昨年のハミルトンはツーストップを選択
スパ・フランコルシャン(ベルギー)、モンツァ(イタリア)、ムジェロ(イタリア)と高速サーキットでのグランプリが続く3連戦。その緒戦ベルギーGPで優勝を狙ったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)は決勝レースを硬めのミディアムタイヤでスタートする作戦をとった。これにはタイヤ交換のタイミングに幅を持たせることによって、メルセデスAMG勢に揺さぶりをかけるとともに、アクシデントや天候の変化に対応するという狙いがあった。
ソフトタイヤとミディアムではラップタイムに差があるためQ2をミディアムでクリアするのは難しいのではと言われた中、メルセデスAMG勢もフェルスタッペンの戦略に反応、結局、この3台ともに決勝レースをミディアムタイヤでスタートすることになってしまった。
それでもフェルスタッペンはメルセデスAMG勢のすぐ後ろ、予選3番グリッドを獲得し、タイヤ交換のタイミングをずらすことによって逆転を狙っていた。しかしその期待も、11周目という早い周回でのセーフティカー導入でメルセデスAMG勢と同時にハードタイヤに交換することになり消滅。終盤もう一度タイヤを交換する戦略も考えられたが、4番手のリカルドとのギャップは小さく、3番手のポジションを守るしかなく、どうすることもできなかった。
【参考】前戦 2020年第7戦ベルギーGP 決勝 結果
優勝 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)44周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG) +8.448s
3位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+15.455s
4位 3 D.リカルド(ルノー)+18.877s
5位 31 E.オコン(ルノー)+40.650s
6位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+42.712s
7位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+43.774s
8位 10 P.ガスリー (アルファタウリ・ホンダ)+47.371s
9位 18 L.ストロール (レーシングポイント・メルセデス)+52.603s
10位 11 S.ペレス (レーシングポイント・メルセデス)+53.179s
11位 26 D.クビアト(アルファタウリ・ホンダ) +70.200s
では、レッドブル・ホンダはイタリアGPをどう戦うのか。モンツァは超高速コースでオーバーテイクが難しいと言われる一方で、タイヤに大きな負担がかかることでも知られる。昨年のイタリアGPは、フェラーリのシャルル・ルクレールがワンストップ戦略で勝利しているが、展開によっては2ストップのほうが速いケースが出てくる。メルセデスAMGを破るためには、タイミングよく大胆な戦略をとる必要があるだろう。
そうした中、まず予選Q2をどのタイヤでクリアするかが注目だ。レッドブル・ホンダはやはり硬めのタイヤを選択するのか、メルセデスAMGはそれに合わせてくるのか。これによってレースは変わる。ベルギーGPで予選5番手につけたチームメイトのアレクサンダー・アルボンの予選位置も重要となる。
そしてもうひとつ、イタリアGPから予選と決勝レースを同じパワーモードで走らなければならなくなったことにも注目したい。これまでメルセデスAMGは強力なアタックモードで予選を圧倒してきたが、このレギュレーションの変更で予選はどうなるのか。レッドブル・ホンダがポールを獲得できれば、レース展開は大きく変わることになる。
アルファタウリでは、ピエール・ガスリーが想定外のレース展開になりながら、猛然と追い上げて8位に入賞しており、イタリアでも期待がかかる。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、イタリアGP開幕に向けて「このサーキットの特徴は何と言ってもストレート主体の超高速レイアウトにあります。その特性に合わせてマシンは低ダウンフォース仕様となり、パワーも重要になります。また、このレースから、パワーユニットの使用方法に新たな制約が加わります。予選とレースで同一のモードを使わなければならないこととなり、これまでのようにモードの変更による出力の変更は許されなくなります。今回の規制内容が公表されて以降、この2週間ほどは、実際のパワーユニットの制御方法、使い方に関して検討を進め、FIAに対しても色々と細かい部分について制約内容の確認を行ってきました。また、今回の変更に伴い、この先のレースに対してパワーユニットをどのように使っていくか、またアロケーション(配分)をどのようにするかなど、先々の検討も行いパワーユニットの使用計画の見通しを立てることなども進めました。今回の制約導入が各PUマニュファクチャラーの競争力へどのような影響を与えるかは実際に走ってみるまで分かりませんが、我々としてはパワーユニットの最適化を進めるという部分ではこれまでと変わりません。フリープラクティスを通して予選・レースに向けて調整を続けていきます」とコメント。
また、イタリアでの2連戦について「我々のパートナーチームであるアルファタウリのホーム、イタリアで2週連続でグランプリが開催されます。特に今週末のイタリアGPはトロロッソ時代も含め彼らと一緒に戦う50戦目の節目のレースになります。アルファタウリとは、2018年のパートナーシップ締結以降、ゼロからプロジェクトを開始し、ここまで2度表彰台を獲得するなど、着実な前進を見せてきました。今のホンダがあるのは彼らのおかげと言っても過言ではありません。イタリアらしい熱い情熱と温かさで我々を迎え入れ、ここまでともに歩んできてくれたアルファタウリに対し、ここで改めて感謝の意を伝えたいと思います。今回はさまざまな意味で我々にとって大切なレースになります。2つのチームとともにいい結果を残せるよう、全力で週末に臨みます」と特別なグランプリであることを強調した。
一方、タイヤを供給するピレリは「モンツァはフラットアウトのストレートが有名で、ダウンフォースが削られ360km/h近い最高速が見られる一方、そのトレードオフとして空力グリップが少なく、コーナーではタイヤからのメカニカルグリップに頼ることになります。ダウンフォースが少ないため、タイヤは滑りやすくなり、摩耗が増加します。また、気温が上がらない場合、長くて速いストレートでタイヤが冷えすぎてしまう可能性があります。ただ開催日程は例年どおりで、過去の経験から、各チームは夏の終わりに向けて非常に暑くなること、暖かくて乾燥していること、雨の可能性があることもわかっています。昨年のイタリアGPは、ポールポジションからスタートしたフェラーリのシャルル・ルクレールがワンストップ戦略で勝利しましたが、ソフト→ハード戦略を選択したのは彼だけで、さまざまな戦略がとられ、大きな差はありませんでした」とまだ具体的な推奨戦略をあげていない。
【参考】2019年F1第14戦イタリアGP決勝 結果
優勝 16 C.ルクレール(フェラーリ)53周
2位 77 V.ボッタス(メルセデスAMG)+0.835s
3位 44 L.ハミルトン(メルセデスAMG)+35.199s
4位 3 D.リカルド(ルノー)+45.515s
5位 27 N.ヒュルケンベルグ(ルノー)+58.165s
6位 23 A.アルボン (レッドブル・ホンダ)+59.315s
7位 11 S.ペレス(レーシングポイント)+73.802s
8位 33 M.フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)+74.492s
9位 99 A.ジョビナッツィ(アルファロメオ・フェラーリ)+1周
10位 4 L.ノリス(マクラーレン・ルノー)+1周
11位 10 P.ガスリー (トロロッソ・ホンダ)+1周
リタイア 26 D.クビアト(トロロッソ・ホンダ)
第8戦イタリアGPは9月4日11時(日本時間18時)から始まるフリー走行で開幕、予選は9月5日15時(日本時間22時)、決勝は9月6日15時10分(日本時間22時10分)に開始される。