あらゆる制約を排除して開発されたワンオフモデル
今回発表されたロールスロイス「ボートテイル」は、常連の顧客の提案によってスタートしたもので、顧客主導の創造的でダイナミックな要求がロールスロイスの思いと一致したことで実現したプロジェクト。自動車とはなにかという概念への挑戦として注目された2017年の「ロールスロイス スウェプテイル」のコンセプトをさらに進め、あらゆる制約を超えて、既存のどのモデルにも依存しない、ユニークで浮世離れしたモデルとなっている。
顧客の要望は、Jクラスのヨットの純粋な美しさ、それを実現するための最高レベルの技術にインスパイアされた最高品質のモデルの創造で、それはコーチビルダーとしてのクラフトマンシップ、ロールスロイスの最新テクノロジーなくしては実現できないものだった。
その開発プロセスはヨットの建造に似ていて、最新技術なくしては実現できないものの、機械だけではなしえない透明感や手作りによる開発に膨大な時間が必要とされた。
デザインは1932年のロールスロイス ボートテイルを反映しているが、その模倣ではなく、伝統的な価値と現代的な技術が融合されたものになっている。
とくに特徴的なのはやはりリアエンド。1932年のロールスロイス ボートテイルの木製のリアデッキを現代的に解釈したデッキには、通常はインテリアに使われるグレーとブラックのウッドが外装用にアレンジされている。そして顧客の提案により、ボタンを押すとデッキが蝶の羽のように開き、ホスティングスイートが表われる仕組みも盛り込まれた。
ロールスロイスの各モデルには、悪天候に備えてドアに傘が収納されているが、このモデルには、晴天を見越してパラソルがリアセンターラインの下に収納されているのもポイント。また、カクテルテーブルがホスティングスイートの両側にエレガントに回転して表れ、スツールにアクセスできるようになっている。ホスティングスイートには、シャンパンを正確に6度に急冷する冷蔵庫と、料理を美味しく保つ冷蔵庫も備わる。
顧客はとくにホスティングスイートの内部温度に気遣い、2つのファンが取り付けられ熱を放散しているという。
ボディカラーは顧客お気に入りの豊かで複雑な「ブルー」。ボートテイルにふさわしい色調は、時に艶やかに、日光の下ではエネルギッシュなオーラをもたらす。インテリアはボディの色調の変化を反映しており、前席は濃い青、後部座席は明るい色調に仕上げられている。また、革には柔らかなメタリックの光沢が施されている。
キャノピールーフは建築的な複雑な造形で、万が一悪天候に遭遇した場合は、一時的なトノーも準備される。
ロールスロイスのトルセンミューラー最高責任者は、「ボートテイルは、多くの人の協力、野心、努力、そして膨大な時間の集大成です。それは成功を祝い、永続的な遺産を作りたいという願望から生まれました。ロールスロイス ボートテイルは、その実現において、ブランドの歴史と現代将来において重要な瞬間を築き上げていくでしょう」とコメントしている。