2020年7月5日に行われたF1開幕戦オステルライヒGP(オーストリアGP1)はトラブルやアクシデントの多い難しいレースとなった。結果的にはメルセデスAMGの優勝となったが、少し後味の悪いグランプリでもあった。なぜレッドブル・ホンダは勝てなかったのか、メルセデスAMG優勝の裏には何があったのか。この後、連続して行われるグランプリはどうなっていくのか。F1開幕戦オステルライヒGPを振り返ってみよう。

優勝を確信したレッドブル・ホンダのアルボン

F1開幕戦オステルライヒGP(オーストリアGP1)はメルセデスAMGのバルテリ・ボッタス優勝で終わったが、あのアクシデントがなければどうなっていたかわからない。

あのアクシデントとは61周目に起きたレッドブル・ホンダのアレキサンダー・アルボンとメルセデスAMGのルイス・ハミルトンの接触だ。71周のレースの終盤、アルボンは自身初の表彰台に向けてメルセデスAMGの2台のうしろ3番手で走行していた。

50周目にセーフティカーが導入されると、チームは3番手を守るのではなく、タイヤを交換して追い上げる戦略を選択。アルボンはソフトタイヤに交換して4番手でコースへ復帰すると、すぐさまセルジオ・ペレス(レーシングポイント)をオーバーテイクし、3番手に上がる。ここで再びセーフティカーが出動、そのリスタートの後、2番手のハミルトンをオーバーテイクしようとして、その接触は起きた。(なお、ハミルトンにはこの際の接触により5秒のタイムペナルティが科された)

アルボンはスピンを喫して最後尾に後退。その後、電気系と思われるトラブルが発生し、リタイアしなければならなかった。しかし、あの時のアルボンはたしかに速く、あのまま走行していれば、トップのボッタスをパスすることも無理なことでなかったように見えた。

レース後、アレクサンダー・アルボンは「まだ時間が経っていないので、発言には気を付けなければと思いますが、とてもフラストレーションの溜まる出来事でした。僕らは勝利を手にすることができたと思います。戦略は最高で、ピットストップでもチームは素晴らしく、さらにセーフティカーのタイミングで運もありましたし、マシンの感触もよかったです。ハードタイヤではそれほどよくなかったのですが、メルセデスの2台はリスタート時にタイヤが冷え切っているのが分かっていましたし、セーフティカー終了後の数周でパスしようと考えていました。ルイス(ハミルトン)に対して完璧な動きで仕掛けられて、次の周でボッタスをどう攻略するかを考えようとしていたときでした。コーナーを抜けようかという遅いタイミングでルイスが接触してきたことに驚きました。僕は外側ギリギリに位置取っていましたが、それだけスペースを与えても、彼がクラッシュしたがらない限りは前に出られると思っていました。今回は僕が仕掛けて、彼がディフェンスの立場でした。ブラジルのときよりも傷が深いとは言いませんが、あのときはフィフティ・フィフティかもしれないと言える一方で、今回はそうではありません。次のレースに向けてもう切り替えているところですが、今日のようなチャンスを得るためには運も必要になってきます。どうなるか見ていきましょう」と語っている。あの時、アルボンは勝利を確信していたようだ。

画像: アレクサンダー・アルボン 予選5番手(4番グリッド)、決勝リタイア

アレクサンダー・アルボン 予選5番手(4番グリッド)、決勝リタイア

マックス・フェルスタッペンにも勝利のチャンスは十分にあった。予選Q2をミディアムタイヤで通過したフェルスタッペンは、2番グリッドからスタートすると、上位10台の中で唯一ミディアムタイヤというアドバンテージを活かすべく、2番手をキープしながら勝負所となる後半に向けて、順調に周回を重ねていった。ここまでは予定どおりであり、フェルスタッペン有利とも言えた。しかし、11周目に電気系のトラブルが発生して、スローダウン。ピットへマシンを戻したものの、ここでリタイアとなった。

フェルスタッペンは「まだ何が起こったのかよく分かっていないので、分析が必要ですが、望んだ形でのシーズン開幕にはなりませんでした。昨年とは違ってスタートがうまくいきましたし、序盤でバルテリ(ボッタス)の速さを目にして、優勝争いは大きなチャレンジだと思っていましたが、表彰台は手堅いと感じていましたし、3位でも開幕の結果としては悪くなかったと思います。ただ、こうしたことが起こるのもレースですし、結果は変えられません。みんな懸命に取り組んでくれただけに残念ですが、今週のレースに向けて切り替えていきます。次はいい結果にしたいです」と語っている。

