2022年10月30日、全日本スーパーフォーミュラ選手権最終戦が三重県の鈴鹿サーキットで開催され、野尻智紀(TEAM MUGEN)が有終の美を飾った。2位に大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)、3位には宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)が入っている。n

最終戦で見た王者の本気

2022年10月29日に行われた第9戦にてドライバーズとチームの両タイトルが決定し、最終戦は各々来シーズンを見越し自身の速さを証明するために各所で激しいバトルが展開された。その中でも輝いたのは、やはり連覇を決めた野尻だった。

野尻は予選から速さをみせ、見事ポールポジションを獲得。スタートでは抜群の加速を決めトップで1コーナーに侵入。一方2番手スタートで優勝を狙っていた宮田がスタートに失敗し4位までポジションを落としてしまう。2位に大津弘樹が、3位に笹原右京(TEAM MUGEN)がそれぞれ順位をあげる。

トップ集団が2コーナーを抜けてS字に差し掛かるところでいきなりアクシデントが発生。オープニングラップの1コーナーで福住仁嶺(Three Bond Drago CORSE)がクラッシュし早くもSC(セーフティカー)が出動することとなった。

画像: オープニングラップから激しい戦いが見れた2位争いだっただけに、レース序盤の接触が悔やまれる。

オープニングラップから激しい戦いが見れた2位争いだっただけに、レース序盤の接触が悔やまれる。

2周目の終わりにSCのランプが消え、3周目からレースはリスタートとなった。しかしリスタート直前のシケインで3位につけていた笹原がスローダウン。リスタートが出遅れて5位まで順位を下げてしまう。一方トップの野尻は唯一1分39秒台をマークし早くも2位以下に差をつけていく。

11周目にピットストップが可能になると、第9戦同様、各車ミニマムの周回数でピットインを敢行。5番手につける笹原を先頭に多くのドライバーがピットストップを行い、アンダーカットを狙ってアウトラップを消化していく。

翌12周目、2位の大津、そして坪井翔(P.MU/CERUMO・INGING)がピットイン。2台ともピットストップ組のトップである笹原の前でコースに復帰、坪井はアウトラップながらも笹原の猛攻を凌ぎきり順位を上げることに成功した。

しかし笹原はなおも攻め続け、シケインで両者接触。笹原はフロントにダメージを負い緊急ピットインを余儀なくされた。

トップの野尻をはじめ、数台がまだピットストップ義務を終えていない中、13周目のシケインで松下信治(B-Max Racing Team)がジュリアーノ・アレジ(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)と接触してクラッシュ。これにより再びSCが出動。このタイミングでトップの野尻、2位の宮田がピットインを行い、順位を落とすことなくコースに復帰する。

松下の車両が撤去され、18周目に2度目のリスタートが切られた。SCによって2度もマージンを失った野尻だが、この2度目の再スタートでもダッシュを決め、2位以下に付け入る隙を与えない。速いラップタイムをコンスタントに刻み続け、気づけば2位に約7秒もの大差をつけてトップチェッカーを受けた。

画像: 第9戦までは「強さ」を、最終戦で「速さ」をみせてくれた野尻。

第9戦までは「強さ」を、最終戦で「速さ」をみせてくれた野尻。

チャンピオン獲得のため、常にリスクについて考え、ポイントを獲ることを意識して戦った2022年の野尻。チャンピオンを決めた今、純粋に自身のスピードを表現することができた野尻は、チャンピオンにふさわしい圧倒的な速さを見せつけた。

2位には大津が入り今シーズン初表彰台を獲得、3位には2番手スタートの宮田が入っている。ドライバーズランキングで同ポイントで並んでいたサッシャ・フェネストラズ(KONDO RACING)と平川亮(carenex TEAM IMPUL)は直接対決を制し4位に入ったフェネストラズに軍配が上がった。

スーパーフォーミュラは次世代へ

2022年シーズンは国内トップフォーミュラカテゴリーが節目の50年にあたる年でもあった。例年通りハイレベルなバトルが繰り広げられたわけだが、今年は「SUPER FORMULA NEXT50」という次の50年に向けたプロジェクトがスタートした年でもある。

同カテゴリーに参戦するトヨタとホンダのライバル2社がタッグを組み、脱炭素社会に貢献すべくテストカーを走行させるなどの実証実験を開始。カーボンニュートラルに対応する次世代のフォーミュラカーの開発、また、新たな観戦の形として開発されたディタルプラットフォーム「SFgo」も登場し、今後に向けた活動がより活発化した1年となった。

コロナウイルスの感染が落ち着きをみせつつあるため、来年はさらに有望な海外勢の参戦を予想されている。選手権の活性化とレベルアップが見込まれ、世界に向けてスーパーフォーミュラがドライバーにとって魅力的な選択肢であることも今後さらに広まっていくはずだ。

さらに今後に向けて開発や運営面でもさまざまなジャンルの専門家や企業が手を組み新しい時代に向けて動きはじめている。来年以降も楽しみの多いスーパーフォーミュラ、ドライバー人事も含めて今から楽しみである。(写真提供:日本レースプロモーション)

画像: ホンダエンジン搭載の通称『白寅』(手前)とトヨタエンジン搭載の『赤寅』(奥)。Ⓒ横浜ゴム

ホンダエンジン搭載の通称『白寅』(手前)とトヨタエンジン搭載の『赤寅』(奥)。Ⓒ横浜ゴム

2022年 スーパーフォーミュラ最終戦戦 決勝結果(上位10名)

画像: 連覇を果たした野尻と無限チーム。ここ数年で最も強力なパッケージと言えるのではないだろうか。

連覇を果たした野尻と無限チーム。ここ数年で最も強力なパッケージと言えるのではないだろうか。

1位 1 野尻智紀(TEAM MUGEN) 31周
2位 6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+6.857s
3位 37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)+8.000s
4位 4 S.フェネストラズ(KONDO RACING)+10.549s
5位 20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)+13.862s
6位 64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)+14.803s
7位 65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)+18.707s
8位 55 三宅淳詞(TEAM GOH)+31.953s
9位 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)+32.799s
10位 7 小林可夢偉(KCMG)+33.017s

2022年 スーパーフォーミュラ ドライバーズランキング(最終戦終了時点)

1位 1 野尻智紀(TEAM MUGEN)154
2位 4 S.フェネストラズ(KONDO RACING)89
3位 20 平川亮(carenex TEAM IMPUL)87
4位 37 宮田莉朋(Kuo VANTELIN TEAM TOM’S)64
5位 5 牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)61
6位 15 笹原右京(TEAM MUGEN)57
7位 19 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)43
8位 65 大湯都史樹(TCS NAKAJIMA RACING)43
9位 6 大津弘樹(DOCOMO TEAM DANDELION RACING)33
10位 64 山本尚貴(TCS NAKAJIMA RACING)32

2022年 スーパーフォーミュラ チームランキング(最終戦終了時点)

1位:TEAM MUGEN 187
2位:carenex TEAM IMPUL 126
3位: KONDO RACING 99
4位:DOCOMO TEAM DANDELION RACING 91
5位:TCS NAKAJIMA RACING 67
6位:Kuo VANTELIN TEAM TOM’S 59
7位:TEAM GOH 44
8位:P.MU/CERUMO・INGING 34
9位:B-Max Racing Team 21
10位:KCMG 19

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