2022年8月28日、三重県にある鈴鹿サーキットで2022 AUTOBACS SUPER GT Round5 FUJIMAKI GROUP SUZUKA GT 450km RACE決勝が行われ、12号車カルソニックIMPUL Z(ベルトラン・バゲット/平峰一貴)が今季優勝。15番手スタートからの大逆転劇を演じてみせた。

初めて行われる鈴鹿での450kmレース

今シーズンのスーパーGTにおいて鈴鹿でレースが行われるのは第3戦以来2回目となるが、今回は150km増の450kmでのレースとなる。これにより今回の第5戦ではピットインに関して最低2回の給油義務が定められた。しかし『最低2度の給油義務』と記載されているため、給油のみでドライバーが2スティント連続で走る『ダブルスティント』も可能となる。

8月27日に行われた予選では日産のエースである23号車 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)がポールポジションを獲得した。一方、前戦富士で復活の兆しをみせていた12号車がまさかの15番手からのスタート。予選を担当した平峰はミスを犯すことなくアタックを完遂した為、ショックが大きかったという。

画像: ポールポジションから好スタートを切った23号車を好調の17号車と16号車が追う。

ポールポジションから好スタートを切った23号車を好調の17号車と16号車が追う。

77周の決勝レースは気温は28度、路面温度は39度というコンディションの中スタート。12号車のスタートドライバーはバゲットが担当。後方からのスタートということもあり、積極的に順位を上げていくことが求められていたが、オープニングラップではスピンした14号車 ENEOS X PRIME GR Supraを避けるべくコース外に外れてしまい出鼻を挫かれてしまう。それでもバゲットは前を走る37号車 KeePer TOM'S GR Supraをパス。フロントタイヤがタレてくる中、第1スティントをできるだけ引っ張る作戦を実行するべくバゲットが力走。

12号車は33周目に同じく第1スティントをひっぱる作戦をとっていた39号車DENSO KOBELKO SARD GR Supra と同時に1回目のピットストップを行い、13位でコースに復帰する。厳しい展開かと思われたが、このファーストスティントをひっぱる作戦が勝敗を大きく分ける事になる。

画像: 16号車の第2スティントを担当する大湯がレース中盤はトップを力走する。

16号車の第2スティントを担当する大湯がレース中盤はトップを力走する。

レースの折り返し地点、38周経過時での順位は、トップに16号車Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT、2位に38号車ZENT CERUMO GR Supra、以下23号車、17号車Astemo NSX-GT と続く。ほどなくして41周目に23号車、3位へと上がった17号車も48周目に2度目のピットへと向かった。

すべてを引き寄せた12号車が14台抜きの離れ業で大逆転優勝

12号車の第2スティントは平峰が担当し、順位を上げるべく果敢に攻めていく。そんな中49周目の130RでGT300クラスのマシンがクラッシュしSC(セーフティカー)が出動する。このタイミングでセクター3を走っていた12号車はこの周終わりで2回目のピットストップを行った。それ以降はSC解除までピットに向かうことは許されないため、このタイミングでピットストップを行った12号車と39号車にとっては願ってもない展開となった。一方、まだ2度目のピットストップを完了していないトップ走行中の16号車にとっては、優勝のチャンスを逃すSC導入となってしまった。

2度のピットストップを終えた中でのトップは17号車、39号車が2位、3位の23号車を挟み12号車は4位と、SC直前のピット義務消化により大幅に順位を上げレースは55周目にリスタートする。60周目に暫定トップを走行していた16号車が2度目のピットへ向かうと、これで名実ともに4番手となった12号車平峰は勢いづき23号車、そして39号車をパスし2位に浮上。しかし57周目の130Rでラインを乱し、背後についていた23号車に抜き返されてしまう。