画像: マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) 予選3番手(2番グリッド)、決勝リタイア

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) 予選3番手(2番グリッド)、決勝リタイア

一方の、アルファタウリの2台はマクラーレン、レーシングポイントとバトルを繰り広げながらポイント圏内を順調に走行、ガスリーは7位でフィニッシュして6ポイントを獲得したが、クビアトは他車との接触でダメージを負い、レース終盤にタイヤがパンク、71周のレースの67周目にリタイアを喫した。

レース後、ピエール・ガスリーは「長い休みを終えてレースに戻ってきたことは喜ばしいですし、とてもエキサイティングな展開でシーズンの幕が開きました。レースウイークは厳しいスタートだったことを考えると、今日の結果はとてもうれしいです。ルノー、マクラーレン、レーシングポイントがとても強かったので、今日のレースは大変だと思っていましたが、いい戦いができて、トラブルなしで終えることができました。僕らにとって、非常にいい結果だったと思います!」、ダニール・クビアトは「今日のレースはオコン選手と接触するまではペースもタイヤマネジメントも悪くなく、非常にうまく進んでいました。接触の後、フロントウイングとサスペンションを破損し、タイヤもパンクしてしまったので、そこでレースが終わってしまいました。これがなければ1ポイントを獲得し、すごくいいレースにできただろうと思っているので、非常に残念です」と語っている。

画像: ピエール・ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 予選12番手、決勝7位

ピエール・ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 予選12番手、決勝7位

画像: ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ) 予選13番手、決勝リタイア

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ) 予選13番手、決勝リタイア

田辺豊治ホンダF1テクニカルディレクターは第1戦を振り返って「ホンダ勢は3台リタイアということで非常に残念なレースとなり、レースを走り切ったスクーデリア・アルファタウリのガスリー選手が7位入賞できたことのみが、唯一ポジティブな結果になりました。レッドブルのフェルスタッペン選手は2番グリッドからいいスタートを見せましたが、レース早々に電気系のトラブルにより残念ながらリタイアとなりました。アルボン選手も終盤に2番手にポジションを上げたところで接触しコースアウト、幸いにもコースに復帰しポイント圏内を目指して戦っていましたが、残り4周でパワーユニットの電気系と思われる問題によりマシンを止めました。2台ともに、詳細な原因をチームとともに確認しています。アルファタウリのクビアト選手も、残念ながらマシントラブルによりリタイアに終わってしまいました。発生したトラブルをすべて解析し、対策を打った上で、今週末に行われるレースに臨みます」とコメント。ホンダにとって開幕戦は手応えと課題が入り混じる結果となった。

F1にタイヤを供給するピレリは、開幕戦について「レース戦略はセーフティカーによって決定され、すべてのチームが変化する状況に対応しました。 これによりワンストップレースであることが予想されていたものが一部のドライバーは2ストッパーになりました」とコメント。ワンストップが勝利をあげたが、どれが正解だったかについては触れていない。ちなみに、 2ストッパーのマクラーレンのランド・ノリスがミディアムタイヤを使用して、レースの終わり近くに最速ラップを記録、自身初の表彰台を獲得している。この結果が第2戦にどう影響するか、興味深い。

画像: 第1戦オステルライヒGP(オーストリアGP1)のタイヤ選択。ワンストップが予想されていたが、セーフティカーの導入もあり今回は2ストップが速さを見せた。

第1戦オステルライヒGP(オーストリアGP1)のタイヤ選択。ワンストップが予想されていたが、セーフティカーの導入もあり今回は2ストップが速さを見せた。

第2戦は7月12日、同じレッドブルリンクで、シュタイアマルクGP(オーストリアGP2)として連続開催される。

2020年F1第1戦オステルライヒGP(オーストリアGP1)結果

優勝77 V.ボッタス(メルセデスAMG)71周
2位16 C.ルクレール(フェラーリ)+2.700s
3位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+5.491s
4位44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+5.689s
5位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー)+8.903s
6位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+15.092s
7位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+16.682s
8位31 E.オコン(ルノー)+17.456s
9位99 A.ジョビナッツィ(アルファロメオ・フェラーリ)+21.146s
10位5 S.ヴェッテル(フェラーリ)+24.545s

26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)リタイア
23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)リタイア
33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)リタイア

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