この連載では、昭和30年~55年(1955年〜1980年)までに発売され、名車と呼ばれるクルマたちを詳細に紹介しよう。その第46回目は、軽自動車の価値を高めたホンダN360Tの登場だ。(現在販売中のMOOK「昭和の名車・完全版Volume.1」より)

高性能、低価格、広い室内で軽トップの座を得る

それまでの軽乗用車の常識を破る低価格と高出力、高性能で昭和42(1967)年3月に衝撃的なデビューを飾ったのがホンダN360だった。2輪メーカーであったホンダが、小排気量スポーツカーのホンダS500/S600/S800に続いて投入してきた。ただ、 Sシリーズはあくまでも少量生産。そこで本格的な4輪車メーカーへの足がかりを築いたのがこのモデルだ。

画像: 空冷2気筒SOHCエンジンを搭載し、N360Tはツインキャブレターを装備して36psを発生した(写真はシングルキャブ)。最高速115km/hは軽としては出色ものだった。

空冷2気筒SOHCエンジンを搭載し、N360Tはツインキャブレターを装備して36psを発生した(写真はシングルキャブ)。最高速115km/hは軽としては出色ものだった。

空 冷2気 筒SOHC、354cc、 最 高 出 力31psのN360E型エンジンを、ミニ クーパーに似たFF2ボックスのシンプルなスタイルのボディに搭載。広い車室内スペースに加え、最高速115km/h、 0→400m加速22.0秒という当時の軽乗用車のレベルを大きく上回る高性能と、車両価格31万3000円(工場渡し)からという求めやすい設定が大きな話題を呼んだ。

発売2カ月目には、それまで軽自動車のリーダーの座を独占し続けていたスバル360を追い落し、販売トップに躍り出るという爆発的な売れ行きを見せた。そして翌年の昭和43(1968)年9月には、ホンダN360にツインキャブ装着で36psのエンジンを搭載したT、TS、TM、TGのツーリングシリーズ(T)が追加されている。

画像: メカニズムをコンパクトに設計できるFFレイアウト、広いキャビンスペースを確保するため効率がよく合理的な2ボックススタイルの現代的設計だ。

メカニズムをコンパクトに設計できるFFレイアウト、広いキャビンスペースを確保するため効率がよく合理的な2ボックススタイルの現代的設計だ。

このシリーズは、最高速120km/hの高速ツーリングカーであった。ちなみにN360登場当時の軽自動車の最高出力は20 ~ 23psほど、最高速は85~100km/h程度というのが一般的だったから、 N360はまさに軽自動車のハイパワー競争に火をつけた形となり、これにさらに拍車をかけたのがTシリーズであったといえる。このTシリーズの追加で若いユーザーの心もつかみ、エントリーカーとして絶大な支持を得る。

ホンダN360T(N360型)諸元

●全長×全幅×全高:2995×1295×1340)mm
●ホイールベース:2000mm
●車両重量:495kg
●エンジン型式・種類:N360E型・直2SOHC
●排気量:354cc
●最高出力:36ps/9000rpm
●最大トルク:3.2kgm/7000rpm
●トランスミッション:4速MT
●タイヤサイズ:5.20-10-4PR
●新車価格:32万8000円(工場渡し)

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