高級感漂う内外装デザイン
1996年に初めて登場したアウディ A3は、「プレミアムコンパクト」という当時としては時代を先取りしたセグメントに、ゴルフとは一線を画すモデルとして登場した。以来500万台が生産され、今回4代目としてフルモデルチェンジを果たした。
チーフデザイナーのマーク・リヒテ氏が率いるアウディのクリエイターたちが完成させたエクステリアは、デジタルデザインの精悍なヘッドライト、大型化されたシングルフレームグリルが一層の存在感を放ち、その左右下にクロームの開口部を持つエアインテークがスポーティなアクセントとなっている。さらにリアに回ると同じモチーフの鋭利な矢尻のようなコンビネーションライトが印象的だ。
一方、インテリアだが12.3インチのコクピットのデジタル表示とデザインは、ゴルフよりもモダンでスポーティな感じがする。またダッシュボードやコンソールまわりに使用されている材料も一層吟味されたもので、ゴルフ VIIIで見かけたハードプラスチックを探すのは難しい。ホールド性に優れたクロス張りシートの表皮は本のペットボトルをリサイクルしたものだが、見た目もそして触っても、安っぽさはまったく感じられない。
試乗したのはTFSIと呼ばれる1.5L 4気筒ガソリンモデルで、最高出力は150ps、最大トルクは250Nmを発生する。カタログ上の性能は0→100km/h加速が8.4秒、最高速度は224km/hに達する。シャシは旧モデルから踏襲しており、フロントはストラット、リアは4リンクが採用されている。
スポーティかつコンフォートな乗り味
まず感じるのはゴルフよりも明らかに応答性が高く、路面からのフィードバックが正確、さらに全域で操舵力の軽いステアフィールである。またエンジンのレスポンスも鋭く、アクセルペダルの動きに素早く呼応してパワーが盛り上がってくる。一方、シャシの印象はアウディらしいスポーティかつコンフォートなもので、パッセンジャーは常にコントローラブルで快適な移動空間を享受できる。
一方、オートルートでは最新のADAS、スタンダードではプリセンスフロントやレーンデパーチャーウォーニングなどを装備、さらにオプションではアダプティブクルーズコントロールやクロストラフィックアシストなど、ドライバーとパッセンジャーの安全はもちろん、周辺の交通までへの配慮を可能にしている。
新型A3スポーツバックはドイツをはじめ、ヨーロッパでは3月から受注しており、5月からデリバリーが始まる。価格はもっとも安価なエントリーモデルTFSI(1L、110ps)が2万6800ユーロ(約320万円)、TFSI(1.5LL、150ps)が2万8900ユーロ(約345万円)となる。
また日本への投入時期は2021年の初めからで、まずは110psの1L 3気筒ガソリンエンジンを搭載した30 TFSIと190psの2L 4気筒ガソリンエンジンを搭載した40 TFSI
クワトロ(ともに7速DCTトロニックマイルドハイブリッド搭載)が供給される予定である。価格は現時点では発表されていない。
ゴルフも確かに年々プレミアム化に走っており、私が先日試乗したゴルフ VIIIは、たとえばカローラやシビックなどと比べると、もはやコンパクトセグメントの域を超えたハイテクや高品質なデザインや素材を惜しげもなく投入してきている。こうした背景と比較して考えると新しいアウディ A3のポジションが見えてくる。さらなるエクスクルーシブなデザインと一層のスポーティパフォーマンスである。これが4代目のアウディ A3の魅力なのだ。(文:木村好宏)
■アウディ A3 スポーツバック 35 TFSI 主要諸元
●全長×全幅×全高=4343×1816×1449mm
●ホイールベース=2636mm
●車両重量=1280kg
●エンジン= 直4DOHCターボ
●総排気量=1498cc
●最高出力=150ps/5000rpm
●最大トルク=250Nm/1500-3500rpm
●駆動方式=FF
●トランスミッション=7速DCT