文:石橋 寛 写真:RM Sotherbys
▶▶▶写真はこちら|チゼータ・モロダーV16Tの巨大な「V型16気筒エンジン」ほか(画像12枚)
元ランボのドライバーが火付け役
チゼータ・モロダーV16T(CIZETA MORODER V16T)、このクルマの出資者の名前と職業はなんでしょう? 昭和の昔にテレ東で放送していた「スーパーカークイズ」なら、こんな問題になっていたはず。昭和40年代男なら「そんなの余裕! ジョルジオ・モロダー、シンセサイザーアーティストじゃん」と即答でしょう。が、チゼータは日本に上陸したにも関わらず、今となっては思い出す人も少ないはず。ならば、V16というとてつもないエンジンとともに振り返ってみましょう。

6リッターV16エンジンは550ps/55.0kg-mを発揮して、最高速度は328km/h、0-100km/h加速は4.2秒のパフォーマンス。
そもそもチゼータという車名は、創始者にして稀代のメカニックだったクラウディオ・ザンポッリ(Claudio Zampolli)のイニシャル、CZをイタリア風に発音したもの。元はランボルギーニでボブ・ウォレスらとテストドライブや量産試作づくりといった仕事に従事していました。が、1973年のオイルショックでランボが傾くと北米、カリフォルニアにとっとと移住。噂によるとオイルショック以前からランボのクルマづくりや品質に不満を抱いていて、いつか理想のスーパーカーを作りたいと願っていたのだとか。

スタイリングはマルチェロ・ガンディーニ。クラウディオ・ザンポッリとはランボ時代からの仲良しだっと伝えられています。
カリフォルニアでは大金持ちを相手にスーパーカーディーラーをやりつつ、チゼータの構想を温め続けていたクラウディオ。ちなみに、顧客にはエディ・ヴァン・ヘイレンなどロックアーティストもぞろぞろいて、デイブ・リー・ロス脱退後にサミー・ヘイガーをヴァン・ヘイレンに紹介したのはクラウディオだとされています。
そんな縁もあったのでしょうか、大金持ちアーティストだったジョルジオ・モロダーと知己を得たクラウディオは、チゼータの構想を打ち明けて出資を募ったのでした。

チゼータといえば、この上下2段のリトラクタブルライトを思い出すはず。ガンディーニにとっても自信作だった模様。
ウラッコのV8を連結という驚きのアイデア
クラブサウンド好きなら、今でもモロダーの曲がアガることご存じでしょう。1980年代は絶頂期ともいえ、ウハウハだったこと間違いありません。そんな頃、同郷のクラウディオが打ち上げたスーパーカー計画には一も二もなく賛同。ランボ時代に携わったウラッコのV8を連結したV16エンジン構想には飛び上がらんばかりに喜んだと伝えられています。
しかし、16気筒となると縦に積めば車体の全長が長くなり、横に積んでも車幅が広くなってしまうことは明らか。ここに、クラウディオがエンジニアの執念を見せました。全長4443mmに対し、ホイールベース2690mmと比率1.65というピュアスポーツパッケージを実現したのです。同世代のディアブロが1.68(ややリヤオーバーハング長め)、テスタロッサに至っては1.75(前後オーバーハングが長くGT的)という時代ですから、いかにチゼータが理想を追い求めていたかがよくわかる数値でしょう。

ランボルギーニ・ウラッコのV8エンジンを連結という無理筋なV16エンジン。トランスミッションの配置も工夫が凝らされています。
一方で、V16なんて超大型エンジンを載せたために車重は1700kgとライバルたちに比べて100kg以上のビハインドが発生しています。6.0リッターから550psをたたき出しながらも、ウェイトパワーレシオは3.09kg/psと、当時としては標準的。フル加速ではライバルたちの後塵を拝したのかもしれません。

カタログ値の328km/hはついぞ実測されていませんが、メーターはしっかり300km/hスケールを装備しています。
ガンディーニ渾身の2段リトラライト
スタイリングは、これまたランボ時代のコネを使ったのでしょう。ガンディーニがいかにもなスタイリングを作り出しています。V16横置きのために、全幅2060mmというファットボディながら、楔形シルエットによってどこまでもシャープな印象。また、合計4灯となる上下2段式リトラクタブルヘッドライトも新鮮なシステムで、これだけでもチゼータを覚えているという方も少なくないでしょう。

ところが、このスタイルをめぐってクラウディオとモロダーが衝突してしまいます。あくまで理想を追い求めたクラウディオはイタリアの職人によってゼロからアルミをたたき出すことを主張。これに対し、アーティストにして優秀なビジネスマンでもあったモロダーはFRPによる効率的、かつ安価なボディ製作を求めるというぶつかり合い。1988年、ビバリーヒルズでチゼータのプロトタイプが発表された際にはモロダーの名前が連なったものの、その後の量産時に外れてしまったのはこれが原因でふたりが決別してしまったからなのです。

当時のスーパーカーらしく、どこまでもレザートリムがなされたインテリア。背もたれはリクライニングする余裕あり。

当時のスーパーカーらしく、どこまでもレザートリムがなされたインテリア。背もたれはリクライニングする余裕あり。
ちなみに、クラウディオが逝去した後、モロダーはけんか別れを後悔していたこと、クラウディオの理想主義を心からリスペクトしていたことを明かしています。

整備性の向上を謳っていたクラウディオですが、リヤカウルを後ろヒンジ開きにするのは矛盾している気がします。

フロントには深さも容量も実用性が高い荷室が用意されました。ランボ各車の弱点を補う工夫といえるでしょう。

CIZETA MORODER V16T

CIZETA MORODER V16T
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