前後にモーターを配したハイブリッドシステムを採用
ひと目見ただけでは、先ごろマイナーチェンジを受けた最新の3008とまるで見分けがつかないこのクルマ。実はプジョーの量産SUV史上、最高のパフォーマンスが与えられているという。
その名も「3008GT HYBRID4」は、フロントに200ps/300Nmのハイパフォーマンス版1.6Lガソリンターボエンジンを積むほか、同じくフロントに110ps/320Nmの電気モーター、そしてリアにも112ps/166Nmの電気モーターを搭載し、システム全体で300psと520Nm(フランス本社公表値)を生み出すプラグインハイブリッド4WDを装備している。
今、何気なく「プラグインハイブリッド4WD」と記したが、プジョーの量産モデルとして4WD仕様のプラグインハイブリッドシステムを採用するのは3008GT HYBRID4が史上初。その最大のメリットは文字どおり4WDになることで、滑りやすい路面では前輪駆動モデルを大幅にしのぐトラクション性能を期待できることである。
しかも、前述のとおりこのモデルは2モーター方式を採用するので、エンジン+ギアボックスに直結されたフロントモーターを発電機として活用し、ここで得た電力でリアモーターを駆動することも可能。つまり、バッテリーに充電された電力だけに頼ることなく4WD方式を維持できるわけで、これが冬の雪国を旅する際に心強い存在となってくれることは言うまでもないだろう。

LEDデイタイムライトは、新世代プジョーのデザインコードであるセイバー(サーベルの意)と呼ばれる牙状のものを採用。

ライオンの爪あとから着想を得た、三本のLEDが赤く光る3D LEDリアコンビランプを採用する。

ボディサイズは全長4450×全幅1840×全高1630mmと、日本の道路環境にも適したちょうどいいサイズ感。ホイールベースは2675mm。

新世代のインスピレーションを受けてデザインされたフロントフェイスを採用する。

リアモーター駆動によるトラクションのおかげで0→100km/h加速は5.9秒(欧州参考値)という高い動力性能を発揮する。

200psの1.6Lガソリンターボエンジンと前後モーターを合わせてトータル出力300ps /520Nmを誇る。
前後にモーターを搭載したハイブリッドシステムは、舗装された乾燥路でも多くのメリットを生み出す。たとえば、モーターで減速力を生み出す回生ブレーキは、前後輪のどちらにも作用できる。実際に車載のエネルギーフローチャートで観察していると、アクセルペダルを戻した際にはフロントモーター、ブレーキペダルを踏み込むとリアモーターが主に「減速役」を買って出ることで、スムーズな減速と効率的な回生の両方を実現しようとしていることがよくわかった。
しかも、エンジンと2基のモーターが生み出すパフォーマンスをフルに引き出せば、前述のとおり300ps/520Nmを発生する。本国の資料によると、最高速度は235km/hに達し、100km/hまで5.9秒で駆け抜ける韋駄天ぶりを示す。もちろん、プラグインハイブリッドゆえ外部電源で充電した電力での走行も可能で、13.2kWhのバッテリーをフル充電すれば、WLTCモードで最長64kmもゼロエミッションで走行できる。つまり、動力性能と環境性能をこれまでにないレベルで両立した初のプジョー車が3008GT HYBRID4なのである。
こうしたハイブリッド性能を最大限発揮させるため、「4WD/スポーツ/ハイブリッド/エレクトリック」からなる4つの走行モードが用意されており、路面状況やドライバーの好みに合わせて選択が可能だ。また、スマートフォンから充電状況を確認したり、エアコンをあらかじめ作動できるコネクテッド機能も充実している。それでは3008GT HYBRID4の試乗インプレッションをお届けすることにしよう。
ボディをフラットに保ちつつ快適な乗り心地を実現する
走り始めて最初に気づいたのは、たっぷりとしたサスペンションストロークがもたらす快適な乗り心地。その感触は、「ネコ足」と表現された往年のプジョーを髣髴とさせるもので、荒れた路面にどこまでも追従する優れたロードホールディング性を誇る。
一方で、ボディをほどよくフラットに保ってくれるところも、かつてのネコ足にそっくりだと感じた。こうしたことから3008GT HYBRID4は、このクラスのSUVとしては足まわりのバランスがとくに良好と評価したい。

