自然との一体感を味わうクルマに、フロントガラスは必要なし
ルーマニアの「DACIA(ダチア)」は、日本人にはなじみが薄いものの1966年から自動車産業に関わってきた、歴史ある自動車メーカーである。現在はルノー傘下となり、そのコンポーネンツを使ったオリジナルのクルマ作りに取り組んでいる。クロスオーバーSUVの「Duster(ダスター)」など、欧州で人気のモデルもある。
そんなダチアが、新しいブランドイメージを提案するのが「マニフェスト コンセプト」だ。スタイリングは、アウトドアユースにおける頑丈さ、信頼性の高さというかねてから定評ある強みを、近未来テイストでアレンジしたもの。「活動する世界観のリミットを拡大し、クルマと人と自然をつなぐ」ツールとしての理想形を、追求しているという。
4輪駆動、大らかな乗り心地、巨大な車輪、そして過酷な地形でも音を上げない屈強なボディなど、オフロード走行に必要なさまざまなエッセンスを磨き抜いている。ドアも窓もフロントガラスすらもない理由は、とことん自然に没入するためだとか。
幸いなことに室内は防水仕様となっており、ウオータージェットで丸ごと汚れを洗い流すことができるから、多少の砂嵐や暴風雨、泥水を浴びたりしてもたぶん安心だ。ある意味、とことん自然へのストレスを低減する仕様ということで、パワートレーンはもちろん完全電動化。バッテリーは取り外しが可能で、屋外ではエネルギー源として活躍してくれる。
なぜか1灯しかないLEDヘッドランプ。とあるシーンで大活躍?
どちらかと言えばワイルド一辺倒かと思いきや、マニフェスト コンセプトは今どきのアクティブビークルらしく、「次世代コネクト系」へのアプローチも忘れてはいない。ダチア独自のシンプルで効果的で経済的な「Bring-Your-Own-Device」により、スマートフォンをダッシュボードとオンボードコンピュータに完全に統合することができる。
「アイデアの実験室」には「あったらいいな」的なアイテムも提案されている。たとえば、取り外し可能なシートカバーは、「瞬く間に」寝袋になるそう。ヘッドランプはLEDを配した丸形ユニットがひとつしか装備されていないが、実はこれ、着脱が可能。野外活動では強力なトーチランプとして使えるというから面白い。
ことほどさようにマニフェスト コンセプトの本質には、「いかに遊びまくるか」という裏テーマが貫かれているような気もする。とはいえそんなダチア流アクティビティ感覚を日本で試してみることができないのは、少しばかり残念ではある。