アイス性能を重視する日本の冬に向けて開発
ピレリの新スタッドレスタイヤ「アイス ゼロ アシンメトリコ」は、同社の創立150周年という記念すべき年に、駐日イタリア大使館で発表された。それだけ、この新製品に込められた期待の大きさも感じさせる。
ピレリでは、およそ20年前からスタッドレスタイヤを開発しており、アイス アシンメトリコ(2014年〜)、アイス アシンメトリコ プラス(2019年〜)、そして今回のアイス ゼロ アシンメトリコと、日本の使用環境に合わせて常に改善を続けている。
日本の国土は約60%が積雪地や寒冷地で、しかも日本の人口の約20%が、そうした地域に住んでいる。最近は日本でもオールシーズンタイヤが普及しているが、積雪地や寒冷地ではスタッドレスタイヤを選んだほうがベターだ。
それは、日本の消費者がスタッドレスタイヤに望む最重要な性能は「アイス(氷上)性能」だから。欧米などでは雪上性能が重視されるが、日本ではアイスバーンなど氷上での走行性能が重視される。それゆえ、日本の冬専用に開発されたスタッドレスタイヤが必要になるのだ。
アイス性能を重視したピレリのスタッドレスタイヤは、前述のように製品名に「アイス」が付けられてきた。今回の新製品はアイス性能がトップレンジであることを標榜するため、サマータイヤのトップレンジ「Pゼロ」から「ゼロ」の名を譲り受け、「アイス ゼロ アシンメトリコ」と名づけられた。ちなみに、アシンメトリコとはイタリア語で非対称を意味する。
ドライ路面での高い快適性、静粛性、安定性も確保
アイス ゼロ アシンメトリコのキーテクノロジーは5つある。
1)低ポイドレシオ:接地面に対する溝の割合を低くして接地面積を増加させ、アイスグリップ性能とドライハンドリングを向上
2)新3Dサイプ:接地面圧の向上とトレッド剛性を増加させ、ブレーキング性能とドライハンドリングを向上
3)ダブル サイド to サイド グルーブ:接地面の均等分圧で、スノー&ウエット性能を向上
4)スクエアブロック:ショルダー部の最適化との相乗効果による効果的な接地面を実現し、アイス性能を向上
5)新リキッドポリマー:トレッドコンパウンドの柔軟性で、寿命末期までの性能の維持やアイス&ウエット性能を向上
こうした最新の技術により、氷雪路面における高いブレーキング性能や凍った路面での優れたトラクション性能を実現している。従来品のアイス アシンメトリコ プラスより、アイスグリップ性能は5%、アイストラクション性能は12%も向上しているという。また、雪上での優れたハンドリング性能に加えて、ドライ路面における快適な乗り心地と高いレベルの静粛性も確保している。
アイス ゼロ アシンメトリコは、冬季における安全で快適なドライブのために、降雪地域に住む、コンパクトからミニバン、SUVまでの幅広い車のドライバー向けに設計された。また、都市部に住みながら、ウインタースポーツを楽しむために降雪地域へドライブするユーザーには、自宅と目的地間の移動を安全で快適なものにしてくれる。
導入予定のサイズは、175/65R15から255/45R20まで、合計44サイズ。日本で最近発売された人気車種トップ20のほとんどに対応するサイズを設定しているという。
スーパーカーのようなプレステージ セグメントではOEMで約30%の装着率を誇るピレリだが、今後はスタッドレスタイヤだけでなく、サマー/ウインタータイヤにも日本特有の製品を開発・投入していく。2022年3月に発売されたサマータイヤ「POWERGY(パワジー)」は、その一例だ。国産メーカーが絶対的な強さを誇る日本のタイヤ市場だが、日本に特化した製品を開発するピレリの今後に注目しておきたい。