シリーズ史上もっとも過激なモデルが登場
2022年1月にマイナーチェンジされたA110シリーズ。その後、ジャン・レデレ、ツール・ド・コルス75といった限定モデル、そして11月にこのA110Rが日本でも発表され、同年月から購入申込みが開始された。
その勢いをさらに加速させるかのように、23年4月にはA110Rの第2ロットの受注を開始。5月には限定車のサンレモ73、7月にはA110Rル・マン、エンストン・エディションと限定車を発表した。継続的にモデルを追加することでブランドの存在感を高めているのがいまのアルピーヌだ。
今回は貴重なA110Rに試乗する機会に恵まれた。このモデルを簡単に説明すると、A110の持つパフォーマンスを最大限に引き上げたシリーズの中でもっとも「ラディカル(=過激)」なモデル。サーキット走行を主とし、ハンドリングの正確性と高速域でのスタビリティ向上に注力される。
そのため専用チューニングしたシャシを採用し、ボディには軽量化と空力のためにカーボンファイバー素材のパーツを多用する。車両重量はA110 のベースモデル(1110kg)よりも軽量な1090kgまで軽量化されている。
この軽量化の内訳だが、具体的にはボンネット、ルーフ、エアロパーツのカーボン化で6.6kg。さらにリアウインドウやエンジントポジションとミラーを調整しようとすると、ルームミラーがない。リアウインドウではなくカーボン製のフードで覆われているから、ルームミラーによる後方確認は不可能なのだ(後退時はバックカメラの映像がモニターに映る)。
GTやSよりもはるかに安定感が高い
本題はその走りだ。走り出せば、約の軽量化の恩恵は大きく、アクセルペダルを踏んだ瞬間から、A110Sとの違いに驚く。
さらに踏み増して速度域が高まっていくと、路面に吸い付くように車体はビタっと安定する。それはコーナリング中も同様で、GTやSよりも遥かに安定感がある。
コーナリングスピードも限界性能も相当高い。それでいてハンドルを切れば、ノーズが鋭く向きを変える。もともとレスポンスの良いA110がさらに敏感になった印象だ。だからハードな扱いは禁物。優しく丁寧に扱えば、穏やかに走らせることができるのだが、その本領を知るためには舞台をサーキットに移す必要がある。
意外だったのは、その乗り心地。想像していたよりもドライバーに優しくて、しなやか。サーキットが主戦場でも、普段苦痛な状況を強いられることはなさそうだ。
徹底した作り込みによってポテンシャルを最大限に引き出し、卓越した走行性能と操る楽しさが存分に味わえるA110R。最高に楽しいピュアスポーツカーだ。(文:Motor Magazine編集部 中村圭吾/写真:井上雅行)
アルピーヌ A110R主要諸元
●全長×全幅×全高:4255×1800×1240mm
●ホイールベース:2420mm
●車両重量:1090kg
●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1798cc
●最高出力:221kW(300ps)/6300rpm
●最大トルク:340Nm/2400rpm
●トランスミッション:7速DCT
●駆動方式:MR