20年以上前のトヨタ プログレを1年間で1万km走らせても、大きなトラブルはほとんどなし。そんな国産旧車の優等生(?)と暮らす編集部ナカムラが、今回約1カ月間借りたのは、学生時代から憧れていたプジョー406スポーツだった。映画「TAXI」で魅了された406との生活は中古輸入車らしい洗礼の連続・・・。しかし、それを補って余りある「猫足」の乗り味と独特の魅力がそこにはあった。

文: 中村圭吾/写真: 永元秀和
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故障知らずのプログレ生活に刺激が欲しくなった

画像: 2025年に中古車販売店で運命的な出会いをして購入、いまも乗っている2001年式のトヨタ プログレ NC250 ウォールナットパッケージ。購入から1年が過ぎ、1万km走行したが今のところ壊れる気配はなし・・・だ。

2025年に中古車販売店で運命的な出会いをして購入、いまも乗っている2001年式のトヨタ プログレ NC250 ウォールナットパッケージ。購入から1年が過ぎ、1万km走行したが今のところ壊れる気配はなし・・・だ。

久しぶりの投稿となってしまったが、それもそのはず。我が家のファミリーカーであるトヨタ プログレは、この約1年間で1万kmを走行したにもかかわらず、これといった大きな故障やトラブルが出てくれない(?)。

そこはさすがのトヨタクオリティ。20年以上前のクルマでありながら、普通に日常の足として使えてしまう。それどころか、すっかり身体に馴染んでしまい、家族からの評判も上々。「しばらくはプログレでいいよね」となっている。

唯一のトラブルといえば、テールランプのバルブが切れたくらい。警告灯が点灯して教えてくれたので、すぐさまカー用品店で電球を購入し、まとめて交換した。あとはオイル交換やエアフィルター交換、ワイパーゴム交換といった定期的なメンテナンス程度。どれも消耗品の範囲内だ。

次の車検まで1年を切ったが、この調子なら問題なく乗り続けられそうな気がしている。とはいえ、古いクルマであることに変わりはない。ある日突然、何かしらのトラブルが起きても不思議ではないので、日頃のメンテナンスは欠かせない。

そんな平穏なちょいふるライフを送るなか、少し刺激が欲しくなった。そこで、ちょいふるジョイフル企画担当のQ氏が所有するプジョー 406スポーツを借りて、約1カ月間レポートすることになった。

Q氏の連載はWebモーターマガジンやモーターマガジン誌でも展開中だが、最近はトヨタ クラウンリボーンやマツダ CX-3のディーゼル×MTに夢中らしく、406は冬眠状態。それならばということで、今回は私ナカムラが代わりに406との時間を楽しませてもらうことにした。

映画「TAXI」で憧れた406と、ついに暮らせる日が来た

画像: いまやまったく見かけなくなってしまった「プジョー406」の中でも、さらに希少な左ハンドルMTの「スポーツ」というグレード。20年前のモデルでありながら、いまでも走りの良さは健在。しかし、故障や部品などのことを考えると、これからも安心して乗っていくためには、専門店に頼る必要がありそうだ。

いまやまったく見かけなくなってしまった「プジョー406」の中でも、さらに希少な左ハンドルMTの「スポーツ」というグレード。20年前のモデルでありながら、いまでも走りの良さは健在。しかし、故障や部品などのことを考えると、これからも安心して乗っていくためには、専門店に頼る必要がありそうだ。

実は個人的にプジョー406には以前から特別な思い入れがあった。

きっかけは、リュック・ベッソンが製作・脚本を務めたフランス映画「TAXI」だ。当時は学生だったが、ピニンファリーナデザインの406クーペではなく、なぜかタクシー仕様の406セダンのスタイリングに惹かれていた。あの絶妙なサイズ感とデザイン、どこか品のある佇まいが好きだったのだ。

さらに「TAXI」で繰り広げられるカーアクションも印象的だった。シリーズ後半は空を飛んだりもするが、初期作品は比較的現実味があり、普段は地味なタクシーがアグレッシブな走りを見せる姿に刺激を受けた。

そんなこともあり、実はプジョー406は長年探していたクルマでもある。しかし、なかなか良い個体との縁がなく、15年ほど前に初めて購入したプジョーのモデルは406ではなく206だった。

そんな自分が、憧れだった406を1カ月間じっくり味わえる機会に恵まれるとは・・・。自動車雑誌の編集者冥利に尽きる。愛車でもあり、自社の商品でもある406を快く貸してくれたQ氏の懐の深さにも感謝したい。何かあったら買い取る気持ちでレポートするつもりだ・・・と、感慨に浸っていたのも束の間。406との生活はいきなり輸入車らしい洗礼から始まった。

いきなり輸入車の洗礼?それでも406は期待を裏切らない

画像: 年式を考えれば内装の状態も良く、まさに極上車だ。しかし、シフトノブの中身は経年劣化に耐えきれず、内部の樹脂のようなものが粉々になり、シフトノブはグラグラだった。これさえ解決すれば、かなり快適になる。

年式を考えれば内装の状態も良く、まさに極上車だ。しかし、シフトノブの中身は経年劣化に耐えきれず、内部の樹脂のようなものが粉々になり、シフトノブはグラグラだった。これさえ解決すれば、かなり快適になる。

借りてきて早々、シフトノブ内部の樹脂パーツが粉砕していることが判明したのだ。ギアチェンジ自体は問題なく行えるものの、ノブはグラグラ。調べてみると純正部品はすでに入手困難で、海外製の社外品もシフトパターンの違いから簡単には流用できないようだ。

