スタッドレスを意識させない自然な乗り味
スタッドレスタイヤがここまで進化するとは思ってもみなかった。そんな印象を持ったのが2021年に登場したブリヂストン ブリザックVRX3だ。アイス、スノー、ドライ、ウエット路面での高いハンドリング性能を備え、パターンノイズ、ロードノイズ、振動、乗り心地などの快適性も満足できるまでに進化した。
スタッドレスタイヤの歴史はスパイクタイヤが禁止になってから始まったが、当初はアイス路面をゴムだけでグリップさせるのは技術的に難しかった。アイス路面でグリップするためにはタイヤと氷の間の水膜を除去しなければならないからだ。そこでブリヂストンはゴムの中に気泡を入れた発泡ゴムを開発。さらにゴムが擦り減っても新しい気泡が現れて水膜を除去できるようにすることで氷上でのグリップ力を得たのだ。
さらにVRX3では、気泡の形状を縦長にして毛細管現象を最大限利用した水膜除去ができる新しい発泡ゴムを採用。これによりアイス路面でのグリップを飛躍的に発揮できるようになった。その分トレッドパターンの剛性も高められ、ドライやウエット路面でのハンドリング性能も向上させることができた。
そして2022年には販売台数の多いSUV向けの12サイズも追加してVRX3を選択できる車種が増えた。基本的なスペックは既存サイズと同じだが、開発テストにはもちろんそのサイズに適応するSUVを使ったという。そして今回は、トヨタ ヤリスクロスとプリウスで既存サイズを、アウディQ5でSUV用サイズを試した。
まずはブリヂストンイノベーションパーク内にあるラボ用のテストコース「B-モビリティ」で走りはじめると、各車やや湿った舗装路をしっかりしたハンドルの手応えとグリップを感じながら走ることができた。何も知らずに走ったらスタッドレスタイヤとは気づかないほど自然だ。
アイススケートリンクでは直径8mの円ふたつを8の字で回るコースと、直線ブレーキを試した。氷上なので当然アクセル、ブレーキ、ハンドルの操作が大き過ぎれば滑るが、グリップ限界を超えても滑り出しは急ではなく、穏やかな滑り方で回復力もあるので狭いリンクの中でも安心感があった。
市街地走行はプリウスとヤリスクロスで試したが、夏タイヤとの差を感じなかった。乗り心地が
しっかりしているのも安心感に繋がる。やはりVRX3は凄い!(文:こもだきよし/写真:井上雅行)