卓越した4WDテクノロジーと風洞実験スキルが、ワゴンの走りを変えた
今回のテーマであるスポーツワゴンは、ドイツではかつて「コンビ」(貨物と乗用のコンビネーションと言う意味)と呼ばれ、外回りのセールスマン用の社用車というイメージが強かった。これをアウディは「アバント」と名付け、さらに1994年にはポルシェとのコラボレーションでアバントRS2を誕生させた。
ワゴンボディはノッチのある3ボックスセダンと比べるとリアに渦流が生じ、高速安定性に劣ると言われていたが、アウディは4WDと風洞実験による空力特性の改善でこれを乗り切ったのである。
2002年には今回のテーマである「RS 6」が誕生する。アウディはそれまでA6に自然吸気の4.2L V8エンジンを搭載したS6(290ps)とS6プラス(326ps)をカタログに載せていたが、当時ドイツで勃発したパワーウォーズによってクワトロ社はスタンダードボディのフロント部分を4cm延長してV8の各バンクにターボを装着。450psと560Nmを発生するハイパーモデルを送り出したのである。
今回、カナダにおいて2世代目(C6)、3世代目(C7)に続いて、現行モデル(C8)でのツーリングを楽しむことができた。
スポーティアイコンが目立つ最新バージョンのエクステリア
ツアー最終日には最新RS 6の試乗が待っていた。デジタルデザインのLEDライト、大きく開いたエアインテイクなど内に秘めた狼の正体を隠しきれないスポーティアイコンが目立っていた。
標準仕様の最高速度は250km/hだが、オプションのRSパッケージを注文すると最高速度は280km/hに、セラミック コンポジット ブレーキを装備すれば305km/hまで上昇する。高速道路の法定速度が100km/hのカナダでは宝の持ち腐れだが、その範囲内であれば文字どおりポルシェ911にも匹敵するほどのダイナミック性能を発揮する。
さらにRS 6の大きな魅力は実用性で、驚くべきことにオーナーの25%(グローバル)が牽引フックを注文しているが、こうした芸当はほかのスポーツカーではマネできない。
最近の情報によればアウディは将来的には、奇数が付くモデル、すなわちA3、A5、A7には内燃機関の搭載を継続、HEVあるいはPHEVへと変化する。そして偶数系モデル、A4、A6、そしておそらくA8はすべて電動化、つまりBEVとなって、Q4、Q6、Q8へと進化する。そうなると今回カナダで試乗したRS6は、このシリーズ最後の内燃機関搭載モデルということになる。
ここカナダで有終の美を飾ったRS 6の後継車は、ポルシェ タイカンと同じ800Vシステムを搭載するPPE(プレミアムEVプラットフォーム)をベースにした「Q6 eトロン RS スポーツバック」となるはずだ。(文:木村好宏/写真:キムラ・オフィス)
■アウディ RS 6 アバント(エアサスペンション装着車/日本仕様) 主要諸元
●全長×全幅×全高:4995×1960×1485mm
●ホイールベース:2925mm
●車両重量:2200kg
●エンジン:V8 DOHC ツインターボ
●総排気量:3996cc
●最高出力:441kW(600ps)/6000-6250rpm
●最大トルク:800Nm/2020-4500rpm
●トランスミッション:8速AT
●駆動方式:4WD(クワトロ)
●燃料・タンク容量:プレミアム・73L
●WLTCモード燃費:7.6km/L
●タイヤサイズ:275/35R21
●車両価格(税込):1827万0000円