最近、ウクライナ紛争でにわかに注目を浴びている、M1 エイブラムス戦車。当Webモーターマガジンで以前に連載して人気を博した「モンスターマシンに昂ぶる」をプレイバックして、そのメカニズムを紹介しよう。(記事の内容は、2018年4月当時のものです)

ガスタービンエンジンを搭載したM1エイブラムス

画像: 前部のガスタービン主機は、かなり小型軽量。左が前で、吸気系タービン・燃焼ブロックとメインタービン。茶色い大きな筒が高圧排気ガスの熱交換機になっている。吸気/圧縮/燃焼/排気がブロック毎に分割される。

前部のガスタービン主機は、かなり小型軽量。左が前で、吸気系タービン・燃焼ブロックとメインタービン。茶色い大きな筒が高圧排気ガスの熱交換機になっている。吸気/圧縮/燃焼/排気がブロック毎に分割される。

火力と装甲は割愛するが、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことだ。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなる。

吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長がある。

■小型軽量・高出力。
■高品質の燃料を必要としない。ジェット燃料・軽油・ガソリンとも使用可能。
■振動・低周波騒音が少ない。
■過給機・冷却補器類が不要。
■オーバーホール期間が長い。

このように航空機や船舶に最適な理由で、前回も紹介したレシプロエンジンに代わったわけだ。また、米軍は伝統的に武器装備や燃料の共有化と互換性を重視しており、M60の前期型まで戦車もガソリンエンジンだった。航空機や艦船でガスタービンエンジンが一般化すれば、同じ燃料が戦車にも供給できる理屈になる。

しかし、常時タービンを回す(駐車待機時は、補助の小型ガスタービンエンジンを作動して車内電力を確保している)ため、毎時約45Lもの燃料を消費し、小型軽量化されてもバカ食いする燃費のため、第3世代ディーゼル戦車の2倍もある巨大な燃料タンクで相殺されてしまった。

ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣るが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされている。もちろん駆動系がもてばの話だ。

バージョンアップの度に追加装備が増え、現在は64トン弱もあるが、これはドイツのレオパルド2も同じ。むしろ両者とも40年間更新しながら配備されていることが、最強伝説といえる。(文 & Photo CG:MazKen)

画像: 取り外されたハネウェルAGT1500 パワーパック。左端のエアインテークが切れているが、左半分(前側)がガスタービン主機。右半分は変速機ユニットと大きな排熱ユニットが占める。円形の駆動軸が見えている。

取り外されたハネウェルAGT1500 パワーパック。左端のエアインテークが切れているが、左半分(前側)がガスタービン主機。右半分は変速機ユニットと大きな排熱ユニットが占める。円形の駆動軸が見えている。

ハネウェル AGT1500 パワーパック概要

●型式:ターボシャフトガスタービン
●最大出力:1500hp/3000rpm
●変速機:アリソン製 4速AT
●最大速度:約67km/h(整地)
●燃料:JP-8 ジェット燃料、軽油、ガソリン
●参考燃費:約425m/L(整地)
●燃料タンク容量:約1892.7L(500米ガロン)

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