
小沢コージ
1966年生まれ。日本自動車評論家、バラエティ自動車評論家を自称し、雑誌やラジオ、ウェブサイトなどメディアを問わずに独自の切り口で活躍。ゴルフは約20年のキャリアを持つエンジョイ派。
セダンとしての本質価値が進化。レクサスの最量販セダンがさらにパワーアップ
日本が世界に誇る自動車プレミアムブランド「レクサス」の主軸モデル、ESが2021年8月にパワーアップ。2018年10月に発売された現行モデルとしては初の改良を行い、戻ってきた。
ESはそもそも1989年のレクサス創業とともに生まれた歴史あるセダンで、日本に導入されたのは4年前の7代目モデルから。それまでは北米を中心とするグローバルマーケット向けのFFミドルサイズセダンだったのだ。
ところが昨今のSUV人気の高まりとラインアップ増強に伴い、セダン群を大胆に整理。2018年の7代目ES登場と同時に日本を含む、レクサスの主力セダンとしてパワーアップして再登場したのだ。
最大のポイントはSUVでは絶対に味わえない、他にない上質なセダンとしての価値。エクステリアやインテリア、また走行快適性などにおいて高い性能を全域で与えられていた。

クーペルックのスタイリッシュなボディと、横置きエンジンのメリットを活かした広い居住スペースが特徴。

大小/向きの異なるL字型ユニットの集合体で構成されたメッシュパターンのスピンドルグリルを採用。

ES300h “version L”はハイパークロムメタリック塗装を施された18インチアルミホイールを装着する。

3眼ヘッドライトはブレードスキャン アダプティブ ハイビーム システムを採用し、眼光鋭い表情を演出。

レクサスESのブレードスキャン アダプティブ ハイビーム システムが照射するエリアのイメージ。
まずはボディである。従来の6代目モデルに比べ、長さ、幅ともに大幅拡大。全長はほぼ5m、全幅は1.8m強とプレミアムセダンに相応しいサイズ感を与えられた上、最新のレクサスアイデンティに基づくスピンドルグリルを採用。これに鮮烈かつ流れるようなボディフォルムが相まり、レクサスを代表する存在感を醸し出しはじめた。
日本での初導入と時期を同じくしたフルモデルチェンジは日本をはじめ世界的に高評価を受けており、今回のマイナーチェンジでは魅力と存在価値を上手に高めている。
まずはクルマの印象に大きく関わるヘッドライトで、新たにブレードスキャン・アダプティブハイビームシステムを採用する。デザインとして目つきの鋭い薄型ユニットになっただけではない。高速回転するブレードミラーにLED光を照射・反射させ、残像効果によって前方を照らすハイテクヘッドライトで、対向車や先行車を眩惑することなく、遠方の歩行者や標識、路肩などをより早く鮮明に照らし出す。まさにレクサスらしい、デザイン性とハイテク性の融合だ。
そのほかフロントグリル内のデザインや、アルミホイールにも新意匠を採用し、ボディカラーも魅力的な新しいメタリック色を選べるようになった。

フルサイズのキャディバッグを3個は楽勝で搭載できる。軽量タイプなら4個は収納可能だ。セダンならではの乗り心地に加え、この収納力もゴルフ向きだ(小沢)
しっとりとした乗り心地と、シャープなハンドリングの両立
インテリアにも気の利いた改良が施され、従来から見やすいと評判のいい12.3インチの大型センターディスプレイを中心とするマルチメディアシステムがタッチディスプレイ化。もちろんこれだけではなく、画面位置を約10cmドライバーに近づけ、またドライバーの方向へ約5度傾けることにより大幅に使いやすくなった。同時に視認性、操作性を向上させるために画面素材をガラスに変更している。
インストルメントパネルからハンドル、ドアトリムなどのオーナメント加飾に、新色としてダークブラウン系色の「ヘーゼル」やグレー系色の「モーヴ」などを選べるようになっただけでなく、コクピットを囲うように配置されるオーナメントパネルに2色のウォールナットの木目パネルが追加された。

