東京だからこそ、にこだわった心弾むホテル
景色の良さから好んで走るルートがある。レインボーブリッジを通る首都高速11号台場線だ。とくに湾岸線から都心へと向かう上り線からの景色は、迫りくる東京の街々に毎度圧倒され、街の灯が煌めく夜はロマンチックですらある。
世界には景観美や夜景を誇る数々の街があるけれど、東京の景色最高!とさえ思うほどだ。この景色の魅力の源は、林立するビルの迫力だけでなく、街の輝きを引き立たせるかのように佇む穏やかな水辺にもあると感じている。
東京の魅力は語りつくせないが、都心部の水辺のエリアは東京の印象的な景観のひとつだと思う。かつて江戸では水辺に人々が集い仕事も遊びも発展したが、深川や隅田川のほか、ビルや道路の陰に隠れる江戸時代に築かれた運河や掘割のあるエリアにも、その記憶の片鱗が残されているからだ。
その水辺の美しさ、おもしろさを今、再び際立たせているのが、先の首都高11号線起点近くの東京・竹芝エリアだ。2020年、劇団四季の新劇場を含む商業施設「ウォーターズ竹芝」が誕生し注目されている。ここにその印象的な東京の景色を堪能でき、古からの文脈を現代に表現するラグジュアリーなホテルがある。「メズム東京、オートグラフ コレクション」である。
「タレント」と呼ばれるスタッフが極上のおもてなし
最大の魅力はそのロケーションだ。ウォーターフロントを標榜するホテルや施設は数多あるが、徳川家や皇室ゆかりの緑豊かな浜離宮恩賜庭園に隣接するという好立地。ロビーやバーラウンジのある16階から眺める景色は、眼下にその浜離宮を、その先に築地市場跡、隅田川さらには東京スカイツリーを望む。まさに東京を代表する水辺の景色が広がっているのだ。
魅力はホテルのアソビ心にもある。素晴らしい景観を臨む客室には、都心のホテルでは珍しいバルコニー付の部屋も用意され、しかもデジタルピアノを全客室に導入するなど、心地良さだけでなくゲストの五感を魅了する。
サービスも大きな楽しみだ。たとえばスタッフは「タレント」と呼ばれ、ヨウジヤマモト社デザインのモードな制服に身を包み独特な挨拶でゲストを迎える(訪問してのお楽しみに)。珈琲のサーブひとつとっても、東京を代表する珈琲店「猿田彦珈琲」の手ほどきを受けたタレントが、そのオリジナルブレンドをハンドドリップで淹れるといった具合で、演出も実に凝っている。
繊細で華やか、ラグジュアリーさ満点のロビーも、驚きがある。よく見ると伝統的な意匠の中に、スケートボードやベアブリックのフィギュア、村上隆の作品などポップカルチャーを意識したアートピースが置かれている。サービスも設えもいまの日本や東京をさりげなく表現しているのだ。なお、高音質のスピーカーから流れるオリジナルセレクトの音楽や、毎晩開催される音楽の生演奏イベントなど、心地良い聴覚体験にもこだわっている。
江戸時代から続く美しい水辺の景色や記憶とともに、東京であることにこだわった芸術性あるプレゼンテーションはクール。ゲストの感性を粋にそして心地良く刺激してやまない魅力に溢れる。きっと、泊まる度に新しい発見や体験をもたらしてくれるに違いない、心弾むホテルである。(文:小倉 修)