コースオフ後の明暗、エバンス、力尽きる
ドイツ南部の都市パッサウに置かれたサービスパークを起点に、チェコ、オーストリア、ドイツの3カ国のステージで開催されるセントラル・ヨーロピアン・ラリー。すでにマニュファクチャラーズ選手権は前戦ラリー・チリでトヨタに決し、残るドライバーズ選手権の行方に注目が集まった。
ラリー序盤の木曜日・金曜日はプラハでのセレモニアルスタートからチェコのステージを走る構成。天気予報どおりのウエットコンディションとなり、先頭スタートの有利さを活かしてランキング首位のロバンペラが首位に立つと、後続のドライバーたちは路面に掻き出された泥や小石に苦戦を強いられることになった。
選手権争いを最終戦のラリー・ジャパンに持ち越すためには、ここでロバンペラより多くのポイントを獲得するしかないトヨタのエルフィン・エバンスは、SS8を終え、ロバンペラに47秒以上の差をつけられてチェコでのステージを終えた。
舞台をオーストリアとドイツのステージに移した土曜日、晴れ間こそ覗きかけているものの路面はまだウエットの部分が多く、ドライバーたちにとっては危険なコンディションには変わりない。
ラリーが大きく動いたのは、この日ふたつ目のステージとなるSS10。首位安泰かと思われたロバンペラが、濡れたままの路面のセクションでコースアウトを喫したのだ。しかし幸いGRヤリスはどこにもぶつけることもなく、大きくタイムを失ったものの、首位のままステージをフィニッシュして事なきを得た。
そして続くSS11のスタート直後、今度はエバンスをアクシデントが襲う。民家が立ち並ぶ中を抜けるセクションでターンインの際にGRヤリスを滑らせてしまったエバンスは、コースアウトして納屋に激突、サスペンションを壊してデイリタイアとなってしまったのだ。悲願の初タイトルにへのエバンスの一縷の望みは実質的にここで絶たれてしまった。
ロバンペラ安全走行でヌーヴィルが逆転勝利
チームからのテキストメッセージでSS11のスタート直前にエバンスのアクシデントを知ったロバンペラは、もしその後のラリーで自らがリタイアして日曜日再走したエバンスがパワーステージポイントを獲得すればタイトルは確定しないため、残りのラリーをクルージングモードで走ることを決断。安全ペースでこのステージをフィニッシュし、首位をヌーヴィルに譲った。
ラリーはそのままヌーヴィルがロバンペラとの差を広げてシーズン2勝目を達成。ロバンペラは2位となって2年連続のタイトルを決めた。
フィニッシュ後のロバンペラは「最高の気分だよ。2023年は2022年よりコンペティションがよりタイトになって簡単じゃなかったけど、タイトルを第1に考えて戦った。最高の環境を用意してくれたチームとサポートしてくれたみんなに感謝したい」と笑顔を弾けさせた。
次戦第13戦(最終戦)ラリー・ジャパンは、11月16〜19日、豊田市の豊田スタジアムを起点に愛知、岐阜エリアのターマックステージを舞台に開催される。(文:新村いつき)