2020年8月29日、F1第7戦ベルギーGPの予選がスパ・フランコルシャンサーキットで行われ、メルセデスAMGのルイス・ハミルトンが圧巻のレコードタイムでポールポジションを獲得した。レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンは2番手バルテリ・ボッタス(メルセデスAMG)とわずか0.015秒差の3番手スタート。アレクサンダー・アルボンも5番手スタートと決勝レースに期待が持てる位置につけた。なお、上位3台、ハミルトン、ボッタス、フェルスタッペンはQ2をミディアムタイヤでクリアしており、決勝はやはりこの3台を中心とした戦いになりそうだ。
ハミルトン圧巻のポール獲得も、フェルスタッペンがメルセデス勢に接近
ハミルトンの予選Q3の走りは圧巻だった。いきなり1分41秒451という驚異的なタイムをマークすると、最後のアタックではさらに1分41秒252までタイムを縮め、チームメイトのボッタスに0.511秒の大差をつけてポールポジションを獲得。まさに異次元の走りだった。
フェルスタッペンは最後のアタックでボッタス逆転を狙ったが、わずかに0.015秒届かず3番手となった。ハミルトンのタイムは驚異的だったが、フェルスタッペンも速く、ハミルトンとの差0.526秒は今季もっとも小さいものだった。
チームメイトのアルボンも好調で危なげなくQ3に進出。Q3ではフェルスタッペンとスリップを使い合いながら5番手に入っている。惜しくも2列目グリッド獲得はならなかったが、奇数グリッドからのスタートは悪くない。フェルスタッペンにとっても、チームにとっても、戦略の幅ができたと言えるだろう。
なお、メルセデスAMG勢、フェルスタッペンの3台はQ2をミディアムタイヤでクリアしており、この3台はミディアム、トップ10の他の7台はソフトで決勝スタートする。これがレース展開にどんな影響を及ぼすかも楽しみだ。
一方、アルファタウリ・ホンダは順当に予選Q2に進出したものの、ダニール・クビアトは10番手から0.008秒差の11番手、ピエール・ガスリーは0.023秒差の12番手と、わずかな差でQ3進出を逃した。ただ、タイヤを選択できる中で最もいいポジションからの決勝スタートとなり、戦略的にアドバンテージを持った形で決勝にのぞめることになる。
ちなみに、土曜日も小雨が時折降る不安定な天候が続き、予選は気温16度、路面温度24度というコンディション。決勝が行われる日曜日もこのような天候が続くと予想される。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、決勝レースに向けて「予選は、フェルスタッペン選手が2位に0.015秒という僅差で3番手、アルボン選手が5番手と、レッドブルの2台は揃って悪くない結果になりました。アルファタウリの2台もプラクティスからいい走りをみせ、Q1を非常によいポジションで通過しました。Q3進出を期待していましたが、結果としてはクビアト選手が11番手、ガスリー選手が12番手と、Q2通過に0.02秒弱届かず惜しくもQ3進出を逃しました。しかしながら、2台ともに自由にタイヤを選択してレースをスタートできることはアドバンテージになりますので、この結果をポジティブに捕らえています。パワーユニットとしては、次戦のモンツァからは予選モードが使えなくなりますので、予選用のスペシャルモードを使った最後の予選になりました。そのなかでも、金曜日に続き問題のない一日になりました。決勝は4台が入賞を狙える位置からのレースになります。スパウェザーと呼ばれるレース中の雨など、状況変化に確実に対応してチャンスをものにできるよう、万全の準備で臨みます」とコメント。ドライバーは次のように語っている。
マックス・フェルスタッペン
「僕たちにとって難しいレースウイークになると思ってましたが、バルテリ(メルセデス)とは非常に僅差ですし、3番手はポジティブな予選結果だと思っています。うまくラップをまとめましたが、トップとはまだ0.5秒差あります。しかし、メルセデスに対しては今季で一番差を縮められていると思います。予選では僕たちのマシンと相性がいいサーキットではないですが、この予選結果で決勝に臨めるのはとてもよかったですし決勝レースを楽しみにしています。晴れと雨どちらがいいということはないですが、レース中に天気が変われば戦況に変化が出ると思います。ここは予選で走ると素晴らしいトラックですし、例年決勝もエキサイティングなものになります。天気によっては去年のホッケンハイムのような特別なレースになるかもしれません。マシンバランスの向上には満足しています。いいスタートを切り、メルセデスといい勝負をし、最大限の結果を出したいと思います」
アレクサンダー・アルボン
