自分たちのいるべき場所に戻ってきた
プレミアムスポーツカーメーカーのマセラティは1926年にレースデビューし、マセラティ兄弟、後に幾多のファクトリードライバーによってその名を馳せたブランドである。参戦当時から優勝を飾り、1957年にはのちに5度のF1ワールドチャンピオンに輝いたことで知られているファン・マヌエル・ファンジオがマセラティでチャンピオンを獲得するなど、名ドライバーがステアリングホイールを握りレースを席巻。しかし、マセラティがフォーミュラレースで最後に姿を見せたのは1958年の250Fだった。
また、近年ではFIA GT世界選手権に2004年〜2010年の期間で参戦し、MC12は計14もの選手権タイトルを獲得。ところが、それから10年以上もモータースポーツの世界から姿を消していたのだ。
そんなマセラティが次に選んだレースの舞台、それが次世代のモータースポーツであるフォーミュラEというわけだ。
マセラティのダヴィデ・グラッソCEOは「私たちはレースの世界の主人公として、自分たちのいるべき場所に戻ってきたことを非常に誇りに思います。マセラティは、情熱を原動力とし、生まれながらにして革新的な存在です。競技の場においても世界レベルの卓越した 結果を達成し続けた長い歴史があり、未来に向かって邁進する準備も整っています」
続けてグラッソCEOは「パフォーマンス、ラグジュアリー、イノベーションを追い求めるマセラティにとって、電動化戦略『フォルゴーレ』は抗しがたい存在であり、マセラティの最も純粋な表現でもあります。だからこそ私たちは、FIAフォーミュラE世界選手権への参戦を決定しました。世界を代表する都市でお客様に直接お目にかかる機会を通じて、マセラティを未来に向けて前進させることを決めたのです」とコメント。
フォーミュラE初のイタリアブランド
マセラティが参戦しようとしている2023年シーズンから、フォーミュラEのマシンは現行モデルである「Gen2」から最新の「Gen3」に世代交代する。Gen3は効率に優れたレーシングカーで最新のデザインや製造工程、技術革新を備えている。
排出ガスをゼロにし、走行音もモーター音のみのフォーミュラEは世界各国の市街地コースでエキサイティングなレースを開催してきた。フォーミュラEで得られた技術や知見はEVのエネルギー効率の向上やバッテリー容量の増大、パワートレーン開発の進化に繋がり、参戦している各メーカーが市販するEVは航続可能距離を伸ばしている。まさに自動車メーカーにとって得るものが大きく、費用対効果も大いに見込める魅力的なカテゴリーなのだ。
これまでフォーミュラEには日本の日産、ドイツのアウディ、ポルシェ、BMW、メルセデス・ベンツ、イギリスのジャガー、フランスのDSオートモービルなど数多くのメーカーが参入してきた。そしてマセラティの参戦で、ついにイタリアンメーカーがグリッドにつくことになる。
モータースポーツと距離を置いていたマセラティが、電動化という新たなつながりによって再びモータースポーツの世界に誘われた。フォーミュラEへの参戦を足がかりに、他のカテゴリーへ参入するのだろうか。今回の発表を「モータースポーツ戦略の第1段階」としていることからも、続報に期待がかかる。