2010年1月、プジョーはロゴマークを一新し、世界に向けて新たなブランド戦略と商品計画を発表した。そしてその第一弾として、2010年5月に日本市場でもプジョー「RCZ」が正式発表され、大きな注目を集めた。市販化は不可能と思われたコンセプトカー「308RCZ」を、見事にほぼそのままの形で実用化したことでも話題となった。プジョーは「RCZ」で市場になにをアピールしたのか。Motor Magazine誌では、2010年秋に上陸が開始されるとすぐに試乗テストを行っている。ここではその時の模様を振り返ってみよう。(以下の試乗記は、Motor Magazine 2010年11月号より)

ショーカーがそのまま街に出て来たようなインパクト

プジョーは新たな成長戦略のもとに力強く前進を始めた。そう実感させられる今日この頃だ。そもそも今年2010年1月8日のこと、プジョーは世界同時に新たなブランド戦略と商品計画をセンセーショナルに発表したが、それがいよいよ具体的な形となって我々の目の前に現れてきた。そのひとつがここで紹介するRCZというわけだ。

RCZのどこがこれまでのプジョー車と違うかと言うと、それはまずロゴマーク。1月8日に発表された新しいタイプを装着した初めての市販車ということになる。そして車名。数字を使わないネーミングは初めてのことだ。

さて、実際のクルマの出来映えはどうかと言えば、それは新生プジョーを象徴するにふさわしい素晴らしいものである。スタイリングから順番に見ていくことにしよう。

RCZは2007年のフランクフルト国際モーターショーに出品されたコンセプトカー、「308RCZ」の市販モデルだが、スタイリングはほぼ踏襲されており、ショーカーがそのまま街に出て来たようなインパクトがある。見どころはいくつかあるが、まずはルーフからリアウインドウへ続く2つのふくらみだ。「ダブルバブルルーフ」と名付けられているが、これによりボディ全体に躍動感を生み、また空力性能向上にも貢献しているという。

さらにAピラーからルーフサイドを通ってCピラーへ続く「アルミナムアーチ」は、スピード感や逞しさを表現しているというが、スタイリングの大きな見せ場になっている。そして、フロントまわりは切れ長の目に大きく開いたエアインテークという、これまでの基本要件は満たしつつも、明らかに従来のプジョー車よりも洗練されたスマートさを感じさせる。

そして、全体的なフォルムはまるでミッドシップカーと思わせるようなプロポーションで、走りのイメージを強調する。また、このフォルム、すなわちパッケージングが見事なのは、機能性を損なっていないという点にもある。

たとえば、トランクルームはリアシートを使っているときで321L、倒したときで639Lもの容量を確保している。ふたり分のゴルフバッグが楽々と収納できるわけだ。この手の2+2シーター、もしくは2シーターモデルで、これだけのトランク容量を確保しているモデルは数少ない。

画像: ショーカーがそのまま街に出て来たようなインパクト

優れたパッケージングが楽しいドライビングに貢献

いよいよドライバーズシートに座ってみるが、ここでもパッケージングの良さを実感する。低めの着座位置でスポーツムードたっぷりなのだが、それでいて前方視界が非常にいい。メーターナセル越しに前を覗き込むような姿勢を強要されるスポーツカーがかつては存在したものだが、そうしたモデルとは好対照、よい姿勢でしっかりとハンドルを握れば、前方には実に良好な視界が開ける。これならばドライビングが楽しくないわけがないと、動き出す前から確信する。

そして、実際に楽しい。まず試乗したのは200psエンジンを積む左ハンドルのMT車。この他、日本へ導入されたのは156psエンジンの右ハンドルAT車だ。考え方としては「200psはMT、156psはAT」というのがまずあり、MTはペダルの配置などから左ハンドルの方がいいという判断だったようだ。また、プジョーファンからも「左ハンドルで」という声が多かったとも訊く。そうした事情があることは理解できるが、右ハンドルのMTも用意して欲しかったというのが正直なところだ。

さて、200ps/MT車の走りは痛快そのものだった。出だしは鋭く、1700rpmからの最大トルクに乗れば、1.6Lエンジンとはとても思えないほどグイグイと加速して行く。このエンジンは、多くのプジョー&シトロエン車に搭載されていて評判のいいEP6DT型の進化バージョンだが、RCZに搭載するに当たって、洗練度を増したようだ。コーナリングは低重心であることの効果が歴然と感じられる。また、着座位置が308より前寄りであることもあり、まるでミッドシップカーのようなフィーリングでコーナーをクリアする。

156ps/AT車は運動性能で200psに見劣りするところはほとんどないと言っていい。逆に右ハンドルのATということで、スポーツドライビングを安心して楽しめると言える。この2モデルは装備もほぼ同じで、違うのはMT車が19インチホイールで、AT車が18インチホイールであることくらいだ。最高出力によるヒエラルキーは存在しないと考えた方がいい。

このRCZに乗ってみて、新時代のプジョーからは目が離せないと確信した。これからが実に楽しみだ。(文:Motor Magazine編集部 荒川雅之/写真:永元秀和)

画像: 優れたパッケージングが楽しいドライビングに貢献

プジョー RCZ LHD 6MT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1845×1360mm 
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1350kg 
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:147kW(200ps)/5800rpm
●最大トルク:275Nm(28.0kgm)/1700rpm 
●トランスミッション:6速MT
●駆動方式:FF
●車両価格:423万円(2010年当時)

プジョー RCZ RHD 6AT 主要諸元

●全長×全幅×全高:4290×1845×1360mm 
●ホイールベース:2610mm
●車両重量:1350kg 
●エンジン:直4DOHCターボ
●排気量:1598cc
●最高出力:115kW(156ps)/6000rpm
●最大トルク:240Nm(24.5kgm)/1400-3500rpm 
●トランスミッション:6速AT
●駆動方式:FF
●車両価格:399万円(2010年当時)

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