連続表彰台は今後への弾みになる
レッドブル・ホンダにとって相性のいいハンガロリンクの一戦には大きな期待がかけられたが、マシンバランスに苦しみ、グリッド位置が重要と言われるサーキットで、フェルスタッペンが予選7位、アルボンは13位という信じられない結果になってしまった。
さらにあろうことかフェルスタッペンは、スターティンググリッドに向かうレコノサンスラップのターン12でクラッシュを喫し、左フロントのサスペンションとフロントウイングを破損。メカニックがグリッド上で修復し、奇跡的にレースをスタートすることができた。
フェルスタッペンは、メカニックの働きに応えて見事なスタートを決め、2台のフェラーリ、そしてレーシングポイントのランス・ストロールをかわし、7番手から3番手へポジションアップ。路面コンディションが急速に回復する中、各車ウエットタイヤからドライタイヤへ交換、フェルスタッペンは4周目にミディアムタイヤに換えると2番手でコースに復帰し、トップのハミルトンを追う展開に。
その後、36周目にハードタイヤにスイッチしてさらにハミルトンを追うがその差はなかなか縮まらず、逆にバルテリ・ボッタス(メルセデス)に追われる立場になるものの、フェルスタッペンは自分のペースを守って2戦連続の表彰台となる2位でチェッカーフラッグを受けた。
アルボンも予選13番グリッドから健闘。3周目にインターミディエイトからミディアムタイヤへ交換すると、フェラーリの2台もをオーバーテイクして7番手まで浮上。34周目に再びピットインしてハードタイヤに交換して再度の追い上げを開始し、5位でフィニッシュした。
一方、17番グリッドからスタートしたアルファタウリ・ホンダのダニール・クビアトは1周を終えるとすぐにソフトタイヤに交換、降雨が心配されるため各車がステイアウトする中、18周目に早めにハードタイヤに交換してその後52周を走り切ったものの、12位とポイント獲得はならなかった。
アルファタウリ・ホンダのピエール・ガスリーはギアボックスにトラブルを抱えて15周目にピットに戻ると、そのままリタイアとなった。
レースはウエットタイヤでのスタートとなったため、異なる2種類のドライタイヤ装着義務はなくなり、さまざまなタイヤ戦略が見られたが、優勝したルイス・ハミルトン(メルセデスAMG)はウエットタイヤから、ミディアム-ミディアムと繋ぎ、残り4周でソフトタイヤに履き替えてファステストラップも記録した。
タイヤを供給するピレリは、ハンガリーGPについて「日曜日の夜半から午前中にかけて降った雨のため、冷涼なコンディションの下、インターディエイトタイヤでスタートを迎えることになりました。その後、急速に乾いていく路面が戦略にとって重要な鍵になりました。不安定な天候が続いてたため、再度ウエットタイヤへの交換が必要になるリスクに備え、スティントを伸ばすドライバーも見られましたが、結局最後までドライコンディションとなりました。多くのドライバーが2ストップ戦略をとる中、オーバーテイクやファステストラップ獲得のための3ストップ戦略も見られました」と分析している。
一方、ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは「厳しい状況だった予選を考慮すれば、このレース結果は喜ぶべきものだと思っています。レース前に降り続いた雨のためにウェットコンディションで行われたレコノサンスラップでは、フェルスタッペン選手がクラッシュするという予想外の事態が起こりましたが、メカニックがグリッド上で素晴らしい修復作業を行い、レーススタートに間に合わせることができました。その後、素晴らしいスタートを見せたフェルスタッペン選手とチームの見事なレース戦略も奏功し、最後まで2位のポジションを守りきることができました。今季最高となるこの結果は、チーム全体を勇気づけるものになりました。パワーユニットとしても最大限のパワーを出しきってサポートできたと考えています。アルボン選手も13番手のスタートから徐々に順位を上げて、いい走りを見せてくれました。アルファタウリは、トラブルがありながらもガスリー選手が週末を通していいペースを見せていただけに、ギアボックスのトラブルによりリタイアという結果に終わったことは残念に思っています。クビアト選手もピットインのタイミングで順位を落として入賞は叶いませんでしたが、レースを完走して得られた今日のデータを今後の改善につなげます。今週末は久しぶりにレースが開催されない週末です。次戦のイギリスGPまでの時間を使って、さらなるパフォーマンスアップを図っていきます」とコメント。決勝レースを終えて、ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「表彰台という結果をメカニックたちに捧げます。スタートできずにレースが終わったかと思いました。レコノサンスラップでブレーキをかけたところ、タイヤがロックしたので、ブレーキを緩めて再度かけ直そうとしましたが、そのままウォールへ突っ込んでしまいました。信じられない事態でしたが、なんとか動き出してグリッドへ向かいました。チームは決してあきらめず、メカニックのみんなが驚異的な速さでマシンを直してくれました。路面はまだ滑りやすかったのですが、好スタートを決めることができました。ターン1での動きはなかなか事前に想定することは難しいですが、イン側で渋滞が起きているのが見えたのと、アウト側はウエットでもグリップが高いことが分かっていたので、トライしてみたらうまくいきました。もし7番手のままでとどまっていたら、かなり厳しいレースになったと思います。さらに、戦略も奏功したので、タイヤを持たせながら、できる限り安定したペースを刻み、周回遅れの処理に気を配りました。メルセデス勢に割って入る2位表彰台という結果は、厳しい状況が続いていた週末の時点では予想もしていませんでした。メルセデスとの差を詰めていきたいと思います、決して挑戦を止めずに進んでいきます」
