スタート前に痛恨ペナルティ、優勝候補のタナックに不運
大観衆が待ち受ける地元戦、しかもスタート順もトヨタ勢より有利と優勝候補に挙げられていたオィット・タナック(Mスポーツ・フォード)がまさかの不運に泣いた。
7月20日に行われたラリー前のシェイクダウンテストで、フォード・プーマがエンジントラブルに見舞われスタート前にエンジン交換を強いられることになったのだ。レギュレーションではラリースタートまでならエンジン交換が許されているが、ラリー前の車検後の作業となるため5分のペナルティが課される。これでタナックは戦う前に優勝争いから脱落。同日夕刻からスタートしたラリーの序盤ではベストタイムを連発して追い上げたものの、8位まで挽回するのが精一杯だった。
タナックの脱落で金曜日をリードしたのはヌーヴィル。SS4までに2番手のロバンペラに6.8秒差をつける快走で、ヒョンデの好調を印象付けた。
しかし、金曜日午後のリピートステージ、時折雨もパラつくコンディションで展開は一変する。先頭スタートのハンデが薄まったロバンペラが、SS5、SS6で連続ベストをマークし、一気に首位を奪ったのだ。
ヌーヴィルも粘って3.0秒差で土曜日を迎えたが、SS12で痛恨のスローパンクを喫してその差は一気に20秒に拡大。ロバンペラはその後もペースを緩めることなく、結局この日の9SSすべてでベストタイムを連発する圧巻の走りで優勝争いに決着をつけた。
序盤の苦戦をしのいで逆転勝利、ロバンペラが選手権独走へ
日曜日も最終パワーステージを含むすべてのSSでベストタイムを奪ったロバンペラは、ヌーヴィルとの差を52.6秒に広げてフィニッシュ。シーズン2勝目を挙げた。
これでエストニアでは3連勝となったロバンペラは、「ここはカレンダーの中でも大好きなラリーだから、選手権のリードを広げるために重要なラリーだと思って臨んだ。オィットと戦えなかったのは残念だけど、素晴らしい車のおかげで勝てて嬉しい」と貫禄のコメント。ドライバーズ選手権ポイントは170点となり、ランキング2番手のチームメイト、エルフィン・エバンスに55点差をつけて独走状態となっている。
次戦第9戦ラリー・フィンランドは、8月3日〜6日、ユバスキラを起点に開催される。ラリー・フィンランドはWRCを代表するハイスピード・グラベル(未舗装路)イベントとなる。(文:新村いつき)
2023年 WRC第8戦ラリー・エストニア 結果
1位:K.ロバンペラ(トヨタ GRヤリス ラリー1)2h36m03.2s
2位:T.ヌーヴィル(ヒョンデ i20N ラリー1)+52.6s
3位:E.ラッピ(ヒョンデ i20N ラリー1)+59.5s
4位:E.エバンス(トヨタ GRヤリス ラリー1)+1m06.7s
5位:T.スニネン(ヒョンデ i20N ラリー1)+2m21.0s
6位:P.ルイ・ルーベ(フォード プーマ ラリー1)+3m09.9s
7位:勝田貴元(トヨタ GRヤリス ラリー1)+3m10.2s
8位:O.タナック(フォード プーマ ラリー1)+6m25.5s
9位:A.ミケルセン(シュコダ ファビア RS ラリー2エボ)+9m54.1s
10位:S.パエリ (シュコダ ファビア ラリー2エボ)+10m03.8s
2023年 WRCドライバーズランキング(第8終了時暫定)
1位 K.ロバンペラ(トヨタ) 170
2位 E.エバンス(トヨタ)115
3位 T.ヌーヴィル(ヒョンデ))112
4位 O.タナック(Mスポーツ フォード)104
5位 S.オジェ(トヨタ)98
6位 E.ラッピ(ヒョンデ)87
・・・・・・
8位 勝田貴元(トヨタ)41
2023年WRCマニュファクチャラーズランキング(第8戦終了時暫定)
1位 トヨタ 331
2位 ヒョンデ 274
3位 Mスポーツ フォード 195