2015年にデビューし、グローバルでの販売も好調なベンテイガ。ベントレー初のSUVでありながら、見事にその世界観を表現し、ベントレーの主力モデルとなっている。そんなベンテイガが第2世代となった。2020年7月1日に日本市場へ導入されたベンテイガ V8(Bentley Bentayga V8)に試乗するとともに、その進化ぶりをじっくり見てみよう。

V8エンジン搭載モデルに続いて、W12やPHEVも上陸し世界が広がる

寸分の破綻もなく、ベンテイガのフォルムにしっくりと馴染んでいる。フェイスリフトを受けた新しいベンテイガの姿を見て、私はそう感じた。

ただし、「しっくり馴染んでいる」からといってフェイスリフトの規模が小さかったとは限らない。むしろ、実際はその逆で、今回のマイナーチェンジでボディパネルは全面的に刷新されたといっていいくらい、ベンテイガのスタイリングは大胆に生まれ変わっている。

画像: ベントレーらしい楕円形テールライトを採用し、ナンバープレートはバンパーに配置された。リアトレッドが左右10mm拡大。テールパイプは楕円形を左右で2分割したデザインとなる。

ベントレーらしい楕円形テールライトを採用し、ナンバープレートはバンパーに配置された。リアトレッドが左右10mm拡大。テールパイプは楕円形を左右で2分割したデザインとなる。

ひと目見て感じるのは、これまではフォーマルで落ち着いた印象だったフロントマスクが、スポーティで精悍な顔つきに生まれ変わったことだろう。

いうまでもなく、これはベントレーの最新デザイン言語に従って行われたアップデートで、その表情は現行型のコンチネンタルGTやフライングスパーと極めて近いものになった。結果として新型の方がずっとスタイリッシュに見えるが、それ以上に重要なのは、コンチネンタルGTで登場したデザイン言語が、これより2年早くデビューしたベンテイガのデザインにすんなりと収まっている点にある。

この難しい作業を成功させるため、ベントレーはボンネットやフロントフェンダーを一新。チンスポイラーの形状まで大きく見直すことで、全体として統一された造形を生み出したのだ。

画像: ボディ左右まで広がったテールゲートを採用するベンテイガ。従来からセールスは好調で、デビュー後の5年間で約2万台を販売している。またオーナーの平均年齢は45歳(日本は46歳)で女性比率も高い。

ボディ左右まで広がったテールゲートを採用するベンテイガ。従来からセールスは好調で、デビュー後の5年間で約2万台を販売している。またオーナーの平均年齢は45歳(日本は46歳)で女性比率も高い。

全体のバランスをとる微調整はボディサイドでも実施された。ボンネットがより長く、そして先端の位置がより高くなったことを受けて、ルーフから連なるリアスポイラーを大型化して前後の視覚的バランスを整えたのである。

リアまわりのアップデートはさらに大規模で、テールゲートはリアフェンダーに回り込む「クラムシェル」形状に改められ、クリーンでワイドな印象を生み出した。また、アーモンド型のテールライトを左右のできるだけ遠く離れた位置に配置。これにより生まれた中央のスペースにフライングBのロゴを据えたデザインも品がよく、また美しい。

個人的に新型ベンテイガのデザインでもっとも気に入っているのは、メッシュ状の大型フロントグリルの左右にこちらも大型のヘッドライトを配したフロントマスクで、現代的でエレガントな雰囲気を漂わせながらも、1920年代から1930年代にかけてルマン24時間で計5勝を挙げたヴィンテージ ベントレーに通じる力強さと緻密さが感じられる。なんとも味わい深いデザインだ。

画像: メインディスプレイは10.9インチを採用、それを囲むようにベントレーの翼の形をモチーフとしたデザインになっている。

メインディスプレイは10.9インチを採用、それを囲むようにベントレーの翼の形をモチーフとしたデザインになっている。

インテリアではベントレーらしさをしっかりと守りながら、インフォテインメント系のモダナイズも実施された。メーターパネルがフルデジタル化され、ダッシュボード上のディスプレイが超高解像度な10.9インチのものへと置き換えられたのは、その象徴だろう。

上質なレザーやウッドで覆われたキャビンはベントレーの面目躍如といったところ。手の込んだステッチや金属加工にも目を見張らされるが、それ以上に印象的なのがインテリアに用いられる素材の発色が鮮やかなうえに、そのカラーコーディネイトが見事なこと。おかげで全体としてはすっきり見えるのに、じわじわとそのセンスの良さ、贅沢さが感じられるようになる。これ見よがしな豪華さだけを競うプレミアムブランドとは、この点が決定的に異なる。

さらに5人乗り仕様ではリアシートのリクライニング調整角度が2倍に増えたほか、4人乗りでもひざまわりのスペースが30mmほど広がったという。

パワートレーンでは4L V8ツインターボエンジンが新たに主役に据えられ、追って6L W12ツインターボエンジンを積むスピードやプラグインハイブリッドが登場する。このうちハイブリッドは日本初上陸。次世代パワープラントがベンテイガの世界観とどう結びつけられたのか、実に楽しみだ。

ラグジュアリーSUVの市場を開拓し、現在も先頭を走り続ける

今回、日本自動車研究所のテストコースで試乗したのは主力となるV8モデル。もっとも、エンジンのスペックは従来型と同じ。シャシ面では、新型の方がサスペンションの動き方がかすかにしっとりとしたように感じた程度で、乗り心地の違いはほとんど看取できなたった。雑味成分が濾過されて洗練された感触を示すステアリングがいつでも正確に反応するベンテイガ(というかこれはベントレーの全モデルに共通する)美点もそのまま継承されている。

そうしたなか、リアの接地感がわずかに良くなっていたようにも思えたが、これはもう少し走り込んでみなければ確信は持てない。いっぽうで、サスペンションの上下動に伴うこもり音は新型のほうが軽く、車内が一段と澄んだ静けさに包まれるようになったのは嬉しい進化だった。

いずれにせよ、外観を別にすればベンテイガのキャラクターはまったくといっていいほど変わっていない。

画像: 地球上の思いつく限りのあらゆる地形を走破し、走りを作り込んできた新型ベンテイガ V8。今回の改良では内外装の一新に留まらず、ADASもアップデートしている。

地球上の思いつく限りのあらゆる地形を走破し、走りを作り込んできた新型ベンテイガ V8。今回の改良では内外装の一新に留まらず、ADASもアップデートしている。

「ライバルが続々と登場したのでフェイスリフトを行いましたが、もっともラグジュアリーで、驚くほどパフォーマンスが優れているSUVというベンテイガの立ち位置はまったく変わっていません」
2020年3月に行われた新型ベンテイガのスニークプレビューで、プロダクト ライン ディレクターのクリス・コール氏はそう語っていたが、これぞラグジュアリーSUVセグメントでトップを独走するベントレーの自信の表れといえるだろう。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

ベントレー ベンテイガ V8 主要諸元

●全長×全幅×全高:5125×1998×1728mm
●ホイールベース:2995mm
●車両重量:2416kg
●エンジン種類:DCU型/V8 DOHC ツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:550ps/6000rpm
●最大トルク:770Nm/2000−4500rpm
●駆動方式:4WD
●トランスミッション:8速AT
●燃費:7.5km/L(WLTPモード)
●車両価格:2142万8000円

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