2022年6月21日、マクラーレン・モータースポーツはカスタマーレーシング向けの競技用車両「アルトゥーラ GT4」を発表した。6月23〜26日に開催されるグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード(イギリス)で一般公開され、その中で行われるタイムド・シュートアウト・ファイナルに出走して、世界に向けて速さをアピールする。
軽量でセットアップの幅が広いMCLAの良さが生きる
マクラーレン アルトゥーラ GT4は、ハイブリッドスーパースーパースポーツ「アルトゥーラ」をベースに開発されたGT4規定のレーシングカー。カーボンファイバー製モノコックをコアとするマクラーレン・カーボン・ライトウェイト・アーキテクチャー(MCLA)など、多くの部分に市販仕様のアルトゥーラのテクノロジーが生かされている。なお、アルトゥーラ GT4は世界中のGTレースで大成功を収めてきた「570 GT4」の後継モデルとなる。
パワーユニットはGT4規定にあわせてハイブリッドシステムが取り外され、バンク角120度の3L V6ツインターボガソリンエンジンのみとなるが、専用にチューニングされたエンジンは厳しく出力が規制されたGT4規定では十分なパワーを生み出す上に、重量面ではハイブリッドやV8エンジンよりもメリットが生まれる。
トランスミッションは市販仕様の8速DCTから7速ギアボックスに変更。パワーユニットのパフォーマンスを最大限引き出すようにセッティングされている。また、サスペンションやエアロダイナミクスはレースでの使用を想定してさらに煮詰められ、グリップ状況に合わせて調整可能なアンチロックブレーキとトラクションコントロールシステムを備える。
レース仕様だからこそ扱いやすさが重要
カスタマーレーシング向けの競技用車両としては扱いやすさも大きなポイントで、コクピットの視界の良さ、操作性の良さ、ドライバー交代時の乗り降りのしやすさなども魅力となりそう。また、ボンネットを脱着式に変更、ウイングを分解せずにリアボディワークを取り外すことが可能とするなど、作業性にも留意して設計されているのがわかる。
さらに、オプションリストには、タイヤ空気圧モニタリングシステム、「V-Box」テレメトリー、衝突回避システム用レーダー、レーザー式ライドハイトセンサー、ダンパーポテンションメーター、ブレーキ赤外線センサーを含む「データパック」、左側に装着する燃料フィラーとエアジャッキランス、耐久レース用として夜間レース用追加ライトとドリンクシステム、サーキット走行用としてパッセンジャー用シートとハーネスも用意されている。
マクラーレン・オートモーティブのモータースポーツ・ディレクター、イアン・モーガン氏は、アルトゥーラ GT4について「マクラーレン・オートモーティブのモータースポーツ部門がゼロから作り上げた2台目のレーシングカーです。革命的な刷新を遂げたアルトゥーラをベースに、570S GT4から大幅な進化を遂げました。アルトゥーラ GT4は、よりいっそう軽量で、極めて精密なハンドリング特性を備え、耐久性も向上しています。さらに、新V6パワートレーンのパッケージングと効率性の高さ、メカニックにとって全面的に優れたメンテナンス性も加わるので、このクラスに新たなスタンダードを打ち立てることでしょう。それは幅広いテストと開発プログラムの中で、すでに確認されています」とコメントしている。
アルトゥーラ GT4は6月23〜26日のグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードで世界初公開され、レースデビューに先駆けて、マクラーレンのファクトリードライバーを務めるロブ・ベルがタイムド・シュートアウト・ファイナルに出場する。ちなみに昨年のグッドウッドでは720S GT3Xでタイムド・シュートアウト・ファイナル優勝を手にしている。
アルトゥーラ GT4の詳細なスペックや価格はまだ明らかになっていないが、マクラーレン・オートモーティブのモータースポーツ部門は「厳しいテストおよび開発プログラムを今後も継続し、カスタマーカーの初参戦となる2023年シーズンに備えます」としている。