アレクサンダー・アルボン
「いいレースでしたし、バトルを大いに楽しみました。13番手スタートという状況は楽ではありませんでしたが、スタートがよく、いいペースで進んでいけました。このサーキットでのオーバーテイクは簡単ではなく、思いきって仕掛けていかなければなりませんでした。そのためには限界まで攻めざるを得ないのですが、うまくいってバトルを楽しめましたし、面白いショーが見せられたと思います。僕らはトップを目指して戦っていますし、こうしたオーバーテイクを決められてよかったです。マシンは本当によくて、前が空いているときの僕らは速くて、かなりの競争力があったと思います。昨日まで苦戦しただけに、結果には満足していますし、チームにとっても貴重なポイントを獲得できたことに感謝しなければなりません。予選よりもレースペースのほうがよかったことはちょっとしたサプライズですが、それがなぜかをきちんと理解する必要があります。ただ、マシンがうまく機能したということは、ポジティブです」
ダニール・クビアト
「レースペースには満足していました。1周目ですでに何台かオーバーテイクできましたし、ピットインもいいタイミングで呼んでくれました。ただ、2回目のピットアウト後には一度抜いたはずのマシンの後ろに入ってしまいました。入賞が可能だと思っていたので、12位フィニッシュという結果には満足していません。もう一度、レースで何が起こったのかを振り返る必要があります。まだエンジニアと一緒にマシンの理解を進めているところですが、この3レースで多くのことを学んできました。今日も一周一周がシルバーストーンに向けたマシンの最適化のためにに重要だと考えながら走行していました」
ピエール・ガスリー
「今回は難しいレース週末になりました。いろいろなところに問題が発生して、苦しい状況が続いていました。予選10位でしたが、レースでは最初からギアボックスの問題に悩まされていました。レース中に修正を試みたものの、最終的にはリタイアとなりました。非常に残念ですが、不運な週末になってしまいました。シルバーストーンの準備のためにまだ数日ありますし、次はもっといいレースをできればと考えています」
次戦第4戦イギリスGPは、8月2日、シルバーストン・サーキットで開催される。
2020年F1 第3戦ハンガリーGP 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)70周
2位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ) +8.702s
3位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +9.452s
4位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス) +57.579s
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) +78.316s
6位 5 S.ヴェッテル(フェラーリ) +1L
7位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス) +1L
8位 3 D.リカルド(ルノー) +1L
9位 55 C.サインツ(マクラーレン・ルノー) +1L
10位 20 K.マグヌッセン(ハース・フェラーリ) +1L
12位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +1L
リタイア10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)
F1ドライバーズランキング(第3戦終了時)
1位 L.ハミルトン(メルセデスAMG)63
2位 V.ボッタス(メルセデスAMG)58
3位 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)33
4位 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)26
5位 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)22
6位 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)22
12位 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 6
16位 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)1
F1コンストラクターズランキング(第3戦終了時)
1位 メルセデスAMG 121
2位 レッドブル・ホンダ 55
3位 マクラーレン・ルノー 41
4位 レーシングポイント・メルセデス 40
5位 フェラーリ 27
6位 ルノー 12
7位 アルファタウリ・ホンダ 7