低速域でわかる「揺れない」走行安定性
話を聞いたデザイン担当の開発者は「モチーフにしていない」と否定していたが、実車を見れば2000年代のとある人気車種を思い浮かべるのではないか。
8月22日にフルモデルチェンジした軽自動車のスーパーハイトワゴン ルークスは、デザインコンセプトを“かどまる四角”として、ボディシルエットから細かいディテールまでに、四隅を丸くした四角形で構成されている。従来モデルと比較してみると、フロントウインドーとリアガラスを立たせてより垂直に近くして、室内空間の広さを予感させるデザインとしている。
前後のライト類やホイールからも同様のテイストを感じられるが、エクステリアデザインの中でもドアハンドルの窪みはとくに個性的だ。ハンマーやタガネで鉄板を叩いて曲面を作る「打ち出し」のような加工技術が使われて、ここにも“かど”がないのだ。乗るたびに触れる部分だけに、愛着を生むポイントになる。

打ち出し加工のように曲面を付けられた、アウタードアハンドル奥の窪み。「エッジがない」デザインに個性を感じる。
日常域での利便性も大きく向上しており、使いやすさにこだわった収納スペースをコクピットまわりに豊富に配置し、ドアをハンズフリーで開閉できる機能をオプションで用意するなどあったら嬉しい機能を充実させている。
また、ボディをより四角くした効果もあって車内空間はとにかく広く、男性が前後シートに座っても後席乗員は余裕を持って足を組めるほど。ロングスライドを使ってシートアレンジすれば、子どもを連れての長時間移動から、車中泊キャンプまで多目的に活躍するはずだ。
今回日産のテストコース内で行った試乗では、セレナの開発で確立したという「揺れを抑えるボディ剛性やシート形状の性能」を体感した。アイポイントが高いモデルながら、市中に存在するさまざまなアンジュレーションの上を通過しても、頭の揺れが小さく安定している。街中でも高速道路でも、その性能は運転のしやすさや疲れにくさに直結する。

大小の凸凹道からアップダウンのある曲がり道、高速コーナーなどさまざまなロード環境を走ったが、頭部の不快な揺れを感じることはなく、終始安定していた。
軽自動車市場は強い個性を求められると言われるが、その点でデザインで眼を惹くことに成功するだろう。あとは「日産が軽自動車を作っていることを知らない人も多い」という悩みを少しでも解消するためにも名称を付け加えて「キューブ ルークス」としてはどうか。メインターゲットの40代前後のひとであれば、その名にきっとピンとくるはずだ。