とりあえず応急処置を施し、しばらくはこの状態で使うことに。根気よく純正部品を探すか、社外品への交換を検討するかは今後の課題である。

しかし、そんな小さなトラブルは406への期待感を削ぐものではない。実際に走らせてみると、このクルマが長年愛されてきた理由がすぐに理解できた。

すでにQ氏や、モーターマガジン誌との連動企画で試乗してもらったモータージャーナリストの渡辺敏史氏も語っているが、この406スポーツは非常にコンディションが良く、プジョーらしさがしっかりと残っていた。

画像: この日は撮影のためにワインディングロードを走る機会があったが、やはりコーナーが続くと、粘り強い足まわりの良さを実感する。それでいて、このスポーツモデル感を一切主張しない見た目が良い。

この日は撮影のためにワインディングロードを走る機会があったが、やはりコーナーが続くと、粘り強い足まわりの良さを実感する。それでいて、このスポーツモデル感を一切主張しない見た目が良い。

やはり印象的なのは足まわりだ。当時のフランス車全般に言えることだが、基本的には柔らかなタッチで路面の凹凸を受け止めながら、コーナーでは粘り強く踏ん張る。いわゆる「猫足」と呼ばれる独特の乗り味である。

普段乗っている同年代のプログレもコンフォート寄りのセッティングだが、それとはまた異なる懐の深さがある。この絶妙な味付けには、正直羨ましさすら覚えた。

一方で、「スポーツ」というグレード名から想像するほど尖った性格ではないこともよくわかった。

むしろ、すべてがマイルドだ。気負わず日常使いができ、それでいてワインディングロードでは自然と気持ち良く走れる。「肩肘張らずに付き合えるスポーティセダン」という印象だった。

搭載される2.2L直列4気筒エンジンも、飛び抜けたパワーを持つわけではない。しかし低回転から扱いやすく、実用域での使い勝手は良好だ。

試乗車にはプジョー純正オプションと思われるマフラーが装着されており、これがまた絶妙だった。適度な音量と心地よい音質で、走る楽しさを引き立ててくれる。もしノーマルマフラーだったら、さらに穏やかな性格だったのかもしれない。

そんな406との蜜月も、やはり順風満帆とはいかなかった。

小さなトラブルも含めて、それが406との暮らしだった

画像: 406のヘッドライトは当然LEDでもなければ、HIDでもないハロゲンバルブ。ちょうど切れた右側のヘッドライトバルブは自分で交換することができたが、左側はバッテリーやらなにやら周辺パーツを外す必要がありそうだ。

406のヘッドライトは当然LEDでもなければ、HIDでもないハロゲンバルブ。ちょうど切れた右側のヘッドライトバルブは自分で交換することができたが、左側はバッテリーやらなにやら周辺パーツを外す必要がありそうだ。

乗り始めて数日後、今度はヘッドライトバルブが片方切れた。20年以上前の中古車では珍しい話ではないが、バルブ類は購入後早めに交換しておくと安心だろう。

さらにある雨の日には、エンジンを掛けると、突然センターコンソールに「ANTI POLUTION FAULT」の表示とエンジンチェックランプが点灯した。以前、乗っていた206でも同じような表示が出たような気がしたので、当時の記憶を思い出し、この日はとりあえず乗らず、ひと晩寝かせた。

調べてみると、やはり同年代のプジョーでは比較的よくある症状らしい。エンジンストールやアイドリング不調、吹け上がりの悪化などがなければ、必ずしも深刻な故障とは限らないという。

実際、このときもアイドリングや振動に変化はなく、後日エンジンを始動すると警告表示は消えていた。車両オーナーのQ氏に確認すると、定期的に点灯するとのことだったが、今後も長く乗るのであれば、やはり一度しっかり点検しておきたいところではある。

画像: 雨の日にエンジンを掛けたら突然センターコンソールに「ANTI POLUTION FAULT」の表示とエンジンチェックランプが点灯。借り物のクルマなだけに、心臓に悪かったが、アイドリング状態でエンジン回転数や音、振動に変化は見られず。しかしながら、そのまま乗って万が一のことがあったら嫌なので、その日は乗るのを諦めた。

雨の日にエンジンを掛けたら突然センターコンソールに「ANTI POLUTION FAULT」の表示とエンジンチェックランプが点灯。借り物のクルマなだけに、心臓に悪かったが、アイドリング状態でエンジン回転数や音、振動に変化は見られず。しかしながら、そのまま乗って万が一のことがあったら嫌なので、その日は乗るのを諦めた。

トラブル知らずのプログレから乗り換えると、たまたまとはいえ小さなトラブルが続き、久しぶりに中古輸入車の洗礼を受けた格好になった。それでも憧れだった406のオーナー気分を味わえたこの1カ月は、何ものにも代えがたい経験だった。

どんなクルマでもこうして一定期間乗ることができれば、そのクルマが自分に合うかどうかもよく理解できる。しかし、一般的な中古車選びでそこまで試すことは難しい。だからこそ、こうした輸入車を購入するのであれば、そのブランドやモデルに精通した専門店を頼ることが重要なのだろう。

そして何より、この年代のクルマは国産車も輸入車も部品供給の問題が避けられない。まだリフレッシュしながら楽しめる今こそ、旧いクルマと付き合う絶好のタイミングなのかもしれない。

そう考えると、以前から気になっていたあのクルマも、このクルマも、「いつか」ではなく「今」乗るべきなのではないか・・・。406との1カ月は、そんなことをあらためて考えさせてくれた。

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