大衆車から風格のある乗用車への脱皮を目指す
排出ガス規制に苦しみながらもより洗練
昭和48(1973)年5月、日産自動車は「ダットサンサニーシリーズ」のフルモデルチェンジを行った。このフルモデルチェンジによって車両型式は210型となった。
サニーといえばもちろん日産の大看板。先代の110型サニーもライバルのカローラに販売面で差をつけられはしたもののクルマ自体の評価は高かった。メーカーの開発目標は、それまで持っていた豊かさのイメージに、若々しさとダイナミックなイメージを加えた「小型乗用車の風格をもった大衆乗用車」というものだった。
その中でもエクセレント1400クーペGXは、サニーのイメージリーダー的な役割を与えられたグレードとなった。4ドアのセダンに対して、ダイナミックなプロポーションを持つロングフード&ファストバックを特徴とするスタイルとし、大きく開くリアゲートを備えているのがポイントだった。斜め後方の視界を良好にするためのクオーターウインドウや、そこに設けられたエアダクトなども特徴的だ。
エクセレント1400GXに搭載されるエンジンはL14型となった。この1.4L直4 SOHCエンジンは、SUキャブレターの2連装によって最高出力95ps/6400rpm、最大トルク12.2kgm/4000rpmを発生する。
すでにエンジンは先代の110型サニーエクセレントでも採用されており、高回転を駆使してパワーを稼ぐよりも粘りで走るエンジンといえた。もちろん現代の目線で見るとスペック的にはスポーティとは言いがたいが信頼性の高いユニットであることは間違いなかった。
性能的に控えめとなってしまったのは排出ガス規制の対象となるHC(炭化水素)、NOx(窒素酸化物)対策として点火時期の変更などを行ったことも影響が大きい。
パワーを上げるには点火時期の進角により、大きな燃焼圧力を得るのが有効だが、そうすると燃焼温度が高くなり排出ガス規制をクリアできない。それを防ぐためには遅角せざるを得なかったからだ。
トランスミッションは4速MTと5速MTが設定された。当時最先端のトレンドともいえる5速MTは、上級車のバイオレットで使用されていたもので、左下が1速となるレーシングパターンだ。この頃の日産のスポーティカー全部に通じるところだが、これも欧州のスポーツカー的でレーシーな雰囲気を醸し出した。
ボディ構造は、モノコック方式を基本としている。ただ、単に剛性が高いというだけでなく、フロント/リアともに衝突時のエネルギーを吸収するクラッシャブル構造が採用されているのも特徴だ。合わせてコラプシブルステアリングを採用して、衝突時のドライバーの安全性を向上させた。
この時代になると、フロントシートにはシートベルトとヘッドレストも標準装備になってきており、安全意識の高まりを感じさせる。この辺は現代的な設計となっていた。
サスペンションはフロント:ストラット/リア:リーフ・リジッドがの形式を先代サニーから引き続き使用する。すでに旧式なものではあったが、枯れた技術で信頼性は抜群なものがあった。もちろんエクセレントでは、スプリングやショソクアブソーバーの設定を変更することで、操縦性と乗り心地の両方を向上させていた。
サニーエクセレント 1400クーペGXは、当時としては良くできたクルマだったし、若者を中心に一定の支持を得た。ただ冒頭でも書いたようにサニーの目的はあくまでも打倒カローラだった。初代サニーで差を付けられた大衆乗用車の覇権をトヨタから奪うことが悲願でもあった。そのために改良も続けられた。
昭和51(1976)年には一部改良でエクセレント用のエンジンがL14型から1600ccのL16型に変更される。1400ccエンジン車も残されたが、こちらにはOHVのA14型エンジンが搭載されることになる。
翌昭和52(1977)年には1400クーペGL-L、 GX-Lなどのグレードが追加される。これは電動式リモコンミラーなど採用した仕様だ。またエクセレント 1600系にはアルミホイールをオプション設定するなどのドレスアップが図られた。
しかし、210型サニーも販売面ではカローラに勝つことはできず、逆に差が広がっていくことになったのは残念だった。
日産 ダットサン・サニーエクセレント 1400クーペGX(KPB210型)諸元
●全長×全幅×全高:4045×1545×1350mm
●ホイールベース:2340mm
●車両重量:875kg
●エンジン型式・種類:L14型・直4SOHC
●排気量:1428cc
●最高出力:95ps/6400rpm
●最大トルク:12.2kgm/4000rpm
●トランスミッション:5速MT
●タイヤサイズ:6.15-13 4P
●新車価格:71万5000円