ガスタービンエンジンを搭載したM1エイブラムス
火力と装甲は割愛するが、M1の最大の特徴は機関にガスタービンエンジンを採用したことだ。ガスタービンはジェットエンジンの派生形。航空機ではお馴染みの機関で、吸気タービンの前にシャフトを出しプロペラを装着すればターボプロップ。排気タービンの後方にシャフトを出せば、ターボシャフトエンジンとなる。
吸気-圧縮-燃焼-排気を行程ではなくブロックで行う構造があり、次の特長がある。
■小型軽量・高出力。
■高品質の燃料を必要としない。ジェット燃料・軽油・ガソリンとも使用可能。
■振動・低周波騒音が少ない。
■過給機・冷却補器類が不要。
■オーバーホール期間が長い。
このように航空機や船舶に最適な理由で、前回も紹介したレシプロエンジンに代わったわけだ。また、米軍は伝統的に武器装備や燃料の共有化と互換性を重視しており、M60の前期型まで戦車もガソリンエンジンだった。航空機や艦船でガスタービンエンジンが一般化すれば、同じ燃料が戦車にも供給できる理屈になる。
しかし、常時タービンを回す(駐車待機時は、補助の小型ガスタービンエンジンを作動して車内電力を確保している)ため、毎時約45Lもの燃料を消費し、小型軽量化されてもバカ食いする燃費のため、第3世代ディーゼル戦車の2倍もある巨大な燃料タンクで相殺されてしまった。
ガスタービンは、加減速のレスポンスこそレシプロエンジンに劣るが、一度パワーに乗ると爆発的で、非常時は約2万2500rpmのタービン軸から3500rpmを出力し、100km/h走行も可能とされている。もちろん駆動系がもてばの話だ。
バージョンアップの度に追加装備が増え、現在は64トン弱もあるが、これはドイツのレオパルド2も同じ。むしろ両者とも40年間更新しながら配備されていることが、最強伝説といえる。(文 & Photo CG:MazKen)
ハネウェル AGT1500 パワーパック概要
●型式:ターボシャフトガスタービン
●最大出力:1500hp/3000rpm
●変速機:アリソン製 4速AT
●最大速度:約67km/h(整地)
●燃料:JP-8 ジェット燃料、軽油、ガソリン
●参考燃費:約425m/L(整地)
●燃料タンク容量:約1892.7L(500米ガロン)