ホンダ モビリオ(2002年)
モビリオは、フィットをベースにしたコンパクト ミニバンだ。とはいえ、そのスタイリングはフィットとはまったく異なる。ドイツの路面電車「ユーロトラム」をモチーフにしたというエクステリア デザインは、とにかくガラス面積が大きいのが印象的。電車好きのお子さんがいる家族には、これがクルマ選びの大きなポイントとなるかも。
フロントドアはヒンジを前傾させているので、上方ほど大きな角度で開くから、狭い場所で傘を差したままでも乗り降りしやすい。しかも低床フロアを採用して、さらにフロントドアは3段階で開くから、場所に応じてドアの開きを加減して乗り降りできるのも便利だ。
運転席に座ると、フロントウインドーの端や三角窓を大きくしたことで、前方の視界を可能な限り確保したというのがよく分かる。後方視界もいい。バックするときにいちばん気になるクルマのすぐ後ろが、ルームミラー越しでもよく見える。これはバックや車庫入れが苦手な人には、すごくありがたい。ゆとりを持って操作できるぶん、車庫入れがうまくなった気分になる。
2列目シートでも視界は良い。サイドウインドーはポップアップ式だが、外がよく見えるからクルマに弱い人でも酔いにくいだろう。地上から405mmの低床フロアと570mmも開く両側スライドドアのおかげで、子どもでもお年寄りでも乗り降りはしやすそうだ。
3列目シートは少し狭いが、おとなでもヒザを抱え込む「体育座り」にはならないから、意外と座れる。ステップワゴンより10mm高い室内高のおかげで、押し込められる感じはしない。しかも3列目シートは折りたたんで2列目の下に収納でき、2列目もたためば最大で957Lものラゲッジスペースが生まれる。このアレンジは、フィット譲りのセンタータンク レイアウトならではといえるだろう。
搭載エンジンは、フィットよりも大きな1.5Lの直4 SOHCのi-DSIで、90psと13.4kgmを発生。これにトランスミッションはCVTを組み合わせる、駆動方式はFFと4WDを設定している。そんなモビリオの走りは、期待どおりといってもいいだろう。フィットが持っていたホンダらしいキビキビ感を、ミニバンのスタイルに合わせて少しマイルドにした感じだ。
このエンジンは低中速のトルクを重視しており、モビリオが活躍するであろう市街地中心の日常ユースで、きわめて扱いやすい特性を示してくれる。スタート時の飛び出し感はないし、ブレーキの効き方もリニアで、しかもコントロールしやすい。
都市高速も少し走ってみたけれど、背の高さを感じさせない安定感のあるハンドリングで、レーンチェンジでも不安を感じることはない。ただ逆に、街中でのハンドリングでは、切り始めが少し重いかなとも感じられることもある。
適度なキビキビ感のあるモビリオは、ミニバンとコンパクトカーのイイトコ取りといった感じのクルマだ。最大のライバルは、トヨタのスパシオか。走りっぷりはほぼ互角だから、3列目を使う機会が多いならモビリオをオススメしたい。
■ホンダ モリリオ W 主要諸元
●全長×全幅×全高:4055×1685×1740mm
●ホイールベース:2740mm
●車重:1270kg
●エンジン形式:直4・SOHC・横置きFF
●排気量:1496cc
●最高出力:66kw(90ps)/5500rpm
●最大トルク:131Nm(13.4kgm)/2700rpm
●ミッション:CVT
●タイヤ:185/65R14
●当時の価格:159万9000円