1980年代、「クロカン」ブームを支えた4WDが、各自動車メーカーから続々と発売された。この連載企画では、今でいうSUVとは、ひと味もふた味も異なる「泥臭さやワイルドさ」を前面に押し出したクロカン4WDを紹介する。第17弾は「 ダットサン ピックアップ」だ。

ダットサンに改名する前は「DATSON(ダットソン)」だった

画像: 写真は1972年式のダットサン ピックアップ 1500DX(6代目 620型)。

写真は1972年式のダットサン ピックアップ 1500DX(6代目 620型)。

日産自動車の前身「快進社」は、田 氏、青山氏、竹内氏の支援を受け、1914年、支援者のイニシャル「D」「A」「T」を用いたDAT号を完成させた。その後1931年に、快進社改め「ダット自動車製造」は「ダットの息子=DATSON(ダットソン)」という名の小型自動車を発表。

しかし、「SON」は日本語で「損」をイメージさせることから、SONを太陽の「SUN」に変えて「DATSUN(ダットサン)」に変更した。その後、「ダット自動車製造」からダットサンの製造権を譲り受けた「自動車製造」は、1934年に「日産自動車」に社名変更し、現在に至る。

さて、日産自動車は1935年に日本初の大量生産工場を設立。このラインで初めて生産したダットサンシリーズに、ピックアップトラックが含まれていた。これぞ元祖に当たる。その後も時代に合わせ選択肢を拡大。そして1979年のモデルチェンジで、ピックアップ初のダブルキャブを披露し、実用車としてだけでなく、仕事個人ユース層を獲得していく。

5人乗車が可能なダブルキャブがついに誕生した

画像: 写真はダットサン ピックアップ初となるダブルキャブ仕様(1980年)を設定した8代目 720型。

写真はダットサン ピックアップ初となるダブルキャブ仕様(1980年)を設定した8代目 720型。

その翌年の1980年。720系についに4WDを投入。誕生はどのメーカーのピックアップより早かったダットサンだったが、4WDの設定は「いすゞ ファスターロデオ」、「トヨタ ハイラックス」に次ぐ後発だった。しかしその分、ライバルたちにはない個性を引き出していた。

そのひとつが、2名乗車のシングルキャブに加え、5名乗車が可能なダブルキャブの設定だ。また、2815mmというロングホイールベースが生み出す安定性と、圧倒的な積載量も好評を博した。さらに斬新だったのが、フロントサスペンションに独立懸架式を採用したこと。これにより高い操縦安定性を確保。一方リアサスペンションは強靭なリーフリジッドを用いて、悪路走破性を高める役を担った。

4WD初代の搭載エンジンは、1770cc直4のガソリンL18型(最高出力95ps/最大トルク15.0kgm)。1982年にはL18型を廃止しZ18型(最高出力90ps)を採用したほか、2164cc直4ディーゼル「SD22型(最高出力65ps)」を新設定した。その翌年には、SD23型(最高出力73ps)へ移行して、さらにキングキャブを追加した。

プライベートユースを考慮したスタイリングを採用

画像: 写真は最上級グレード「AD」。ツートンのボディカラーはADだけに設定された特別色のダークレッドM/シルバーMツートン。

写真は最上級グレード「AD」。ツートンのボディカラーはADだけに設定された特別色のダークレッドM/シルバーMツートン。

そして1985年、RVへの道をひた進んだダットサンはD21へモデルチェンジする。4WDの搭載エンジンはZ18型とSD23型のまま。ボディ形状はシングルショート、シングルロング、ダブルキャブの3種。サスペンションも先代も同様のレイアウトだったが、オフロード走破性を高めたカスタムが施され高い評価を受けた。それは1986年にダットサンから派生したテラノにも受け継がれた。

ダットサンD21型はその後のリニューアルを幾度か施し、最終的の搭載エンジンはガソリンがNA20型(最高出力91ps/最大トルク16.2kgm)と、ディーゼルがTD27T型(最高出力100ps/最大トルク22.0kgm)とターボなし(最高出力85ps/最大トルク18.0kgm)の3種となる。また、1992年には、TD27T型搭載モデルに国産ピックアップ初の4速ATを採用するなど、新たなチャレンジを続けた。

国内市場では最後のダットサンとなったD22型

画像: 国内モデルでは最後のダットサンとなった10代目 D22型。

国内モデルでは最後のダットサンとなった10代目 D22型。

そして1997年、D22型へモデルをシフトする。D22型はシングルロングとダブルキャブを揃え、全体的にラウンドしたエアロデザインのボディを採用する。4WDの主力エンジンは、3153cc直4ディーゼル「QD32型(最高出力110ps/最大トルク22.5kgm)」と、ガソリンの2388cc直4の「KA24E型(最高出力130ps/最大トルク20.2kgm)」だった。

さらにダブルキャブにはAT仕様が設定されていたにもかかわらず、全車に5速MTを設定するなど、当時では珍しいバリエーション展開をしていた。

サスペンション形式は先代のままだが、最小回転半径をD21より200mm縮めるなど、あらゆる箇所を見直した。また、衝撃吸収ボディ&高強度キャビン、運転席エアバッグ&ABSなど、時代に合わせた装備もしっかり備えていた。

1999年にはキングキャブを設定したほか、KA24E型をKA24DE型(最高出力150ps/最大トルク21.2kgm)に換装するなど、ニーズや規制に合わせたマイナーチェンジを施した。

そして2002年。当時国内向けの商用車としてもっとも古くから存在したダットサンが、ついに国内販売の歴史に幕を降ろすこととなった。

しかし日産では、現在でも世界に向けた多種多様なピックアップ、最新型NP300、フロンティア、ナバラ、タイタンなどを発売している。ダットサンというクルマがなくなっても、長年築いた「ダットサン」の遺伝子は新しい世代に脈々と引き継がれているのだ。

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