ルーフを切り取るのは想像以上に大変な作業
SEMAショーへの出品車ということからもわかるとおり、「スポーツトップ」と名付けられたこの新世代エアロトップは量産を意図したものではない(と思われる)。とはいえ、随所に施されたトリムは量産車を彷彿とさせる完成度。そもそも、現行GRスープラはBMW Z4モデルと途中まで共同開発された因縁がある。つまり、ルーフを取り外すことへのハードルは比較的低いはず・・・なんて淡い期待を抱きながら、GRスープラ スポーツトップを眺めていきたい。
ルーフはテキサス州フォトワースにあるKCペイントショップ(ボディ架装会社?)によって切り取られているが、その作業は我々が想像するよりずっと困難だったという。同社のオーナーであるマシュー氏はその苦労をこう語る。
「トップの取り外しは想像以上に困難を極めました。ボディの剛性を保ったままルーフを切り取るという作業は本当に大変で、30分でようやく1インチ(約2.54cm)ほどしか切断できませんでした。いくつかの工具を試してようやくルーフを切り離すことに成功しましたが」
つまり「Z4はオープンだから・・・」と考えるほどには、BMW Z4とGRスープラのボディに共通点はなく、別モノと考える方が適切なことが図らずも証明されたことになる。
デタッチャブルトップのデザインと制作、そしてディテールの構築はミシガン州アナーバーにある北米トヨタの「リサーチアンドディベロップメント」の専任チームが担当した。ルーフの成型は3Dプリンターを使って2枚に複合素材パネルを組み合わせている。さらにボディ剛性を復活させるため、ウインドーサッシュ、エンジンベイからアンダーフロアに至るまでくまなく補強を加えている。
80スープラを彷彿とさせるリアウイングに感涙!?
さらにチームは、SEMAショー出展車にふさわしいさまざまなカスタムパーツを開発、装着した。たとえば、印象的なリアのディフューザーは既製品ではなく完全なワンオフの手作りで、排気系のパーツもすべて専用開発。80スープラを彷彿とさせるリアウイングも、もちろん一点物である。
眺めれば眺めるほどに、その完成度の高さとデザインに惚れ惚れしてしまうが、冒頭にも書いたように、あくまで今回の「スポーツトップ」はショーモデル。GRスープラの新グレードとして量産される可能性は限りなく低いけれど、70/80スープラのエアロトップに憧れたアラフィフ/アラカンにとっては淡い期待を抱かせるクルマなのでありました。(文:Motor Magazine編集部 阪本透/写真:トヨタ自動車)