200psの1.6Lガソリンターボエンジンと前後モーターを合わせてトータル出力300ps /520Nmを誇る。
ドライブトレーンの印象も上々だった。電動車らしく、アクセルペダルを踏めばスッとトルクが立ち上がるが、その加速感に過剰な演出がなく、ドライバーの狙いどおりに加減速できる優れたドライバビリティが嬉しい。もちろん、エンジンを始動させないモーター走行時の静粛性が極めて良好。
ハイブリッドモード時はちょっとしたアクセルペダルの操作にも反応してエンジンがかかるが、そうした際のノイズやバイブレーションの変化幅がとても小さいので、キャビンは全般的に静かで快適と評価することができる。
▶︎▶︎▶︎次ページ:上り勾配でも自在に加速する力強さ
ドライブトレーンは力強く、上り勾配でも自在に加速
高速道路に入ってからも、そうした印象は変わらなかった。エンジン自体がもともと静かなうえ、高速域ではロードノイズや風切り音でマスキングされるため、エンジンがかかっていることは、いよいよわかりにくくなる。ただし、いくらその存在をひた隠しに隠していても、追い越しを試みれば瞬時に加速態勢に移行してみせるうえ、そのパワー感は市街地での穏やかな身のこなしから想像もできないくらい力強い。
ワインディングロードではドライブトレーンの力強さがさらに明確になる。上り勾配や車速のいかんを問わず、どんな状況でも意のままに加速していく様は、まるでパワフルなスポーツセダンのよう。しかも、市街地でソフトな感触を示した足まわりが、コーナリング時はロールをしっかりと抑え込んでくれるので安心感が強い。

小径ステアリングホイールを採用したiコックピットは、視線移動距離の減少、ハンドル操作の少ない動線など、優れた資質を持っている。

トランスミッションはPHEV専用の8速AT(e-EAT8)を採用。ハンドルコラム脇にパドルシフトを備えており、ドライバーは積極的にギアチェンジを行うこともできる。

GT HYBRID4には、アルカンタラ&テップレザーのライトグレー基調のシートを採用。

アルカンタラ&テップレザーのライトグレー基調のシートは、あたりが柔らかい上、身体をゆったりと包み込む形状が採用されている。

後席のシートバックは60:40の分割可倒式を採用。ラゲッジルームは最大1482Lの容量を確保している。

メーターパネルとなる12インチ大型ディスプレイには様々な計器類の表示設定があり、これはその一例に過ぎない。
一方でピッチング方向の動きは多少許容するが、これはハンドリング特性の微調整に活用できるので、むしろ安心材料と考えられる。
つまり、市街地からワインディングロードまで、どんな状況でも快適で安心感が強く、いざとなれば力強い走りを示してくれるのが3008GT HYBRID4なのである。しかもプジョーは、多彩なドライブトレーンをラインナップする「パワー・オブ・チョイス」の思想に基づき、3008にもガソリン車やディーゼル車をラインナップし、ユーザーの幅広いニーズに応えている。
ちなみに3008GT HYBRID4は運転支援装置をはじめとする装備も充実しているため、オプションで選びたくなるのはナビゲーションシステムとETC車載器くらい。しかも、車両価格が600万円台に設定している当り、プジョーらしい絶妙な設定といえるだろう。(文:大谷達也/写真:永元秀和)
動画で見る、プジョー 3008GT HYBRID4【竹岡圭の今日もクルマと】
【竹岡圭の今日もクルマと】プジョー最強のモデル 3008 GT ハイブリッド4の走りを堪能!
youtu.beプジョー 3008 ラインナップ
Allure(1.6L 直4ガソリンターボ):416万2000円
GT(1.6L 直4ガソリンターボ):459万7000円
GT BlueHDi(2L 直4ディーゼルターボ):495万8000円
GT BlueHDi Red Nappa(2L 直4ディーゼルターボ):558万9000円
GT HYBRID4(1.6L 直4ガソリンターボ+前後モーター):614万8000円
GT HYBRID4 Red Nappa(1.6L 直4ガソリンターボ+前後モーター):646万9000円
※上記ラインナップ、車両価格は2022年1月1日から。
プジョー 3008GT HYBRID4 主要諸元
●全長×全幅×全高:4450×1840×1630mm
●ホイールベース:2675mm
●車両重量:1880kg
●エンジン:直4 DOHCターボ+前後モーター
●総排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/6000rpm
●最大トルク:300Nm/3000rpm
●モーター最高出力:前81kW(110ps)/2500rpm、後83kW(112ps)/1万4000rpm、
●モーター最大トルク:前320Nm/500-2500rpm、後166Nm/0-4760rpm、
●トランスミッション:8速AT(e-EAT8)
●駆動方式:4WD
●燃料・タンク容量:プレミアム・43L
●WLTCモード燃費:15.3km/L(ハイブリッド燃料消費率)
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):614万8000円