2021年8月21日(土)16時(日本時間23時)、第89回ル・マン24時間の決勝レースのスタートが切られる。トヨタのル・マン4連覇なるか、ハイパーカー時代の初代王者となるのか、1923年から続く歴史の1ページを刻む戦いが始まる。なお、レースは8月15日の公式テストを経て、8月18日14時(日本時間21時)から始まるフリー走行で幕を開ける。

ライバルチームとの争いだけでなく、課題はレースそのものの過酷さ

今年のル・マン24時間レースは、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、通常の6月ではなく8月に延期され、5万人に制限されるものの観客が見守る中で開催されることになった。(昨年は9月に行われたが無観客での開催だった)

ハイパーカー時代初年度となるWEC2021年シーズンは、開幕戦からここまでトヨタGR010 HYBRIDが3連勝を飾るなど好調。トヨタにとっては、ル・マン4連覇の偉業、そしてハイパーカー時代の初代王座に挑む歴史的イベントになる。ただ、開幕3連勝中のトヨタにとっても、ここまで楽勝であったわけではなく、ハイパーカーとして技術的にも大きなチャレンジとなる。

とくに近年のル・マン24時間は耐久レースというより、24時間可能な限り全力で走るスプリントレースのようになってきており、その上でレースをコントロールしなくてはならない厳しい戦いとなっている。ハイパーカークラスにはトヨタのほかに、スクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスから2台、そしてLMP1車両のアルピーヌが出場するが、ル・マン24時間というレースの難しさは、ライバルチームとの争いだけでなく、レースそのものの過酷さにあると言ってもいいだろう。

公道区間を含む長距離コースを24時間にわたって戦う間に、レースカーは約4000kmをほぼスロットル全開で走行。その間におよそ2万5000回に渡るギアチェンジを行い、またタイヤは200万回転以上する。 マシンの信頼性、耐久性が問われるが、またトラブルにいかに対処するか、チーム力も重要となる。

画像: 決戦を前に緊張感が高まるサルテサーキット。ライバルチームとの争いの前に、レースそのものの過酷さを克服しなければならない。写真はレース開幕に先駆けて8月15日に行われた公式テストの模様。

決戦を前に緊張感が高まるサルテサーキット。ライバルチームとの争いの前に、レースそのものの過酷さを克服しなければならない。写真はレース開幕に先駆けて8月15日に行われた公式テストの模様。

トヨタにとってハイブリッドで挑戦して10度目という記念すべき大会

トヨタにとって今年のル・マンは4連覇を目指すだけでなく、ハイブリッド車でWECに挑戦して10度目という記念すべき大会でもある。ちなみにトヨタはこれまで9回のル・マンのレースで、3度の勝利と5度のポールポジション、そして9つの表彰台を獲得している。

TOYOTA GAZOO Racing WEC チームの村田久武代表は「ル・マンに参戦できることは名誉であり、また3連覇のタイトルを持って再びここに戻って来られることを誇りに思っています。 ハイパーカーで初のル・マン勝者として、さらに連勝記録を伸ばせるよう、我々は全力を尽くします。今シーズンはここまで、ハイパーカーのライバルたちと激しい戦いを繰り広げている上、GR010 HYBRIDにとって初のル・マンでもありますので、当然簡単なレースにはなりませんし、技術的にも大きなチャレンジと言えるでしょう。ファンの皆様がサーキットに戻ってきて、あの特別な雰囲気に包まれたル・マンが帰ってくることを大変楽しみにしています。有観客でのレース開催を実現いただいたACOの皆様へ深く感謝するとともに、今回のル・マンが、ファンの皆様の記憶に残る素晴らしいレースになると確信しています」とコメント。ドライバーは次のようにコメントしている。

中嶋一貴(トヨタGR010 HYBRID 8号車)

「ル・マンの雰囲気は信じられないほど素晴らしいです。初めてル・マンで戦った2012年、ファンの歓声と情熱に圧倒されました。昨年は残念ながら無観客での開催だったので、今年、観客が戻ってくるのは嬉しいです。ル・マンが世界一チャレンジングなレースだということは、経験からとても良く分かっていて、何が起こっても不思議ではありません。我々はGR010 HYBRIDとともに、初のハイパーカー勝者となるべく、全力で挑みます。自分のすべきこと全てに集中し、運も味方してくれることを祈ります。予想は全くできませんが、表彰台の中央に立つため全てを尽くします」

画像: 8号車のステアリングを握る中嶋一貴。8号車は、今季開幕2戦目のスパ6時間とポルティマオ8時間レースを制し、ドライバーズ選手権首位でル・マンを迎える。

8号車のステアリングを握る中嶋一貴。8号車は、今季開幕2戦目のスパ6時間とポルティマオ8時間レースを制し、ドライバーズ選手権首位でル・マンを迎える。

小林可夢偉(GR010 HYBRID 7号車)

「ル・マンはシーズンのハイライトです。ル・マンを走るのは素晴らしい経験で、特に予選は新しいタイヤと軽い燃料で走ることができるため、最高です。私自身、3度のポールポジションを獲得していますが、もちろん最大の目標はレースに勝つことです。過去数年のレースで7号車は本当に強かったのですが、いつも何かが起き、最後までノートラブルで走り切っていません。だからこそ、今年はトラブルなくパーフェクトなレースへ向けてプッシュし続けます。我々はレースに向けて集中していて、今年こそ勝利できると思っています」

画像: 7号車のステアリングを握る小林可夢偉。7号車は、2019年と2020年、車両トラブルに見舞われるまではル・マン24時間を支配する強さを見せており、今年こその思いが強い。

7号車のステアリングを握る小林可夢偉。7号車は、2019年と2020年、車両トラブルに見舞われるまではル・マン24時間を支配する強さを見せており、今年こその思いが強い。

第89回ル・マン24時間レースは、8月18日水曜日の5時間のフリー走行と予選セッションで開幕。19日木曜日にはさらに計5時間のフリー走行が行われるが、2回のフリー走行に挟まれる形で30分間のハイパーポールセッションが行われる。そして、21日土曜日の現地時間16時(日本時間23時)に24時間の長いレースのスタートが切られる。

WEC 2021年シーズン 第4戦ル・マン24時間レース タイムテーブル

フリー走行1  8月18日14時〜17時(日本時間8月18日21時〜24時)
予選      8月18日19時〜20時(日本時間8月19日02時〜03時)  
フリー走行2  8月18日22時〜24時(日本時間8月19日05時〜07時)
フリー走行3  8月19日14時〜17時(日本時間8月19日21時〜24時)
ハイパーポールセッション  8月19日21時〜21時30分(日本時間8月20日04時〜04時30分)
フリー走行4  8月19日22時〜24時(日本時間8月20日05時〜07時)
決勝      8月21日16時〜8月22日16時(日本時間8月21日23時〜22日23時)

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