な走行の妨げになる厄介者でしかない。
主に高速走行時に起きるハイドロプレーニング現象は、まさにそんな「厄介」のさいたるもの。そして冬季、とくに積雪にともなって路面が凍結しやすい寒冷地域では、普通の道でも水膜のいたずらに悩まされることが多い。朝晩の温度差や走行する車両のタイヤが発する摩擦熱などで凍結した面が溶け、水膜が張ってしまうからだ。
ストーン同様、クルマのタイヤも水膜に乗ると滑りやすい。滑ったタイヤはハンドルを切っても曲がらないし、ブレーキを踏んでも止まらない。ごく薄い水の膜がドライバーの操作を路面に伝えるタイヤの動きを遮ってしまい、制御を失い事故につながる。そんな時に路面の水膜の張り具合を絶妙にコントロールしてくれるカーリング選手が……いるハズもない。
多くのタイヤメーカーは、そうした水膜をいかに取り除くか、という視点で冬季用のスタッドレスタイヤの性能を磨き抜いてきた。たとえばダンロップがリリースする「ウインターマックス02」は「超密着」というコンセプトで、ゴムやパターンを開発している。
とくにトレッドゴムの特性は、タイヤと路面の密着性を大きく左右する。寒さの中でもしなやかさを保つことができれば、路面表面の細かな凹凸を柔らかく包み込んで、優れた密着状態をキープしてくれる。密着しているということは、水膜が入り込む余地が少ない。つまり、滑りにくくなる。
ダンロップではそんな特性を生み出す素材として、低温時にも柔らかさを確保する新軟化剤「液状ファルネセンゴム」をトレッドゴムに配合。「超密着ナノフィットゴム」というわかりやすいネーミングで、氷上での優れたコントロール性やブレーキ性能を謳う。
ウインターマックス02の「氷上性能」については、元五輪選手で女子カーリングチーム「ロコ・ソラーレ」代表理事、本橋麻里さんの「実感インプレッション」が非常に端的でわかりやすい。「カーブの多い道をよく走りますが、膨らみが少ないですね。北見で気温がマイナス25度になった日もありましたが、そんな時も路面に密着している感じがしました」
氷の特性を見極め、その滑りを絶妙にコントロールする「プロフェッショナル」にとっても、ウインターマックス02の「密着感」は、そうとう新鮮な体験だった、ということだろうか。類い稀な「密着感」はきっと、かつてない安心感につながっている。
(文:神原 久/写真:南 孝幸、住友ゴム工業)
ダンロップ ウインターマックス 02 ラインアップ
■乗用車用
12インチ 135/80R12〜155/70R12
13インチ 135/80R13〜165/65R13
14インチ 175/80R14〜165/55R14
15インチ 195/70R15〜195/55R15
16インチ 215/70R16〜195/45R16
17インチ 225/65R17〜245/45R17
18インチ 225/65R18〜255/35R18
19インチ 225/55R19〜285/35R19
20インチ 235/55R20
■ランフラット
225/50RF18〜245/50RF20
■ウインターマックス 02 CUV
165/60R15〜235/55R20