クルマの快適性、静粛性を語る上で重要となるNVH
クルマにはNVHという快適性を示す言葉がある。Nは騒音(ノイズ=N)、Vは細かい振動(バイブレーション=V)、Hは凹凸を通過したときの振動や衝撃音(ハーシュネス=H)を意味する。
内燃機関(エンジン)を使用したクルマの場合、エンジンの騒音や振動の要素がどうしても大きくなる。現在では、これ自体もエンジン本体の静粛性アップやエンジンマウントの工夫で、かつてとは比べものにならないくらい改善しているが、それでもNHVの発生源であることに変わりはない。
体感という部分では、ボディの剛性や遮音性の要素も大きい。もちろん作りの良いボディならば静粛性は高くなるが、そうでないとエンジン以上に気になる場合もある。また、ボディスタイルによって風切り音も大きく違ってくる。さらにエンジンやボディが静かになると、今度はタイヤのロードノイズなどが目立ってくるという、ある意味際限のないサイクルに入ってしまうとも言える。
サスペンションがNVHの発生源ということもあり得る。これは路面の状況によって常に動いているからだ。サスペンション自体の剛性が低かったり、スプリングとショックアブソーバーのバランスが悪いと、時に不快な振動を感じたり、耳障りな音が発生することもある。
普段は意識しないパーツではあるば、サスペンションの可動パーツの連結部に使用されるブッシュもNVHに関わっている。ブッシュは、ゴムを使用した部品だが、適度な硬さを持たせることによって、サスペンションを設計どおりに動かす役割を担っている。
ただ、ゴム製であることから経年劣化は避けられない上に、亀裂を生じさせてしまうこともある。そうした状態になった場合、ゴツゴツ感が衝撃音や振動、騒音のもとになってしまうのである。
そして最終的に路面からの入力を常に受けているタイヤもNVHを語る上で欠かせない。ノイズはトレッドパータン、バイブレーションは偏摩耗やホイールバランスの不整、ハーシュネスはエア圧の不整などを原因にしていると考えられる。
クルマを評価する要素として「走る」、「止まる」、「曲がる」が重要視されるが、乗用車において快適な「居住性」が重要視される。自動車メーカーは他社メーカー車との差異をつけるべく日夜NVHと闘っているとも言えるわけだ。(文:Webモーターマガジン編集部 飯嶋洋治)