12.3インチセンターディスプレイは、タッチパネル化によって操作性を大幅に向上している。また、画面表面をガラス素材としたことで、従来から「見やすい」と評価の高かった視認性をさらに向上させてきた。

悪天候時でも視界を妨げないデジタルアウターミラー。今回、大幅改良されたポイントのひとつで、LEDディスプレイに表示される画質を向上させたことで、視認性も高められている。

オプション設定されているデジタルインナーミラー。車両後方のカメラからの映像を映し出すことで、後席ヘッドレストやリアガラスの水滴などに視界を妨げられず、クリアな後方視界を確保できるアイテム。

Lexus Safety System+はミリ波レーダーと単眼カメラを組み合わせる。車両だけでなく歩行者(昼・夜間)やサイクリスト(昼間のみ)も検知するなど、「プリクラッシュセーフティ」の作動範囲を拡大した。

交差点で右折する際、対向車線の前方から来る直進車や、右左折時に前方から来る横断歩行者も検知。状況によってプリクラッシュセーフティを作動させるよう、機能を進化させている。

ドライバーによる回避操舵をアシストして、状況によって車線内を維持できるよう支援する「緊急時操舵支援」や、低速走行時の事故予防をサポートする「低速時加速抑制」などの機能を追加されている。
それ以上に重要なのは数値に表れにくい、セダンならではの走り味の向上だ。従来より評価の高い、システム最高出力218psを発生する2.5L直4+モーターのハイブリッドシステムにはあえて手を加えておらず、ボディ骨格をさらにブラッシュアップすることでプレミアム性を演出する。
具体的に言うと、従来は1枚板だったリアサスペンションのメンバーブレースを2枚に変更。結果、ボディ剛性は確実にアップ。セダンならではのしっとりとした乗り心地、より高い静粛性やシャープなハンドリングを実現した。
そのほかブレーキシステムに、よりコントロール性の高い制御や改良が施され、スポーツグレードの“F SPORT”にショックアブソーバーの減衰力を細かく制御するリニアソレノイド式AVS(アダプティブ・バリアブル・サスペンション・システム)が与えられた。
先進運転支援システムも新世代の「Lexus Safety System+」を搭載。高速走行時における先行車追従型レーダークルーズコントロールの性能や車線維持性能が確実に上がり、より安心して長距離を走れるようになった。
また量産車世界初採用のカメラを使ったデジタルアウターミラーも絶妙に性能アップ。LEDのちらつきを抑えるとともに、明暗が混在する映像の視認性を改善するためのノイズ低減処理を施し、ノイズ感の少ないクリアな表示を実現している。

最新レクサス ESは、初代モデルから定評のある後席空間の広さ、そして快適性をさらに進化させてている。

12.3インチセンターディスプレイは、ドライバーに最適な角度と距離で配置され、視認性や操作性も向上。

ES300h “version L”はセミアニリン本革シートを標準装備。写真は新しいインテリアカラー「モーヴ」。

走行や路面の状況などによって、サスペンションの減衰力を可変制御するリニアソレノイド式AVSを採用。
SUVに負けないセダン価値とは、やはり走ってわかる安心感であり気持ち良さでありスポーティな佇まい。新型ESはまさに「かゆい所に手が届くような進化」を遂げていたのである。
文:小沢コージ/写真:三浦孝明、Lexus International/協力:カメリアヒルズカントリークラブ/協力:ゴルフダイジェスト社編集企画室)
車両情報:レクサス ES
ES300h:599万円
ES300h “F SPORT”:651万円
ES300h “version L”:715万円
※車両価格はすべて税込
主要諸元:レクサス ES300h “version L”
●全長×全幅×全高:4975×1865×1445mm
●ホイールベース:2870mm
●車両重量:1720kg
●エンジン:直4 DOHC+モーター
●総排気量:2487cc
●最高出力:131kW(178ps)/5700rpm
●最大トルク:221Nm/3600-5200rpm
●モーター最高出力:88kW(120ps)
●モーター最大トルク:202Nm
●トランスミッション:電気式無段変速機
●駆動方式:FF
●燃料・タンク容量:レギュラー・50L
●WLTCモード燃費:22.3km/L
●タイヤサイズ:235/45R18