「5番手という結果には満足しています。4番手も可能だったと思いますが、最後のスティントのターン1で小さなミスをしてしまい、タイムをロスしてしまいました。あれがなければ4番手につけることも可能だったと思います。ベストラップはQ2でまだ改善すべき点はありますが、ひとまず満足しています。この週末はフリー走行のスタートからマシンの調子がよく、その状態が持続しています。マシンに微調整をほどこし、それがいい結果につながっています。一歩前進できましたし、さらに前進させることができればいいと思います。決勝はマックス(フェルスタッペン)とは異なる戦略で、ソフトタイヤでのスタートとなります。このサーキットはターン1までの距離が短いので、スタートが重要になります。どんな展開になるか分かりませんが、雨が降る可能性もあり、エキサイティングなレースになるでしょう」
ピエール・ガスリー
「Q2では10番手のノリス(メルセデス)とわずか0.04秒差だったので、Q3進出を果たしたかったです。最後のシケインをうまく攻略できずに、出口で失敗しました。トラクションを失い0.1秒はロスしました。しかし、決勝ではタイヤを選択できる位置からスタートします。雨が多いノルマンディ出身の僕にとっては、雨になるとうれしいです(笑)。12番手からは上位も狙えると思っています。中団は接戦になると思いますが、最大限プッシュして入賞を狙います。できればタイヤ選択ができる中で最も前の11番手がよかったのですが、ダニール(クビアト)は速かったので、僕の努力が少し足りなかったと思っています」
ダニール・クビアト
「予選では終始力強い走りができました。マシンの状態も金曜日から徐々によくなってきており、エンジニアたちとともにいい方向に調整ができているので、金曜日から土曜日にかけての進歩に満足しています。日曜日はいいレースができると思うので、そのためにベストを尽くします。決勝は長いレースになりますし、スパなので、天気に左右される可能性もあります。雨になり、どんなことが起きてもライバルに負けないように、いい状態で走れるように最善を尽くします」
タイヤを供給するピレリは「ハミルトンのポールタイムは昨年より1.3秒も速いものでした。またトップ7がすべて昨年のポールタイムを上回りました。ベルギーGPの理論上の最適な戦略は1ストッパーですが、ここでは天候の影響を大きく受けます。 雨の可能性とは別に、気温と路面温度も影響します。最速の戦略は、ソフトタイヤで18ラップ走行した後、ミディアムでレースを走り切ることです。 この反対も機能するでしょう。2番目に速いのは、ソフトで16ラップ、ハードで28ラップですが、2ストッパーも実現可能です。その場合、ソフトで14ラップ、ミディアムを16ラップ、ソフトを14ラップがお勧めです。 ミディアムで20ラップしてハードを24ラップするワンストッパーも考えられますが、やや遅くなります。ただし、これらの戦略は実際には非常にタイム差が接近しているため、状況によってどれがベストかは大きくかわってくるでしょう」と分析している。予想の難しい決勝となりそうだ。
第7戦べルギーGP決勝は8月30日 日本時間22時10分(現地15時10分)から始まる。
2020年F1第7戦べルギーGP 予選結果
PP 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG) 1:41.252
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) 1:41.763
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)1:41.778
4位 3 D.リカルド(ルノー) 1:42.061
5位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ) 1:42.264
6位 33 E.オコン(ルノー) 1:42.396
7位 55 C.サインツ (マクラーレン・ルノー) 1:42.438
8位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)1:42.532
9位 18 L.ストロール(レーシングポイント・メルセデス)1:42.603
10位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー) 1:42.657
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
12位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ) 1:17.136