画像: レース最終盤までトップを走り続けた17号車。

レース最終盤までトップを走り続けた17号車。

平峰は再び23号車を駆る松田に迫るも65周目の立体交差で平峰は松田に右の芝生に押し出され、芝や砂利を拾ってしまう。後にこの行為がペナルティに該当すると判断された23号車にドライブスルーペナルティが科された。これにより2位に上がった12号車は先頭を走る17号車を追いかけていく。

このまま17号車の優勝かと思われたが、残り10周を切ったあたりから17号車のペースが遅くなっていく。17号車と12号車の差はみるみる縮まっていき残り3周で12号車がトップに浮上。12号車はそのままトップのままチェッカーフラッグを受け、なんと最後尾15番手スタートからの大逆転勝利となった。

2位には惜しくも優勝を逃した17号車。実は17号車の給油口にトラブルがあり、2回目のピットストップで十分な燃料が入っておらず最後はガス欠状態となっていた。それでも塚越の巧みなドライビングにより2位を死守、悔しい2位だが大健闘と言っていいだろう。3位には12号車と同じく作戦を決めた39号車が入っている。

画像: 速さと強さに加え完璧にストラテジーが決まり、そして運も引き寄せた12号車が予選15番手から優勝という第逆転劇を演じた。

速さと強さに加え完璧にストラテジーが決まり、そして運も引き寄せた12号車が予選15番手から優勝という第逆転劇を演じた。

大逆転を可能にする考え込まれた戦略

12号車の大逆転を可能にした49周目の2度目のピットストップ。幸運と思えるタイミングだったが、インパルチームはすべてを見越していたという。だからこそ第1スティントをできる限り引っ張っていたのだ。さらにアクシデントが発生した場合、セクター3を走っていればピットインすることが可能であるという計算もできていたといい、まさに作戦通りにことが運んだ結果となった。

画像: 2021年9月のSUGOラウンド以来、久々の優勝となった12号車。ベルトラン・バゲッドにとっては日産に移籍して初の優勝となった。

2021年9月のSUGOラウンド以来、久々の優勝となった12号車。ベルトラン・バゲッドにとっては日産に移籍して初の優勝となった。

しかし23号車の幅寄せによりラジエターに芝生が詰まり、マシンに支障が出ていたため、厳しい状況でもあった。みすみす優勝を逃すわけにはいかない、勝ちに拘る名門の選択肢は「いく」しかなかった。茂木で行われたスーパーフォーミュラでもチームオーダーを出さず、激しい同門対決を繰り広げたインパル。優勝、そしてチャンピオンに対する執念がGTでも見事な優勝に導いた形となった。

これで一躍ランキングトップに躍り出たインパル。次戦はウエイトが重なり厳しい戦いとなるが、勢いに乗ったカルソニックブルーは間違いなく今シーズンの主役として残り3レースを盛り上げてくれるに違いない。(PHOTO:井上雅行)

2022年スーパーGT 第5戦決勝 GT500結果

画像: 12号車は第4戦富士の2位、そして今回の優勝でポイントランキングトップに躍り出た。

12号車は第4戦富士の2位、そして今回の優勝でポイントランキングトップに躍り出た。

1位 12 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット) 77周
2位 17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)+7.542s
3位 39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)+7.747s
4位 3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)+8.257s
5位 23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)+13.747s
6位 16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT(笹原右京/大湯都史樹)+33.508s
7位 19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)+48.668s
8位 37 KeePer TOM'S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋)+49.750s
9位 36 au TOM'S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ)+1'27.350s
10位 24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)+1'30.122s

2022年スーパーGT GT500 ドライバーズランキング

1位 12 カルソニック IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)44.5
2位 37 KeePer TOM'S GR Supra(サッシャ・フェネストラズ/宮田莉朋) 34
3位 3 CRAFTSPORTS MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)34
4位 17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)34
5位 14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)30
6位 39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)27
7位 36 au TOM'S GR Supra(坪井翔/ジュリアーノ・アレジ)23.5
8位 100 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)23
9位 23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)22
10位 8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)21

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