MINI モーク(1964-1993年)
MINI生みの親である、サー・アレック・イシゴニス自らがMINIをベースにイギリス軍用に開発したが採用されず、1964年に民間用として発売された「MINI モーク」。1968年でイギリスでの生産は中止されたが、その後オーストラリアやポルトガルで再生産され、今回紹介するのは2輪のドゥカッティでおなじみのイタリアのカジバ グループ(当時)で1990年から生産されたモデルだ。
何といっても特徴的なのは、着脱式のソフトトップとサイドウインドー。ドアの代わりにサイドウインドーを開け、ボックス状のサイドシルを跨いで乗りこむ。サイドウインドーはジッパー式なので、雨天時の走行でも水漏れはほとんどないという。サイドウインドーを外し、スナップとベルトを外せば、簡単にソフトトップも外せてフルオープンになる。大人ふたりでやれば、その作業に要する時間は5分とかからない。
ドライビングポジションは、MINIよりもトラック的だ。だがルーフが高く、室内空間はMINIより確実に広い。とくにリアシートは大人ふたりでも楽々で、しかも折りたためば大容量のラゲッジスペースとなる。ただし、フロントウインドーがかなり立っているので、トップを被せた状態では上方の視界がかなり遮られ、横断歩道などで止まると頭上の信号がほとんど見えない。その代わり、下はよく見えるしサイズが手頃だから、車庫入れや狭い路地などでは車両感覚がつかみやすいから運転しやすい。
エンジンは当時のMINIと同じ、最高出力42ps/最大トルク6.8kgmを発生する1Lの直4 OHVだが、車重はMINIより30kgほど軽い630kgしかないから、軽快感は増している。長いシフトレバーの操作感は今一歩だが、これを駆使して街中を走り回るとなかなか楽しい。MINI同様のセンターメーターの視認性や、その他のスイッチ類の操作性にも不満はない。サイドウインドーを巻き上げた状態でも、長時間でなければハイウエイ走行にも耐えられそうだ。
フルオープンでのドライビングは、普通のオープン2シーターの比ではない、爽快そのもの。ただし、街中をフルオープンで走ると周囲の注目度は高いし、パッセンジャーは足元まで見えるから、あまり変な格好で乗るわけにはいかないだろうけど。
エアコンやハードトップもオプション設定され、エンジン/足回り/排気系などはMINIのパーツを流用できるから、自分なりのドレスアップやカスタマイズも可能だ。遊びクルマを選ぶのだったら、これくらい思い切りを楽しめるものは他にはないかもしれない。
MINI モーク 主要諸元
●全長×全幅×全高:3232×1440×1460mm
●ホイールベース:2038mm
●重量:630kg
●エンジン種類:直4 OHV
●排気量:998cc
●最高出力:42ps/5250rpm
●最大トルク:6.8kgm/2500rpm
●燃料タンク容量:39L
●駆動方式:横置きFF
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:145SR12