アメリカンSUVの概念を覆す軽快さ、5.7HEMIはシュンシュン回る
アメリカ車はデカイというイメージがあるが、欧州各国メーカーが続々と北米のSUV市場に参入した結果、それは過去のものとなっているようだ。今回試乗したジープの新型グランドチェロキーは、全長4760mm×全幅1880mm×全高1750mm。これは昨今の欧州製プレミアムSUVと比べると、コンパクトな部類に入る。
そうした車体に5.7LのV8エンジンを搭載するのが5.7リミテッド。ちなみにこのエンジは半球形の燃焼室を持つクライスラー伝統の高性能ユニット「HEMI」である。
排気量を大きく取って低速トルクを稼ぎ、低い回転域でもドロドロと粘りの走りを見せるのがアメリカンV8というイメージがあるが、これもHEMIに関しては明確に違うと断言できる。OHVということもあり確かにレブリミットは5500rpmと低めだが、回転フィール/アクセルレスポンスとも非常にシャープでシュンシュン回る。これがこのエンジンの特徴なのだ。
しかも、比較的コンパクトな車体は車重2180kgと相応に軽い。したがって動力性能はかなり高い。怒濤のトルク感ではライバルのレンジローバーやトゥアレグに一歩譲るものの、回転の上昇とともに盛り上がって来る躍動感が強いのである。
フットワークもかなり軽快だ。欧州勢の締まった味わいとは異なり、乗り心地に揺れや余韻を残すものの、コーナリングでのロールは少なくフラットな姿勢のままあっさりとクリアする。その際もボディが軽いことが効いていて身のこなしが軽い。
大艦巨砲主義の欧州のプレミアムSUVよりも、北米生まれのグランドチェロキーの方が軽快というのは新鮮な発見だった。タイヤがオフ志向の強いものだったので限界性能は高くないものの、グランドチェロキーはワインディングが実に楽しいのだった。
しかも、リミテッドは電子制御LSDを3つも使った高度なクォドラドライブⅡという4WDシステムを備える上に、各障害角もジープの伝統に則り余裕を持たせた設定。オン/オフ性能の両立という実を取るならグランドチェロキーはかなり魅力的だ。(石川芳雄/Motor Magazine 2005年11月号より)
ジープ グランドチェロキー リミテッド5.7(2005年)主要諸元
●全長×全幅×全高:4760×1880×1750mm
●ホイールベース:2855mm
●車両重量:2780kg
●エンジン:V8OHV
●排気量:5654cc
●最高出力:326ps/5000rpm
●最大トルク:500Nm/4000rpm
●トランスミッション:5速AT
●駆動方式:4WD
●車両価格:588万円(2005年当時)