実現不可能と言われた動態保存戦車の里帰りを実現
九五式軽戦車は、1935年(皇紀2595年)から制式採用された、日本で史上最も多く製造された旧日本陸軍の戦車だ。「NPO法人 防衛技術博物館を創る会」は、国産機械産業の歴史遺産として九五式軽戦車を里帰りさせる活動をしてきたが、2度にわたるクラウドファンドで多くの支援者と多額の寄付金を集め、実現不可能とまで言われた動態保存戦車の里帰りを実現させた。
お披露目会は御殿場特有の濃霧が立ち込める中、東北や近畿・北陸地方などからも、600人を超える支援者が朝早くから駆けつけた。
最初にプロジェクト代表理事であり、自ら軍用車両レストアの職人として有名な小林雅彦氏が、ここに至る困難な経緯説明とその意義を熱く語り、帰国に際しての神事が行われた。開会式が済むと快晴となり、富士を背景に九五式軽戦車の走行展示となった。
80年もの時を経た車両とは思えない疾走ぶり
会場には、ミクロネシア連邦ポンペイ島での鹵獲から複雑な経緯を経て帰国した、動態完全復元の九五式軽戦車の4335号車に加え、同戦車のプロップ(映画用動態レプリカ)車両、そして国産初の小型四駆である「くろがね四起(九五式小型乗用車の動態完全復元)」の3両が展示された。いずれも小林氏の手がけた車両で、軍用車マニアが垂涎の旧陸軍車両が一挙の走行展示会となった(くろがね四起はエンジン不調で展示のみ)。
参加者全員のカウントダウンで、総排気量14300cc・最高出力110hpの空冷 直6ディーゼルエンジンは実に滑らかに始動し、心地良い排気音をたてながら小型(それでも空車重量は6.7トン)の車体は軽快に走行を開始した。最高速度は40km/hというのが納得できる疾走ぶりで、旋回性も良く建機とは段違いの機動力を見せてくれる。
来賓や学生を戦車長席に載せた試乗走行で何度も特設コースを往復するが、歴史的遺産であることを忘れるほど、タフな修復であることに関心した。
今後はこれら機械産業遺産を最良の状態で保管・公開できる博物館の建設と、一輌でも多くの国産陸軍車輌の帰国を目指すプロジェクトを継続する。このプロジェクトは引き続き支援者を受け付けているので、興味のある人は募集サイトを覗いてみて欲しい。(文と写真:MazKen)